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イ・シンの評価 第8話

コン内官が、ウビンが持ってきた情報資料を陛下に差し出すと、シンは陛下の隣に席を移し、横から覗き見た。

「このリストに載っている者たち全員から自白調書が取れ、すでに密告を依頼した王族共々宮内警察に連行・拘束いたしております」
「確か、この者たちには年頃の娘がいた筈。目的は、皇太子妃か・・・」
「そのようでございます。王族の間では、殿下に許嫁がいることは周知の事実だったようで、ある者はその人物の特定、特定できていた者は許嫁との婚姻の準備が進んでいるのか等、調べている事がバラバラでございました」
「それは、どういうことだ?」
「己の身内から皇太子妃を出したいから、どうしてもスタンドプレーになってしまうみたい。チェギョンの暴行を指示した王族も単独行動だったしね。女官たちは、金に目が眩んだのもいるけど、親を盾に脅迫されてという者も多かった。女官の処分は、よく吟味した方がいいかも」
ジフさん!その王族は、誰ですか?
「殿下、うるさい。もうソウルにはいない。娘諸共潰しちゃった。今も王族会に在籍してるかは知らないけど、もう力はないから放っておいて大丈夫。できたら蒸し返さないで。却ってこっちが危ない」
「「・・・・・」」
「何、その目・・・殺してはないから、そんな目で見ないで。爺さんの伝手を使って、悪事を探して、ウビンの部下に脅させただけ。きっちり慰謝料貰っただけだから・・・娘は腕利きのホストにナンパさせただけ。見事に嵌って、借金の山。世間知らずって怖いよねぇ」

(ジフさん、俺は貴方達の方が怖いです・・・)

「コン内官さん、ミン・ヒョリンの事、教えてくれる?一応、うちの学校の生徒だし、処分すべきか検討しなくちゃなんないから」
「自分から、殿下の秘密の恋人だと名乗った事はない。恋人かと聞かれた時に否定しなかっただけで、肯定もしなかったと供述しているようです」
「ふ~ん、そっか。あの子の処分は宮に任せることにする。生徒たちの話が聞きたいなら、連絡してくれたら対応する。俺に直接連絡ちょうだい。連絡先は、殿下が知ってるから。殿下、むやみやたらに教えたら例の話、バラすよ」
「ジフさん!もっと真面目に話してください。学校側は、処分しないんですか?」
「うん。他の生徒たちに暴力振るったわけじゃないしね。ちょっと嘘吐いて、自慢しただけでしょ?処分はしないけど、奨学金援助は停止して、今まで援助した金額は返還してもらう。ミン社長の娘と騙ってたのは、ソンヒョンが個人的に処分した。母親は、もう家政婦ができないよう手を打つみたいだよ。そしたら奨学金、戻ってこないよなぁ」

ジフは、そう話すとガックリ肩を落とした。

「反省がないとすれば、そのまま社会に戻せば、また嘘八百並べたてるだろう。太子の恋人だったが宮に引き離されたぐらい言いかねんな」
「次期皇帝の女と言い張るなら、次期皇帝の女として処分したら?」
「は?ジフさん、何言ってるの?」
「韓国史の教授でもあるあの変人親父から聞いたけど、王の女である女官が罪を犯した時、軽い罪や冤罪なら僻地で農作業などに一生従事させたらしいね。情報社会の現在、デマでも一気に拡散される。面倒な時代になったよね。再犯確実な危険分子なら、前もって隔離すればいい。宮ならそれ位できるでしょ?数年、通信機器も取り上げて僻地に送れば?そうしたら、反省するかもね」
「う~ん、良い考えだな。反省がなければ、北方の御料農地で堆肥作りでもしてもらおうか・・・」
「陛下、給料が出るなら、奨学金返還で差し押さえさせてね♪」
「クククッ、良かろう。その時は、そう手続きをしよう。厳しい話をしておる筈なのに何故か楽しい・・・シン家にまつわる者の雰囲気のせいか?」
「陛下、俺をシン家と一緒にしないで!そうじゃないと、息子の恥話をバラすよ」
「何で、俺なんですか!!」

陛下は爆笑し、後ろに控えていたコン内官やキム内官は、必死で笑いを抑えていたが肩が震えていた。

「じゃあ、聞きたい事は聞いたし、俺も帰らせてもらおうかな」
「ジフさん、肝心な話が終わっていません。チェギョンと話し合う機会を作ってください」
「ヤダ!じゃあね」
「ジフさん!」
「はぁ・・・本気で言ってるの?」
「本気です」
「自分の立場、分かってる?あんな天然娘のどこがいいのさ?」
「皇太后さまからも人となりを見極めろと言われています。チェギョンにも僕の事を知ってほしい。とりあえず友達から始めて、いっぱい話をして、一つ一つ理解しあい、一歩ずつ前に進めたら・・・と思っています」
「苦労するよ?」
「俺の方が苦労をさせる事は間違いなしです」
「そこ、威張るところ?はぁ、陛下はどうなんです?あんな可笑しな子、反対しないんですか?」
「皇帝として、亡き父上が皇太子妃にと望んだ娘を拒否することはできない。父親としては、好きな道を選べと言ってやれない立場が申し訳なく、せめて幸せな日々を送ってほしいと思っている。だから息子の選んだ女性は無条件で受け入れる。それにチェギョンは、良い子じゃないか」
「グハッ、すいません、昔の事を思い出しちゃって・・・ソンジョおじ様もやっぱりおかしい人だったんだ。ダメ、腹痛い・・・」

突然、お腹を抱えて笑いだしたジフを陛下とシンは唖然と笑いが治まるまで見つめていた。

「はぁ、可笑しかった。殿下、理事長室の前に防火扉あるよね?あれ、普段鍵が掛ってて、教職員でさえ出入りできない」
「は?じゃあ、意味ないじゃないですか?」
「実は、あの扉の向こうは、俺の昼寝用の部屋になってる。一部屋空いてるから、好きに使っていいよ」
「え、いいんですか?」
「うん。ずっと気になってたから、もっと前に提案しても良かったんだけどね。俺、人見知りだし、話す切欠なかったし・・・」
「ちょこちょこ冗談を挟みますね。でも何が気になってたんですか?」
「学校、休み時間の度にジロジロ見られて窮屈だろ?俺も経験あるから、ちょっと分かる。人けのないところを探したり、俺ら専用のラウンジ作って授業も出ずにそこにいたもん。理事長として、少しでも心休まる場所を作ってやろうかなって・・・但し、口外無用。信頼おける生徒以外、立ち入り禁止。これだけは、絶対に守って」
「あ、ありがとうございます」
「鍵は、チェギョンに渡しておくから受け取って」
「えっ、チェギョンからですか?」
「なに?見合いのように何もかもセッティングしないとダメなの?殿下ってさ、何も言わなくても周りが先読みして動いてくれるだろ?神話に通ってる御曹司の大半は、殿下と同じで執事やメイドが何でもしてくれるから自分で考えて行動することができなかった。そういう奴は、親の会社でお飾りの役職を与えられ、政略結婚の駒になる。シン家は、政略結婚とは無縁でかなり変わった家庭だ。殿下、自分で考えて行動してみな」
「が、頑張ります」
「プッ、頑張って。じゃないと、皇太子殿下はへタレだって広めるよ」
「///なっ・・・!!」
「クククッ、ジフ君は、御曹司の中でもかなりセレブな方だと思うが、家にはメイドはたくさんいるんじゃないのかい?」
「いますね。ですが、あの変人の叔父がいます。断固拒否という主張をしないとまともな生活は望めないんですよ。俺、ほんと甥でまだ良かったと思ってますもん。チェギョンとチェジュンは悲惨ですよ」
「それは、どういう・・・」
「年に何回か、ライフラインのない生活が一番辛い。昔の人の生活を体験し、今、どれだけ恵まれてるか実感する日らしいけど、夜明け前から火打石を使って、竈に火をつけ、3食飯を作る。井戸から水を汲み、竈で湯を沸かし、風呂に入る。夏はクソ暑いし、冬は水は冷たいし、どっちも経験したけど地獄だった」
「面白そうじゃないですか」
「経験してないから言えるんだって。神話学園大に入って、あの親父のゼミに入れば経験できるよ。海から海水を運んできて、天然荒塩を作って美味い握り飯を食うとか・・・何かの文献で読んだらしいんだけど、ミミズを使って紅を作ろうって・・・誰が喜んでそんな口紅つけるんだよって話だよね」
「「ぶは・・・アハハ・・・」」

陛下とシンはまたもや爆笑し、今まで我慢していたコン内官とキム内官までもがとうとう吹き出してしまった。

(はぁ、第三者だから笑えるんだよ。当事者はほんと笑えないし・・・序だから、ソンジョおじ様の話もして帰るか)






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