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Channel: ゆうちゃんの日記
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前進あるのみ 第50話

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シンとチェギョンがマンションで愛し合っている頃、チェギョンの母親スンレは、ユルと一緒に徳寿宮に降り立ち、スの熱烈な歓迎を受けていた。
 
「スンレさん、ようこそ。イヤ~、昔と全然変わってない。ホント、会えて嬉しいよ」
「殿下、お久しぶりです。クス、殿下もホントお変わりなく、相変わらず強引ですよね」
「クスクス、お蔭さまでね。ユルや、お帰り。スンレさんを連れて来てくれて、ありがとうな。ん?その鞄は・・・シンとチェギョンのかい?」
「父さん、ただいま。今日の昼休み、シンがチェギョン連れ帰っちゃって・・・あとで届けないといけないんだよね」
「クククッ、シンの奴、我が儘全開だな。スンレさん、もうすぐチェウォンも来ます。奥でゆっくりお茶でも飲んで、待ちましょう。ユルも着替えておいで」
「はい。アジュマ、少し失礼します」
 
リビングで腰を落ち着けたスとスンレ。
何か聞きたそうにしているスンレを制し、スは口を開いた。
 
「スンレさん、あなたが仰りたいこと、また聞きたいことがあることは分かっています。チェウォンが来たら、一緒に説明します。どうかそれまで待ってくれませんか?」
「・・・分かりました」
 
リビングにユルが来て、3人で昔話をしていると、廊下が突然騒がしくなってきた。
 
「クククッ・・・相変わらず騒がしい男だ。ユル、あれがチェギョンの親父だ」
「クスクス・・・はい」
「こら~!!俺の都合も考えず、拉致するな!!お前の所為で、アン先輩に会えなかっただろうが!!」
「アン医師も呼んだ。もうすぐここに来るだろう。だから、安心しろ」
「相変わらず、強引なくせに細かい事まで気がつく奴だ。ス、久しぶり。色々、頼んで悪かったな」
「構わん。私も娘ができたようで喜んでる。チェウォン、紹介しよう。息子だ」
「アジョシ、ユルです」
「お~~、あの小さかったボンか?大きくなったなぁ・・・ボンが乳離れするまで、俺らはここに住んでたんだけど、仕事から帰ったら、お前の親父、ボンとスンレとチェギョンと4人で川の字で寝てんだぞ。初めて見た時は、俺まで離婚の危機かと一瞬目の前が真っ暗になったよ。ス、一人寝が寂しかっただけみたいでホッとしたけどな」
「クスクス、結局、毎晩、5人で雑魚寝してたのよねぇ~。あの時は、楽しかったわ」
「///チェウォン!スンレさん!ユルの前で恥ずかしい話をするな!!」
「ふん、俺らを拉致した罰だ!!」
 
豪快で、父親のスに対して、ズケズケ言うチェウォンをユルは、一発で気に入ってしまった。
だが、これから話しするだろうチェギョンの事を知ったチェウォン夫妻は、どういった反応をするのか分からず、ユルは不安を感じた。
 
「・・・で、俺を拉致した理由は何だ?チェギョンの事か?」
「ああ、そうだ」
「まさかお前以外の皇族と関わっているんじゃないだろうな?」
「あなた・・・チェギョン、舞踊科じゃなく美術科に通っていて、ユルちゃんとクラスメートなんですって」
「何だって!!?ス、これはどういうことだ?」
「アジョシ、僕から説明させてください。父さんが出した願書は、間違いなく舞踊科に印がついていました。チェギョンが土壇場で、美術科に変更したんです。『10年ぶりの祖国で話せるが、読み書きができないので、美術科だと思って適当に〇を付けてしまった』と先生に言い訳していました。担任の教師に確認を取ってもらっても結構です」
「チェギョンがなぜ・・・」
「ユルからその話を聞いて、私は驚いて、チェギョンをここに呼び出した。チェギョンは、プリマは父の夢であって、自分の夢ではない。バレエは嫌いじゃないが、趣味程度で良いと言ったよ」
「あれだけ頑張っていたのに趣味程度で良いって・・・」
「チェウォン、それも聞いた。今まで得た賞賛や名声を捨てるのは勿体ないのではないかってな。チェギョンは、『あれが名声なら、私は要らない』って断言したよ」
「あの親孝行なチェギョンが・・・今まで一度も私たちに逆らったことなかったのに・・・ス、チェギョンに一体何があったんだ?」
「・・・チェウォン、スンレさん、チェギョンはどんな子だと思ってるんだ?」
「えっ!?」
「チェギョンは、死んだチェジュンの分まで親孝行して、二人分生きようと頑張っていたんだと思ってます。そして何かの切欠で、その糸が切れたんじゃないかしら。あなたは親孝行だと言うけれど、渡米してからのあの子は私には子どもらしくない子に見えたわ」
「スンレ・・・」
「アジュマ、アジョシ、僕から見たチェギョンは天真爛漫で元気いっぱいのお転婆娘です。シンは、昔と全然変わっていないと言ってます」
「ユル君・・・チェギョンは、シン坊と再会して、まさか宮に出入りしてるのか?」
「あなた・・・学校に迎えに行ったら、チェギョンは殿下に手を引かれて、早退して行ったわ」
「ス・・・あれだけ頼んだのに・・・どうして・・・」
『チェウォン、お前のその意地が、チェギョンをボロボロにしたのが分からないのか?』
「えっ!?」
 
背後から聞こえた声に振り向くと、そこにはアン医師が立っていた。
 
「チェウォン、やっと帰ってきたか・・・」
「はい、やっと一時帰国できました。トンボ返りですが・・・先輩、一体、何の話です?俺が、チェギョンをダメにしたとでも言いたいのですか?」
「・・・チェウォン、このカルテを見て、お前の意見を聞きたい。目を通してくれ」
「カルテ?心療内科は、俺は専門外だから、見ても何のアドバイスもできませんよ」
「チェウォン・・・チェギョンのカルテだ」
「えっ!?」
 
アン医師の手からカルテをふんだくると、チェウォンは真剣な眼差しで読みだしたが、徐々に顔色を失っていった。スンレも不安そうにチェウォンを顔色を窺っている。
 
「先輩・・・事実なのか?」
「ああ、事実だ」
「専門外だが、完治には最低3年はかかると診た。間違いないか?」
「俺の所見では、最低5年だった。でもな、体重も順調に増え、もうほぼ完治に近い。あとは月経が始まるのを待つばかりなんだ」
「えっ!?それは、どういう・・・」
「殿下だよ。食事管理から体調管理まで、すべて殿下がしてチェギョンを支えておられるよ。チェギョンが体調を崩したら、宮に連れ帰って寝ずの看病までしておられる」
「あのシン坊が?」
「ああ。殿下もな、俺の患者なんだ。お前たちが渡米してからこの10年、俺以外とは誰とも口をきかれなかった。俺もカウンセリングの時だけだった。殿下のカルテも持ってきた。読んでみるか?」
「・・・読ませてくれ」
 
読み進めていくうちに チェウォンの目に涙が滲んできた。
 
「先輩・・・俺がここまでシン坊を追い詰めたのか?」
「そうじゃない。殿下にとって、チェウォン、お前とチェギョンは心の支えだったんだ」
「アジョシ・・・シンは、チェギョンと再会した時、『生きてたんだ』と言って泣いてました。ずっと自分の事を人殺しだと思ってたみたいです。またアジョシのことは、アジョシの子になりたいと思ってたと言ってました」
「チェウォン、殿下もチェギョンと再会して、カウンセリングする必要がなくなった。サイボーグが人間に生まれ変わったんだ」
「は?」
「チェウォン、それだけじゃない。チェギョンを守るために目覚めた。権力を得ようと画策していた王族たちに牙を向けたんだ。王族会を改革し、公務にも力を入れ始めた。今、宮を引っ張っていってるのは、間違いなくシンだよ。チェギョンが宮に出入りするようになってから、宮も明るくなった」
「・・・ス、何が言いたい?」
「チェウォン、シンとチェギョンは、お互いがお互いを必要としている。チェギョンを宮にくれないか?これは、皇族だけじゃない、宮で従事している職員全員の願いなんだ」
「・・・少し考えさせてくれないか?」
「チェウォン!!」
「ス・・・俺は尊敬する親父の跡を継ごうと医学の道に入り、宮に出入りしてたのは知ってるよな?そこで俺が見たものは、ス、お前の苦悩とミン妃の涙、そしてシン坊の孤独だった。あとヒョンの非情さか・・・お前や先輩の言いたいことは、分かる。分かるんだが、心がどうしても付いていかないんだ」
「チェウォン・・・一つ、聞いていいか?それほど宮を嫌っているのに、なぜこの私にチェギョンを託したんだ?」
「・・・親父だよ。死ぬ間際に手紙を送って寄こしてきた。『殿下を助けてくれ!儂の最後の頼みだ』ってな」
「チェウォン・・・なぁ、折角、ソウルに来たんだ。チェギョンたちを呼びだして一緒に食事をしよう。シンもチェギョンと一緒にいる筈だから、ユルに連絡を入れさせよう」
「いや、有難いが、今回は止めておく。スンレ、後でちゃんと説明するから、今回だけは俺のいう事を聞いてくれないか?」
「ええ、分かったわ。その代り、今晩はチェギョンはいないけれど、4人で川の字になって寝ること。いいかしら?」
「「「えっ!?」」」
 
ス、チェウォン、ユルが固まる中、スンレ一人だけがニコニコと笑っていた。
 
(アジョシもアジュマも 流石チェギョンの親って感じ・・・クスクス・・・)
 
 
 

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