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イ・シンの評価 第5話

寝惚け眼で車を降りたチェギョンは、シンの姿を見た瞬間、固まってしまった。

「お、オッパ!お使いって、買い物じゃなかったの?ここ、どこ?」
「宮で買い物はできないと思うぞ、チェギョン。俺はちょっと用を済ませてくるから、チェギョンは殿下に宮廷内を案内してもらっててくれ」
「え~~!無茶言わないでよ。殿下、はじめまして。美術科に通っているシン・チェギョンです。突然訪問して、申し訳ありません。私の事は気にせず、どうぞ中にお入りください」
「映像科のイ・シンです。非公開の宮内部、見たくない?」
「そりゃ見たいけど・・・」
「チェギョン、話のネタに見せてもらってこいよ。ついでに宮特製のお菓子でも貰ってこい。一生の思い出になるぞ」
「クスッ、チェギョン、行こう。コン内官、ソン・ウビンさんの話を詳しく聞いて、後で報告を」

シンは チェギョンの手を自分の腕につかまらせ、エスコートしながら宮殿の中に入って行った。

「あれが、皇太子のオーラか・・・思ってたより柔らかい雰囲気だったな。コン内官さん、まずこのリストの人物を呼び出し、一室に集めてください。できれば、防音設備が整った部屋希望です」
「・・・えっ!?まさか、この者たちが・・・」
「俺らが総力を挙げて調べた宮のネズミです。チェギョンが宮に来た以上、早急に手を打たないと危険が増します。尋問は、我々にお任せください。今日中に片をつけます」
「は、はい」

シンは思わぬ展開に動揺していたが、必死でポーカーフェイスを装い会話の糸口を探した。

「昼休みによく中庭にいるよね?何度か見た事があるよ」
「えっ、ご存じだったんですか?ひょっとして煩かった?」
「いや、いつも楽しそうに笑ってるなぁ。何を話してるんだろうと思って見てた。俺、休み時間はあまり教室から出ないからさ、羨ましかったんだ」
「出れば良いのに・・・」
「やだよ。周りからジロジロ見られて居心地悪いんだ」
「殿下ってデリケードなんですね。さっき一緒に来たオッパと従兄弟のオッパは親友なんですが、学生時代は凄く有名人だったらしいです。撮られた写真が裏で高額で売買されてるぐらい・・・でも普通に出歩いてましたよ。ウビンオッパはそれなりに女性と遊んでたみたいですが、ジフオッパはマイペースなので周りが騒いでてもすべてスルーしてたらしいです。クスッ、殿下って結構フレンドリーだったんですね。ちょっと意外でした。ジフオッパと同じぐらい無愛想だと思ってたので・・・」
「実は、今日の放課後、ユン・ジフさんに会ったんだ。『どの人が皇太子殿下?』って聞かれたよ。びっくりした。何か掴みどころのない人だよね」
「げっ・・・ホント失礼なこと言ってすいません。殿下、はっきり言っちゃって良いですよ。変人って・・・私の中では、絶対親戚ってバレたくない人ナンバー1です」
「クスクス、そうなんだ。着いた、ここだよ」
「へ?」
「シンです。お客様をお連れしました」
『お入り』

シンに促され、部屋に入った瞬間、チェギョンは再び固まってしまった。

「皇太后さま、陛下、シン・チェギョンさんです。チェギョン、皇太后さまと陛下だ」
「は、は、はじめまして、シン・チェギョンです。今日は、突然お邪魔して申し訳ありましぇん」
「ぷっ、落ち着いて。チェギョン、大丈夫だから・・・」
「クスクス、チェギョンさん、よう参られた。そこにお掛け」
「は、はい」

チェギョンは、ガチガチに緊張しながらシンの隣に腰掛けた。

「何年振りだろうな。そなたに会うのは・・・」
「えっ、私の事を御存じなのですか?」
「ええ、先帝がそなたのお爺さんと親交があったので、何度か宮で見かけた事があります」
「私も兄上と一緒にシン先生の講義を受けたのだよ。小難しい講義の筈なのに楽しく教えてくださったんだ」
「・・・祖父は父ほどではないですが、かなり変わった人だったような記憶があるので、そう言っていただけて嬉しいです」
「クククッ、私達の前では、紳士的な人でしたよ。父上は、『アイツはネジが1本外れておる』とよく言ってたけどね」
「はぁ、やっぱりそうですよね」

陛下と皇太后の前で溜め息を吐いているチェギョンを見て、シンは可笑しくて仕方なかった。

(ちょっと前までガチガチに緊張してたのに 陛下たちの前で溜め息を吐くなんて・・・面白すぎるだろ、シン・チェギョン)

「チェギョンは、母親似のようじゃな。祖父にも父にも顔立ちは似ておらぬのぉ」
「えっ、皇太后さまは父も御存じなのですか?」
「うむ、2年前に会ったのが最後だが、よく知っておる」
「あわわ・・・父は何か粗相をしませんでしたか?外では少しはまともだと思うのですが、あまり人前には出したくない人格でして・・・」
「ん?大学で教鞭をとっていて、人気教授だと聞いたけど・・・?」
「じゃあ外面が良いのかな?紙一重、変人なの。巻き込まれる家族はホント大変で・・・あっ、タメ口で話しちゃってゴメンナサイ」
「クスクス、今更・・・同級生なんだから気にするな」
「えへへ・・・」

皇太后は、シンとチェギョンが仲良く話ししているのを微笑ましく見つめていた。

「シン、そなたもチェギョンの父チェウォンには世話になっておるぞ。覚えておらんか?」
「シン・チェウォン先生・・・ですか?すいません、記憶にないです」
「私たちが『ウォン』と呼んでいたので、ひょっとしたらウォン先生で記憶してるかもしれぬな。ウォンはシンに2人の時は『アジョシ』と呼べと言っておった」
「あーーー!!思い出した。今まで出会った中で、一番好きな先生です。ホント毎回、アジョシが来るのをワクワクして待ってました」
「クスクス、ほんに破天荒な講義だったのぉ。その割には、しっかり学力も上がり、雑学も付いておった。籠りがちだったシンが明るくなったしのぉ」
「クククッ、あのアジョシの娘なんだ・・・何か納得だな」
「皇太后さまぁ、殿下ぁ、全っ然褒められてる気がしないんですけどぉ・・・」

頬を膨らませたチェギョンを見て、陛下が豪快に笑いだした。

「良い、実に楽しい。最高尚宮、ミンも呼んで、全員で食事をしよう。手配しておくれ」
「かしこまりました」
「太子、どんな楽しい講義だったのか聞きたい。食事をしながら教えておくれ」
「はい!」
「チェギョン、ご飯を食べて帰りなさい」
「え~~!!生き恥じゃないですかぁ~。私、食事をするなら、楽しく頂きたいです」

チェギョンの言葉に 今度は皇太后もシンも涙が出るほど笑ったのだった。




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