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Channel: ゆうちゃんの日記
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イ・シンの評価 第6話

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食堂にしては豪華な部屋に移動し、そこで皇后さまを紹介され、再び緊張の度合いを増したチェギョンだったが、料理が目の前に並ぶと目を輝かせていた。
食事の最中、チェギョンの父チェウォンがどんな講義をしたのか、皇太后に補足してもらいながらシンは、陛下と皇后に説明した。
チェギョンは、恥ずかしくて顔を真っ赤にしながらも 料理はしっかりと口に運んでいた。

「チェギョンさんは、どうして美術科を選択したのですか?」
「はい、皇后さま。色のついた絵を思う存分描きたかったからです」
「・・・ごめんなさい。もう少し詳しく教えてもらえるかしら?」
「はは、そうですよね。多分、祖父の影響だと思うのですが、小さい頃、家でのお絵描きはいつも墨絵だったんです。父が部屋いっぱいに模造紙を広げて、『汚したらオンマが怒るから、服を脱げ』と言われ、いつも父と一緒に裸でお絵描きしていました。祖父もたまに手解きをしてくれたのですが、祖父も『スンレさんに怒られる』と言って下着一枚でしたね」
「ブハッ・・・それ、俺もやった。俺はパンツ穿いてたけどな。カッコいい横線を書いてごらんとか、縦線を書いてごらんとか言われた。今から思えば、書道の基本を教えてもらってたんだと思う」
「上手に言ってくれるけど、世間一般のご家庭は、そんな教育をしてないから・・・あー話を戻しますね。小学校に行き出して、色鉛筆や絵の具の存在を知って、もう楽しくて楽しくて絵を描きまくりました。それは今もで、3年間思いっきり色のついた絵を描きたくて、美術科を志望しました」
「クスクス、よく分かりました」
「ミンや、2~3年前の学生の絵画コンクールに1点だけ水墨画が出品されていたのを覚えておらぬか?」
「ええ、ええ、覚えています。見事な絵で、確か特別賞を獲ったのではないでしょうか」
「あれは、チェギョンが描いた作品じゃよ」
「まぁ、あの絵が・・・本当に素晴らしい絵でしたわ。でも何だか勿体ないわね。もう水墨画は描かないのかしら?」
「皇后さま、あんな絵で良かったら差し上げますよ。押し入れに突っ込んだままですから・・・」

何だか嫌そうな顔をしたので、シンはチェギョンに何か嫌な思い出があるのか聞いてみた。

「スケッチ旅行をしようと言われて、喜んで付いて行ったら、整備されていない竹林だったのよ。当然墨絵だし、描く前にのこぎりで余計な竹を何本切り倒したことか・・・少しでも喜んで父に付いて行った自分が本当にバカだったわ。いそいそと絵の具や水入れを用意してた時間を返せ!って、あれを見るたびにムカムカするのよ」

チェギョンの悲惨な体験ではあるが、シンが父チェウォンとのエピソードを語った後だけに想像ができてしまって、シンは勿論、皇太后、陛下、皇后全員が思わず吹き出してしまった。

「そんなに笑わなくても・・・」
「ごめん、ごめん。いやさ、学校でもチェギョンの周りはいつも笑ってるだろ?何か納得したよ」
「学校でアッパの話はしてないわよ。そんな事したら、私、異端児扱いされるじゃん。あっ、そうだ。ちょっと失礼します」

突然、席を立ち、自分のカバンの中をガサゴソしたと思ったら、何の飾り気もない透明のアトマイザーを持って戻ってきた。

「皇太后さま、皇后さま、これを手に一吹きして、ハンドクリームのように擦り込んでみてください」

2人とも最初は怪訝そうにしていたが、擦り込んですぐ嬉しそうに笑った。

「スベスベになるではないか。それに何やら香りが・・・竹か?」
「はい、皇太后さま。切ってすぐの竹を火にかけると切り口から、水分がポタリポタリと落ちるんです。それを集めた天然美容液のようなものです。父は顔にも付けていますが、顔から竹の香りがするのは嫌なので、家族はハンドクリーム代わりに使ってます。こんな物で申し訳ないのですが、今日の素晴らしい料理のお礼です。どうぞ貰ってやってください」

チェギョンがペコリと頭を下げたものの、皇太后も皇后もそして陛下までもが若竹のエキスに嵌っていて、話を聞いていなかった。

「クククッ、チェギョン、すまない。誰も聞いていないみたいだな」
「はは、気にいってもらえたようで良かった。家にまだあるから、喧嘩にならないようもう一つ殿下に渡すね」
「サンキュ」
「あのさぁ、アッパって竹炭も作ってたりするんだよね。雑学の一つとして、竹炭は調湿や防臭効果に優れてるの。あると結構便利だよ。オンマが素知らぬ顔でアッパの枕に入れているのは、アッパだけが知らないシン家の秘密」
「ブハッ・・・チェギョン、シン家面白すぎるだろ!!」

爆笑するシンを見て、皇后が一瞬驚いた後、何故か涙ぐんだ。そして陛下が、そんな皇后の背を撫で慰めている。

「皇后さま?」
「シン、そなたの母は嬉しいんじゃよ。そなたの笑い声を聞いたのは、いつ以来じゃろうのぉ。忘れるぐらい聞いた事はなかった。それは私達も一緒だ。こうして食卓を囲む事も声をあげて笑いあうのもな。チェギョン、礼を言わせておくれ」
「いえ、私はそんな大したことは・・・」

『皆さま、失礼いたします。スアム文化財団のユン・ジフさまが、チェギョンさまをお迎えにお越しです』

「コン内官、まだデザートが残っておるのじゃ。すまぬが、客人をここへ通しておくれ」
「かしこまりました、皇太后さま」
「シン、ジフ殿を迎えに行っておくれ」
「はい、皇太后さま」

食堂を出たシンは、ジフの待っている控室までの道のりで、コン内官にソン・ウビンの情報を訊ねた。

「持ってきていただいた証拠をもとに怪しき職員全員一堂に集め、ソン・ウビン氏が直接尋問されました」
「ウビンさんが直接?」
「はい、殿下。あの柔らかい物腰から雰囲気がガラリと変わり、全員すぐに白状いたしました。そろそろ宮内警察に黒幕の王族を拘束できた頃だと思います。証拠も証言もしっかり握りましたので、王族たちも言い逃れできないでしょう」
「分かった。お疲れさま」
「いえ、私は・・・ただ傍観していただけでございます」
「クスッ、ソンヒョンとスアムを敵に回したら・・・考えるだけで怖いな。コン内官、肝に銘じような」
「はい」

シンが控えの間に入ると、ジフは足を組んで持参したペーパーバッグを読んでいた。

「ジフさん、ようこそ宮へ。本を読んでいるだけなのに絵になりますね」
「クスッ、何それ?あれ、チェギョンは?」
「まだデザートが残っているので、ジフさんも一緒にどうぞと皇太后さまが仰せです。僕が案内役を仰せつかりました」
「えっ、やだよ。俺、こんなだよ?!不敬罪に問われない?」
「誰も問いません。安心して招かれてください。こちらです」
「はぁ・・・了解。ねぇ、詫びの印、気にいってくれた?」
「はい、ありがとうございました。クスッ、ジフさんが、シン家は普通じゃないと言った意味が分かりました」
「クスッ、あの親父の思考回路は誰も理解できないと思うよ。俺、早くに両親亡くしてるから、あの親父が父親代わりだったんだけど、どれだけ頭を叩きたかったか・・・でも外で会うと、別人かと思うほど人格者に見えるんだよね」
「クククッ、僕の記憶にあるアジョシは、面白くて楽しいアジョシでしたよ」
「あのクソ親父は、宮でもバカしてたのか・・・頭、痛ぇ~」
「あの一つ聞いていいですか?あれほど言ってたのに、急に方向転換してチェギョンを宮に送り込んできた理由は何ですか?」
「ん~、家族会議の最中、ガンヒョンがチェギョンの希望進路を教えてくれたんだ。それで全員、頭を抱えちゃって・・・究極の選択ってやつ?」
「あの、全然、意味分からないんですけど・・・」
「アイツね、シン家とユン家のDNA継いでるから決してバカじゃないんだ。天然なだけで・・・でもその天然が問題でね。勘違いと言うか思い込みで、間違った進路を進もうとしてることが分かって・・・後で間違いに気づいたら、アイツは立ち直れないだろうし、俺らは全員恨まれるの間違いなしな訳」
「進路問題と宮が関係あるんですか?」
「うん。誤解を解くには、真実を明かすしかなくてね。先に言っておく。遺言に拘る必要はない。寧ろ破棄してくれてる方が嬉しい。殿下には、周りに流されるのではなく、本人だけを見て将来を考えてほしい」
「・・・はい」
「おっ、笑い声が聞こえる。あの部屋みたいだな。チェギョンは、何を喋ってんだか・・・天然炸裂みたいだね」

笑い声の聞こえる部屋は、食堂の手前の部屋で、朝の挨拶の間として使っている部屋だった。

「はぁ、さあ行こうか。殿下、先触れお願いね」

シンは、今までチェギョンに接触することだけを考えていたが、ジフに言われ婚姻が現実問題になったのだと悟った。

(ジフさんは、チェギョンの許嫁が俺だと言うんだろうか・・・)

「シンです。ユン・ジフさんをお連れしました」
『お入りなさい』


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