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イ・シンの評価 第13話

3時間目が始まるベルが鳴り、教師の到着を待っていると、教室の後ろの扉が開き、チェウォンとジフが入ってきた。
クラスメートたちが、何事かと騒ぐ中、教師が教室に入ってきた。

「きり~つ 礼 着席」

通例の挨拶が終わり、授業を始めようとした教師が、後方にいた二人に気づいた。

「えっ!?理事長・・・」
「ああ、すいません。知り合いから授業を見学したいと申し出があったものですから、御迷惑でなければここで見学させてください」
「それは構いませんが・・・僕、教授の前で授業は無理です」
「は?ひょっとして僕の事、知ってる?ゴメンね、物忘れ酷くてね。名前と顔が一致しないんだ」
「ゼミに参加したイム・ヒョンソクです。『木こり』って、いつも呼ばれてました」
「あーー、思い出した。いつも一生懸命薪割りして、風呂沸かしてくれるから、風呂係のリーダーに任命したよね?」
「はい!!」
「だから、成績に特A付けたんだ」
「「グハッ・・・」」

今の会話の意味が分かるジフとシンが、吹き出してしまった。

「えっ!?殿下、ひょっとしてお知り合いですか?」
「あー、うん。僕の一番弟子。身内は別として、一番最初に昔体験をしたのは彼なんだ。5歳か6歳ぐらいだったかな?宮廷内に旧水刺間(スラッカン)がまだ残っててね、そこを二人で使えるように掃除して料理したんだ。古い殿閣がいっぱいあるからね、薪をくべてオンドル体験とか・・・」
「ちょっと待て!それって重要文化財じゃないのか?親父、そこで薪を燃やしたってか!?」
「うん、そうだけど?ジフ、言葉が汚くなってるよ。少し落ち着きなさいって」
「一つ聞くけど、それ、許可取った?」
「許可が下りると思う?事後報告に決まってるでしょ。殿下がね、すごく輝く笑顔で陛下に報告してくれてね。怒られずにすんだ(ニカッ)」
「プクククッ、昔から教授はそういう人ですよね。教授、講義が久しぶりに聞きたいです。生徒たちも絶対に記念になると思います。お願いします」
「えっ、僕、殿下の父兄参観のつもりだったんだけど・・・」
「えっ、アジョシ!?」
「坊主、親に授業参観来てもらったことなかったろ?だからな・・・来たついでにしてやろうかなって思った」
「アジョシ、俺もアジョシの授業、受けてみたい。講義してくれよ」
「・・・親父、してやれば?俺も久しぶりに聞いてやるよ」
「ハァ、分かった」

教師が教室の隅に移動すると、チェウォンは渋々教壇の上に立った。

「大学で韓国史を教えていますシンです。何を話していいのか・・・う~ん。昔の王宮には、王に仕える男性を内侍(ネシ)と言いました。今現在は侍従、呼ぶ時は内官(ネカン)という呼称をつけます。まぁ、親しみやすい言葉で言えば、執事兼秘書のような役割です」

チェウォンは、黒板に 内侍 と漢字で書きながら、話した。

「内侍の仕事の一つに 王様の日誌の記入がありました。君たちが書いている学級日誌の王様版。朝起きた時から夜寝るまで、何を食べたのか、何をしたのか、誰に会ったのか、昔は側室制度があったから誰の部屋で休まれたのかまでびっしり。内侍は、その日誌を参考に王様の怒りを買わないよう進言をする。『最近、あちらの側室の方と睦んでおられません。今晩あたり、いかがでしょう?』きっと昔の内侍も心の中では、誰も言いたくないっつうの!!と思ってたでしょうね。政治的に入宮してくる女性が大半でしたから、内侍の方も板挟みで大変だったと思います。ナイーブな僕なら絶対胃潰瘍の道、まっしぐらだったでしょうね」

そこまで話すと、チェウォンはニカッと笑った。

「そんな日誌が、今の宮にも現存して保管されています。勿論、非公開です。でも僕は弟子がいるお陰で、こっそり読んだのですが、驚くことに生まれた時から克明に記録されていました。今現在もその風習は残っています。皆さんは、これをどう思いますか?侍従の人は、大変だなぁと思う人もいるでしょう?殿下、当事者としてどう思ってる?」
「えっ!?正直、キツイ。初等部3年になって、やっと風呂に一人で入るようになって、一人の時間が持てた。昔、教えてくれたよね。ここの段差で世宗大王が転んで足を挫いたんだとか、誰か忘れたけど、側室に会いに行こうとして妃宮様に睨まれオロオロしたとか、俺の情けない話が後世に残るかと思うと泣きたくなる。泣かないけどな」
「クククッ、だそうです。まぁ、殿下がここでいくら愚痴ろうが、後世まで確実に残されますから。残念」
「ここで笑い話を一つ。宮内に慶会楼(キョンフェル)という建物があります。その昔、外国からの使者を歓待する建物で、僕はその建物から見える夕方の風景がとても好きです。今は期間限定で一般公開されているようですから、良かったら一度拝観してみてください。その慶会楼の周りに池があって美しいのですが、水に入ろうとは思えない池なんです。でも僕が敬愛する先帝陛下は、幼少の頃、周りの侍従の制止を振り切って泳いだと記録に残っていました。その記録の次の日。先帝陛下付きの女官が、血相を変えて医務官と侍従に向かって叫んだようです。『皇孫さまの大事なものが・・・///タ、タマが尿道に移動されてしまわれました~!』と、日誌に書かれていました」

男子生徒は、机を叩いて爆笑していた。

「女生徒の皆さんも将来母親になるので覚えておいてください。タマは上下に動いても絶対に尿道には移動しません。汚い水に入ったため、ばい菌が入っただけです。僕は汚い手で触るから、自慢じゃないけどよく腫らしました。男の子が生まれたら注意してあげてください。腫れた場合は、速やかに小児科に受診です。それから殿下、君は池で泳ぎたくなっても見るだけにして。プールに連れて行ってあげるから♪ああ、皆さん、今の話は、他言無用で・・・僕、捕まりたくないから♪捕まったら、恨むよ(ニカッ)」

もう笑い過ぎて、息絶え絶えの生徒が続出している。しばらく時間を開けて、チェウォンは再び話し始めた。

「結構ね、今の暮らしにマッチしてない風習が、宮には残っているのが現状です。先程も話したけれど、昔のオンドルは、薪を燃やして床下を温めてたのは知ってるよね?だから火事になる危険性も高かった。万が一に備えて、皇族は離れた殿閣に一人一つずつ宛がわれ、女官数名と暮らしてたんだ。言葉も残ってる。王様が夜女性の元に行くのを『渡り』と言う。これ、今も残ってるんだ。『昨夜、陛下がお渡りになられた』 大きなお世話だよね?ああ、僕が読んだのは、今の陛下じゃないから想像しないで」

またもや笑い声が、クスクス漏れた。

「そういう話じゃなくて、その風習が残ってて、陛下と皇后さまはご一緒だけど、殿下も皇后さまも一人暮らしと言う事。殿下は5歳から、広い殿閣で一人暮らしなんだ。宮の掟で、皇族の体に無暗に触れてはならないというのがあって、添い寝もなし。でも不満も言わず、グッと我慢して、学校が終わったら、将来皇帝や大君になる準備で遅くまで学校以外の勉強をしてる。その勉強も死ぬまで続けられるんだよね。これが、歴代の皇族の皆さんの生活と日常です。皆さんはどう思ったかな?中には、税金で暮らしてるから当然だと思う人もいるかもしれない。でも公務では言葉に気を使い、興味がなくとも笑顔を絶やさず、外務省が外国の要人を宮に招けば、外交問題にならないようあらゆる角度から要人のプロフィールからその国の事まで頭にすべてインプットして会談や会食に臨む。ホントかなりのプレッシャーだよね。皇族も僕たちと同じ人間であって、特に殿下は君たちと同い年だということを理解してくれるとありがたいです。ゴメンね、僕の一番弟子だから思い入れが強くって」

デへっと照れ笑いすると、チェウォンはシンを優しげに見つめた。

「最後にもう一つ、お願いがあります。ジフ、ここでは理事長だね。彼に聞いたけど、殿下の護衛、翊衛士は校舎には入ってこないんだね。彼らも報告の義務があるんだ。でも校舎内にいる限り、宮に報告はされないよね?だからクラスメートとして気軽に接して、世間知らずだから巷の事を色々教えてあげて。その代わり、宮の事や勉強の分からない所を聞けばいい。ギブ&テイクだね。でも女遊びとか悪い遊びはダメ。宮内警察に捕まるから♪」

突然、ジフがお腹を抱えて笑いだした。

「ジフ・・・余計な事を言うなよ!?」
「プププ、ごめん。このおっさんね、現陛下と亡くなった兄上が結婚適齢期にさしかかった時、『初夜で失敗しないように仮装させて風俗に連れて行ってあげようか?だから、お金出して』って言って、先帝陛下と父親に頭殴られたんだってさ。教授だか何だか知らないけど、この人本当にバカだから・・・」
ジフ~~!!因みにお前の親父を連れて行こうとして大統領警護官に拘束された後、お前の母ちゃんに引っかかれた。アハ」
このクサレ外道が~~!!
「娘には言わないで・・・公園に行こうとしただけだから・・・」
「「「「ブハッ・・・」」」

もう教室中、収拾がつかないほどの大爆笑になってしまった。

(やっぱりシン教授、裏切らないよなぁ~~♪久しぶりの講義は、やっぱり面白かった♪)


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