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Channel: ゆうちゃんの日記
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前進あるのみ 第47話

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7月、世間ではとうの昔に衣替えが済み、学校でも夏の制服に代わっていた。
昼休み、いつものメンバーの男性陣は、中庭の木陰でグッタリとしていた。
 
「あちぃ・・・何で、女たちはあんなに元気なんだ?それにシン、ユル、冬服着てんのに何でそんな涼しい顔してんだ?暑くないのか?」
「・・・・・」
「ギョン、愚問。暑いに決まってるじゃん。でも法度で決まってるから、脱げないんだよね。口を開いたら不満を言ってしまいそうだから、シン、無口だろ?」
「だからか・・・何で、機嫌悪いんだろと思ってたんだ」
「・・・それは、ギョン、お前が『暑い、暑い』と連呼するからだ。聞いてるだけで、イラつく」
「シン、す、すまん」
 
眉間に皺を寄せて不機嫌そのものだったシンの顔が、突然穏やかな顔に変わり、笑顔を見せた。
 
(((????)))
 
「チェギョン、どうした?顔が真っ赤だぞ?!」
「うん。ソウルの夏って暑いんだね。何もしなくても汗が出てくるなんて、久しぶりかも・・・」
「ヨーロッパに比べたら、そら暑いだろうな。冷たいお茶あるけど、飲むか?」
「うん♪」
 
(((やっぱチェギョンがいるのと、いないのとでは全然違うよな・・・)))
 
シンから水筒を受け取り、ゴクゴク一気飲みしたチェギョンは、おもむろにスカートの下に穿いていたジャージを脱ごうとしだした。
 
「「「!!!」」」
「チェギョン!お、お前、人前で脱ぐんじゃない!!」
「大丈夫!ジャーン、下にスパッツ穿いてるだよね。ふふふ、ビックリした?」
 
イン達は脱力し、シンだけはホッとしたが、チェギョンが制服の上着を脱ぎかけた瞬間、シンは声を荒げた。 
 
「チェギョン、脱ぐな!!」
「へ?やだよ、汗びっしょりなんだもん。見てよ、背中なんて肌に引っ付いてるんだよ」
「ダメだ!脱ぐなら、帰るぞ。ユル、俺とチェギョンの荷物、頼む」
「えっ!?あっ、うん・・・」
 
シンはチェギョンの腕を掴むと、もう片方の手で翊衛士に連絡を入れるため携帯を弄りながら、裏門へ向かった。
ユルを含む男性陣が、呆然と見送っていると、ガンヒョンが駆け寄ってきた。
 
「ユル君、チェギョンと殿下、どうしたの?」
「・・・僕らも分かんないんだよね。急に怒鳴ったかと思うと、チェギョン連れて帰っちゃった」
「はぁ?殿下がチェギョンに怒鳴った?そんなの、あり得ないでしょ?」
「だろ?でもチェギョンが、暑いからって突然服を脱ぎだしたら、急に。。。ほら、あそこにジャージあるだろ?」
 
インが指さした方に目を向けると、チェギョンのジャージが脱ぎ捨てられていた。
 
「・・・ひょっとしてブレザーも脱ごうとした?」
「えっ、おお。汗びっしょりだって、背中見せてたけど?ガンヒョン、それが何か?」
「・・・殿下は知ってたのね。ユル君は、気づいてなかったの?」
「えっ!?何が?」
「チェギョンよ。あの子、ブラしてないのよ」
「「「えっ、えーー!!?」」」
「ご両親といつから離れて暮らしているのか知らないけれど、その辺無頓着なのよね。美術科は女生徒が多いけれど、男子生徒がいないわけじゃないし・・・だから、焦って連れ帰ったんだと思うわよ」
 
シンの行動がやっと理解できた男性陣は、笑いたい反面、チェギョンの孤独を知ったような気がした。
 
「ユル君、チェギョン、課題全然できてないんだけど、大丈夫だと思う?」
「ハァ・・・だよね。僕が、画材一式持って帰るよ。ガンヒョン、チェギョンの道具、揃えてくれる?」
「分かったわ」
「あの~、お話し中、ごめんなさい。画材一式って、何の話?あの二人は、どこに行ったの?」
 
突然、声を掛けられ振り向くと、そこには不思議そうな顔をした女性が立っていた。
メンバーたちは、顔を見合わせた後、代表してユルが答えることにした。
 
「彼女、美術科なんですが、課題ができてないのに帰っちゃったみたいなので、家で描かないと間に合わないんです」
「美術科?チェギョンは、美術科なの?」
「えっ、あ、はい。あの・・・失礼ですが・・・」
「あら、ごめんなさい。チェギョンの母親イ・スンレです。ビザの更新の為、主人と一緒に一時帰国したの」
「「「!!!」」」
「あ、あの、はじめまして。僕、イ・ユルと言います。父から、チェギョンのお父さんと親友だと聞いています」
「えっ!?じゃあ、あのユルちゃん?」
「えっ!?」
 
突然、スンレがユルにハグしたので、ここにいる全員が固まってしまった。
 
「あの小さかったユルちゃんが、こんなに大きくなったのね」
「あ、あの・・・僕の事をご存じなんですか?」
「勿論!だって私が、ユルちゃんにオッパイあげてたんだもの。ユルちゃんとチェギョンは、乳兄弟ってやつなのよ」
「「「!!!」」」
「そうなんですか?知りませんでした。その節は、色々とお世話になりありがとうございました」
「クスクス、ユルちゃん、礼儀正しい子に育っちゃって。。。それよりチェギョンは、本当に舞踊科じゃなく美術科なの?」
「はい。バレエは、趣味程度で良いって言ってました」
「えっ!?そうなの?」
「アジュマ、はじめまして。チェギョンとクラスメートのイ・ガンヒョンと申します。チェギョンが一番したかった事は、友達をいっぱい作って、青空の下でお喋りすることだと言っていました。今、それが実現できて、すごく嬉しいし楽しいって言っています」
「そう・・・そうよね。ガンヒョンさん、教えてくれてありがとう。それよりさっきチェギョンを連れていったのチェギョンのBF?すごくイケメンみたいだったけど、どんな子なの?」
 
スンレの問いかけに 全員が顔を見合わせ、言葉に詰まってしまった。
 
「ユルちゃん?ガンヒョンさん?」
「アジュマ・・・アイツは、僕の従兄弟のシンです」
「えっ!?じゃあ、皇太子殿下?」
「はい、そうです。アジュマ、詳しくはアジョシとご一緒にご説明させていただきます。今、アジョシは?」
「主人は、帰国したら絶対に顔を出すように言われてたらしくって、先輩が務めている病院に行ってるの」
「それって、王立病院の心療内科医のアン医師ですか?」
「よくご存じね。そう、アン医師よ」
 
ユルはスンレに確認を取ると、父親のスに連絡を入れ、シン・チェウォンが帰国していることを告げた。
 
「アジュマ、この後のご予定は?」
「ええ。本当は、ここでチェギョンを拾って、主人と待ち合わせるつもりだったの。今、どうしようか思案中!」
「じゃあ、僕と一緒に徳寿宮までお越しください。今、父に連絡したので、待ち合わせ場所は間違いなく徳寿宮に変更になると思います」
「クスクス、昔も思ったけれど、皇族の方って皆、強引よね。分かったわ。ユルちゃん、早退してくれるの?」
「ええ。ファン、悪いけど、シンの荷物持ってきてくれる?ガンヒョンは、チェギョンと僕のをお願い」
「「了解!!」」
「アジュマ、行きましょう」
 
ファンとガンヒョンが校舎に駆け込んで行き、ユルはスンレと一緒に玄関へと向かいながら、シンの携帯を鳴らした。
 
(シン、何で出ないんだ?こういう時は、当事者がいないと話にならないってば・・・ホント、頼むよ)
 
 
 
 

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