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イ・シンの評価 第12話

チェウォンとジフが一瞬意味深なアイコンタクトを取ったことを ファンが気づいた。

「ウォン先生と理事長、これから仕事みたいだからそろそろ教室に戻ろうよ」
「流石、ファン君だね。でも折角だから、1時間目が終わるまでいてよ。俺、このままじゃ変態親父の印象しかないじゃん。ちょっとは、まともなとこ見てもらわないとさ」
「クククッ、確かに・・・」
「坊主、スマホ貸せ!」
「は?」
「坊主のスマホから、コンちゃん 呼び出して」
「コンちゃん?誰?」
「昔、ソンジョおじさんの侍従だった人。コン・セジュン先輩。大学の大先輩」
「アジョシ・・・殿下の侍従だった人がコンだった。でも真面目そうな人だったし、年齢も全然違ったね・・・もう一人いるのかな?」
「多分、それで合ってる。侍従は、兵役を終えてないとなれない。コンちゃんは、ソウル大学院を卒業してから入隊して、高卒で入隊した俺と軍隊で同期なわけ。坊主、呼び出して」
「あ、うん」

シンがスマホでコン内官のナンバーをタッチすると、チェウォンはシンの手から取り上げ、スピーカーにした。

『コンでございます。殿下、授業中に連絡など。何かございましたか?』
「コンちゃん?俺、軍で同期だったチェ・ウォン。久しぶり~♪ちょっと会いたいんだけど、出てきてくれない?」
『えっ!?・・・お前からの呼び出しって、あまり良い話じゃなさそうだな?』
「う~ん、まだ分かんない。悪いけど、芸校の裏門から入ってきて。俺、待ってるからさ。じゃあね」

通話を切ると、スマホをシンに返した。

「アジョシ、何で名前・・・」
「ああ、俺、宮に出入りする時は、用心してチェ・ウォンを名乗ってる。親父との関係も隠してた。昔は、今以上に王族が煩かったしな。親子で出入りしてるとなれば、王族たちが騒ぎかねないだろ?皇族を洗脳するつもりだとか・・・だから親父と違う大学に通って、親父との関係も誰にも知らせず、宮に出入りしている事も公にはしなかった。友人のイン君の父親にも言ってない。ジフとジフの爺さんには、坊主とチェギョンが交流を持ちだして、ソンジョのジジイがふざけた勅書という遺言を書いた後に詳しく話した。イ家には、チェギョンが大怪我をしてから助けを求めるため知らせた」
「何でそこまで?」
「自分を守るためかな?宮が金のなる木か権力の象徴と思ってる輩は、バカほどいる。そんな奴らにとって、宮に出入りする一般人は魅力あるらしい。親父の周りには、宮の情報を得ようとする奴やソンジョおじさんと親交を持ちたい者、取って代わろうと親父の失脚を狙う者が入れかわり現れた。皇帝や次期皇帝の恩師、美味しい立場に見えるらしい。だからソンジョおじさんに頼んで、架空の人物を作りだしたわけ。ユン家と縁ができた時、政治家と宮が癒着と報道されたらどちらにも迷惑がかかる。だから対外的には、親父との関係性は隠し通した。親父は、親類縁者から利用されないよう縁を切ってたしな」
「そんな思いまでして、なぜウォン先生親子は宮に関わったんですか?」
「なぜって・・・ファン君。ソンジョおじさんが好きだったから。それだけだけど?君たちは、坊主が皇太子だから一緒にいるわけ?そんな気持ちなら、坊主から離れて!」
「ち、違います!」
「なら、いい。ソンジョおじさんとパクおばさん、年若く皇帝・皇后に就いたろ?子どもが成年皇族になるまで、2人は皇帝と皇太子、皇后と皇太子妃の役割を担わないといけなかった。当然、子育ては他人任せになる。でも無垢な子供に欲の皮が張った王族を近づけたくはない。で、俺の親父に白羽の矢が立ったわけ。それから皇太子妃の仕事の一つに歴代の王の秘密や闇に葬った事実が載った資料の管理と整理というのがある。パクおばさん、そこまで手が回らなかったんだ。そんな時間があれば、子どもとの時間を持ちたいと思うのが母親だろ?でもそんな資料、信頼できる者でないと任せられない。でも信頼できる者は、傍に置きたいだろ?で、見るに見かねた親父が、学生だった俺にやらせたんだ。俺、親父の影響で漢字読めるしね。そこに入り浸ったお陰で、歴史に興味を持って韓国史を専攻して今に至るんだけどな」

ここで一旦、話を止めたチェウォンは、向かいに座っている3人をジッと見つめた。

「ここまで熱く語った理由は一つ。生半可な気持ちで、坊主の傍にいてほしくない。知りえた宮の秘密は、親にも言うな!墓場まで持って行け!当然、俺の事もNGだ。君たちは、大企業の御曹司だ。すでに皇太子の学友として名を馳せてるから、俺のように偽名を騙るわけにもいかないし、誘惑も多いだろう。間違いなく変な輩が近づいてくる。そんな輩でも会社との柵で無碍に切る事ができない時があるかもしれない。十分、用心して言動に気を付けろ!将来、君たちの言動一つで、宮に迷惑を掛けたり、窮地に陥る可能性がある事を肝に銘じてほしい。そして頼ってきたら、何も聞かず心に寄り添ってやってほしい」
「「「はい!!」」」
「よ~し、良い子だ♪いいか、今から話す事は、死ぬまで言うな!!坊主・・・お前は、国民が認める皇太子殿下だ。でもお前自身は、心からそう思ってるか?」
「アジョシ・・・」
「言っただろ?俺は、ずっと見てきたって。坊主が将来皇帝になる事は、孝烈殿下がまだ皇太子として在位していた時から決まってた」
「えっ!?」
「ソンジョおじさんと孝烈殿下、そして親父と俺・・・4人で何度も話し合った結果、この結論に至った」
「えっ、じゃあユルは?」
「・・・皇位継承権を持たない。おじさんが剥奪したわけじゃない。父親の孝列殿下が放棄したんだ。この決定に俺ら親子が絡んでるのがバレると、恵政宮側から恨まれて命が危ないだろ?だから隠すことになったんだ。皆、死んじまってこの事実を知ってるのは、コンちゃんと俺だけになったけどな。アジョシ達の考えは、恵政宮の廃妃→皇太子の離婚・退位→義誠君の皇位継承権放棄だった。でも孝烈殿下の急逝で、順番が狂った。で、今、ややこしい事になってる・・・義誠宮さまが帰国して、美術科にいる」
「えっ!?」
「「「!!!」」」
「チェギョンが気づいたんだ。ひょっとしてって・・・アイツの記憶力は半端ないから。親父は、坊主だけでなく、宮で義誠宮さまにも引き合わせてたみたいだ。今日、俺がここに来たのは、その確認のため。宮に報告なしで帰国してるなら、何か裏があるかもしれない。だから、コンちゃんを呼び出した。大丈夫、何か起こる前にジフ達が守ってくれるから」
「俺かよ・・・」
「だって俺、しがない大学教授だもん♪」
「けっ、可愛くないから・・・でもアイツらに連絡しとく」
「サンキュ。お前達、特にチャン・ギョン君、芝居ができないなら美術科に近づかないで!俺の知ってる4~5歳の義誠君さまは、かなり頭のキレる暴君。坊主がトラウマになるんじゃないかって心配するほど酷かった。よな?」
「・・・ああ、まぁな」
「でもなチェギョンが、イギリスからの帰国子女だし名前も一緒なんだけど雰囲気が違う。穏やかに笑ってるから別人かもしれないって言うんだよなぁ。だから義誠君さまがどんな成長をしてるか、自分の目で確かめたい。それまで慎重に行動してほしい訳だ」
「で、これだね。はい、殿下。昨日、言ってた鍵ね。俺からチェギョンに言うから、そこで会いな」
「ありがとうございます」
「坊主・・・俺にも礼を言えよなぁ~」
「アジョシ、チェギョンの見舞いに行ってもいい?」
「はぁ?執務、してんだろ?どうすんの?」
「帰ったらする!」
「ん~、コンちゃんと話してから、放課後か執務後か決める。飯の用意はしておいてやる。美味いぞぉ、俺の玉ねぎ料理♪楽しみにしておけ。ほら、1時間目が終わる。そろそろ教室に戻れ」
「うん、じゃあ、後でね」

理事長室を出たシンは、嬉しさを隠しきれない顔をしていた。
反対にギョンは落ち込み、インは眉間にしわを寄せ、ファンは口を真一文字に引き締めていた。

(『ソンジョおじさんが好きだったから、それだけだけど?』何気ない一言だけど、何かガツンと来たなぁ・・・きっと嫌な思いも一杯した筈なのに そう言い切ったあの人は本当に凄いと思う。あの変人ぶりはどこまでが本当で、どこから芝居なのか・・・きっと一生かかっても理解できないだろうな)




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