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Channel: ゆうちゃんの日記
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選択 第59話

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シンがコン内官と病院に戻ると、皇后の手術は終わっており、さっき仮眠した病室は集中治療室化していた。
病室と控室の間にあるガラス窓から病室をしばらく見ていたシンだが、ソファーに座るとコン内官とハン尚宮にも座るように促した。

「ハン尚宮、お疲れ。侍従用の休憩室で少し休んで」
「いえ、私は大丈夫です」
「ハン尚宮に倒れられたら、母上を任せられる人がいない。だから無理をするな。先は長いんだ」
「ハン尚宮、人手が足らない。殿下の言われたように少し休みなさい」
「かしこまりました」
「あっ、ハン尚宮、チェギョンは?ジフヒョンと帰ったの?」
「チェギョンさまは、ユン・ジフさんと出掛けられました」
「ジフヒョンと?」
「はい、明日の朝8時までには戻ると仰っていました」
「明日の朝?8時って・・・分かった。休んで」

ハン尚宮が休憩室に消えると、シンはコン内官と明日からの打ち合わせをし、コン内官を帰した。
用意してあったブランケットを広げていると、ドアが開き、ミン・ソオンが入ってきた。

「ソオンヌナ、居てくれたんだ」
「はい、殿下。事後報告で申し訳ありませんが、このフロアーにもう一室ある皇族用の病室の使用許可をお願いします」
「チェギョンの指示?身元がしっかりしていれば構わない。一体、誰が使うの?」
「うちの姫さまと親王様、それから赤ちゃんとその母親です」
「えっ、何それ?」
「姫さまが入院中だけでも親王様に母乳を与えたいと・・・今、ユン・ジフさんと他病院を当り、依頼を受けてくれる人を探しておられます」
「そんなことまで・・・」
「殿下、姫さまが何をお考えなのか私には分かりません。ただ親王様が退院されるまでは、責任を持ってお世話すると仰せでした」
「・・・・・」

シンがチェギョンの事を考えていると、ソオンは徐に手にしていた紙袋をシンの目の前に置いた。

「これは、皇后さまがうちの姫さまに託されたものです。殿下からお渡しください」
「大学ノート?」
「皇后さまの育児日記です。妊娠初期から皇太子妃になられる日まで、ヘミョンさまや殿下の様子が書かれています。是非、殿下も一度目を通してみてください」
「・・・うん」
「では、私も失礼させていただきます」

シンは、表紙に『シン』と書かれているノートを開いた。
中には、シンの成長記録が事細かに書かれていて、母親の愛情がたっぷりと詰まっていた。
シンは、涙が邪魔をして読み進めることができなかった。

(母上・・・今夜は眠れそうになさそうだ・・・)



午前8時、ウトウトしていたシンは、肩を揺すられて覚醒した。

「お前だけズルい・・・眠い・・・俺も寝たい」
「ジフヒョン・・・寝てないの?」
「チェギョンと一緒に徹夜・・・アイツ、逞しすぎ。アイツの所為で、何人が徹夜したか・・・」
「クスッ、ジフヒョン、チェギョンは?」
「もう一つの病室。転院させたアジュマと旦那に挨拶してる」
「俺も礼を言ってくるよ」
「ククッ、礼は言った方が良いと思うけど、相手が恐縮すると思うよ。できるだけフレンドリーにしな」
「フレンドリーって、ジフヒョンにだけは言われたくないんだけど?」
「クスッ、ジュンピョも忘れないで。アイツは威圧しかないから・・・」
「確かに とりあえず行ってくる」

シンがもう一つの皇族用の病室に入ると、チェギョンが一組の夫婦と話していた。
シンの姿を見た旦那が、直立不動の体制に入った。

「あっ、シン君だ。おはよう」
「おはよう。チェギョン、話を聞いた。こちらの方達を紹介してくれないか?」
「えっ!?シン君、分からないの?ユン翊衛士オッパとその奥さんだよ」
「えっ、ユン翊衛士?!制服じゃないから、分からなかった。ユン翊衛士、奥さん、弟を頼みます」

シンが頭を下げたため、ユン翊衛士と妻のウネは慌てふためいてしまった。

「クスクス、シン君、オッパが驚いてるよ。頭、上げてあげて」
「でも奥さんには、相当負担が掛ったはずだ」
「殿下、僕たちは光栄に思っています。何よりチェギョンさまが、僕の悩みを解消してくれたので、こちらこそ有難く思っています」
「ふふ、退院後しばらく本宅で静養してもらうの」
「チェギョン、本宅って・・・爺さんたちが集まるあそこか?」
「違う。あそこじゃ落ち着かないし、却って気を遣うでしょうが!シン家のソウル別邸、宮の社宅と近いからユン翊衛士オッパも通勤しやすいし、ノ尚宮ハルモニやカン・テジュン先輩のオンマがいるから安心でしょ」
「・・・そこまでチェギョンにしてもらっていいのか?」
「・・・私がおば様にしてもらった事は、こんな事じゃ返せないぐらいなの。寧ろ恩返しの機会をくれて、こちらこそ有難いと思ってる。イジョンオッパからセキュリティーを上げろと散々言われてたから、この機会に上げる」
「イジョンヒョン?何でイジョンヒョン?まったく分野が違うだろ!?」
「うん、何かね。物置に放り込んでたガラクタが、博物館並みの逸品ばかりだったらしいの。で、セキュリティーを上げろって煩くって・・・旧家って、ホント面倒だよね」

シンとユン翊衛士夫婦は、ハァと溜め息を吐くチェギョンを信じられないものを見るように見つめたのだった。

「オンニ、後でミン・ソオンという女医が来ます。彼女は私の主治医で、助産師の資格も持っています。彼女から母乳マッサージを受けてください。あと食事も母乳が出るようなものを用意させます。それからオンニの赤ちゃんが優先です。オンニの赤ちゃんの授乳時間にジュナは合せます」
「それで良いのですか?」
「勿論♪日中は、皇后さまの病室の次の間でジュナを世話しますから、授乳時間になったら内線で連絡ください」
「はい。色々とありがとうございます」
「シン君、おむつの替え方や沐浴の仕方を覚えてね。私も手伝うからさ」
「ああ。俺の弟だしな」

その日から、日中は病室の一角でコン内官と執務をする傍ら、シンはチェギョンと共に弟の世話をするのだった。
チェギョンはと言えば、シンの隣で黙々と皇后が記した育児日記に目を通したり、フラッと顔を出すジフやハギュンと話していた。

「チェギョン、ソングループの社長経由でキングダムの社長夫婦がチェギョンに会いたいと連絡してきた」
「えっ!?」
「何でも奥さんの方が絶対に会わないといけないと言ってるらしい」
「・・・分かった。どこに行けばいいの?」
「それが・・・お前が病院にいることを知ってるみたいで、是非王立病院で会いたいそうだ。このフロアーの待合室を借りよう」
「うん。手配お願いね」

シンは、チェギョンを不安そうに見つめるのだった。













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