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Channel: ゆうちゃんの日記
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イ・シンの評価 第15話

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シンは、いつも訓育を受けている書筵堂に辿り着くと、キョロキョロと周りを見回した。
辺りに誰もいないことを確認したシンは、そっと中に侵入し、チェウォンと見つけた屋根裏部屋を目指した。

(ここに絶対にある筈・・・でも隠すような場所あったっけ?)

息が詰まると良く利用していたが、隠し場所のようなところに思い当らなかった。
天井が低く、格子窓の外から夕焼けが見える。

(いくら見回してもいつも背もたれにしている古い箪笥しかないんだよなぁ・・・)

上段の開き扉を開けると、紙切れが一枚 ≪惜しい・・・もっとよく探してごらん。でもよく思い出した。褒めてやる≫

「グッ、プププ・・・宝探しかよ・・・惜しいってことは、やっぱここか?」

しかし箪笥の裏、引き出しの中にはなかった。
落胆しながら箪笥を眺めていると、少し違和感を感じた。

(何だ?この箪笥、もう一段引き出しがあってもいいぐらいだよな。頑丈に分厚い板で作られてるのか?まさか・・・)

シンが一番下の引き出しを全部引き出すと、明らかに一部が取り外せる板が填め込まれていた。

「あった!!」

興奮しながら羽目板を取り外すと、シンは封筒を取り出し、大爆笑したのだった。

≪よっ、名探偵シン君♪コングラチュレーション!≫

(アジョシ、コングラチュレーションぐらい英語で書けよ。何でハングルなんだよ。却って読みにくいだろうが・・・)

自分宛のメモ2枚とA4サイズの封筒を持つと、陛下とコン内官の待つ執務室に戻った。

「失礼します。陛下、見つけました。こちらです」

差し出した封筒には、マジックで但し書きがしてあった。

≪イ・シン殿下が皇帝に就く前にイ・ユル殿下が英国より帰国された時のみ、イ・ヒョン皇帝陛下が開封してください    チェ・ウォン≫

封筒を開けると、中から出てきたのは、手紙が2通と1枚の紙きれだった。
紙きれは、宮の透かし模様がある先帝愛用の紙で、孝烈殿下の直筆で≪我が息子義誠君が有する皇位継承権を放棄する≫とあり、署名・落款までしてあった。

「!!これは・・・コン内官は、知っておったのか?」
「はい、陛下。時期が来るまで口外無用と言われており、お話しすることができませんでした。申し訳ありません。詳しい説明は、そちらの手紙に書いてあると思います。どうぞご覧になってください」
「ああ・・・」
「陛下、僕とコン内官は席を外しましょう。どうぞお1人でご覧になってください。コン内官、行こう」
「クスッ、はい、殿下」

シンが席を立って、部屋を出て行こうとすると、背後から声を掛けられた。

「太子、この事を知っておったのか?」
「はい。今日、アジョシに教えてもらいました」   
「そうか・・・分かった。行ってよい」
「失礼します」

一人になった後、陛下は1通目のチェウォンの手紙を読んだ後、すぐに2通目の先帝の手紙を開けた。
2通とも目を通した陛下は、己の人を見る目の未熟さ、考えの甘さを痛感し、しばらく動けなかった。

(父上や兄上がこんなに悩んでおられたとは・・・何も知らなかった。兄上に先立たれた義姉上に同情までしていた私は、陛下に何て滑稽に映っただろう。それでも何も言わずに見守ってくださっていたとは・・・)



一方、シンは、コン内官と共にユン家が差し向けた車に乗り込んだ。

「コン内官、アジョシの家に向かうのに 何でユン家の車が迎えに来るんだ?」
「ユン家はセキュリティー万全ですので、2年前よりユン家の離れにお住まいだそうです」
「・・・24時間SPを付けてるってこういうことか・・・学校と自宅、それに送迎付きとなれば完璧な警護だよな」
「はい、そう存じます」
「そうだ。昨日、拘束された王族はどうなったんだ?」
「午前中に最長老が参内されまして、ソン・ウビン氏が提出してくださった証拠を提示し、ご説明いたしました。そして陛下が書かれた勅命を持って、拘束された王族の家を1軒ずつ訪問していただきました」
「陛下の勅命の内容は?」
「はい、一族全員王族の称号を剥奪、拘束された家の者は全員ソウル追放。余罪を調べた後、慰謝料及び賠償金を支払うように命じる。で、ございます」
「そうか・・・これで王族から婚姻を迫られる事はなくなるな」
「・・・これは私の憶測ですが、今まで諦めていた少し年上の令嬢が名乗りを上げてくるような気がします」
「ハァ、勘弁してほしい。一応、該当者はリストアップして、調べておいて。きっとまともなのは少ない筈」
「かしこまりました」

コン内官と今後を話し合っている間、下町を通り抜け、少し小高い所にある立派なもんの中に車は入って行った。
シンは、車を降りると辺りを見回し、しばらく立ち尽くした。

「遅かったね。何、見てるの?懐かしい?」
「ええ。この庭で遊んだ事を思い出しました。ホント懐かしいです」
「入って。アジョシ、突然、出て行ったんだよね。だから急遽、俺ん家で飯だから・・・」
「あ、はい」

ユン・ソギョン邸に入るとすぐにリビングで、タイプは違うが見目麗しい青年3人がソファーで寛いでいた。
そしてシンの姿を認めると、3人は立ちあがり、軽く頭を下げた。

「紹介する。ウビンは昨日会ったよね?その隣が神話のク・ジュンピョで、右端が陶芸家のソ・イジョン。3人とも俺の親友で、殿下の協力者」
「イ・シンです。宮の不祥事の尻拭い、本当に申し訳ありません。ご協力、感謝します。宜しくお願いします」
「はじめまして、ク・ジュンピョです。俺もウビンも手を切りたい王族企業が多々あるので、協力は惜しみませんよ。ましてやあの天然娘を守るためなら尚更です」
「そう、そう。昨日は、どうも(ニコッ)」
「俺は文化人なんで、コイツらが参加できないパーティーにも参加できるんで、ジフと一緒にそっちで情報収集にまわります。ジフは、政界に人脈広いしな」
「言っとくけど、政治家になるつもりないから・・・俺、一応、外科医だからね」
「えっ!?」
「ひょっとして仕事、理事長だと思ってた?今は芸校の校医だけだけど、ちゃんと医師免許持ってるから・・・それよりチェギョンの見舞いでしょ?そこの廊下を真っ直ぐ行ったら、離れに通じてるからさ。離れの2階の右の部屋がチェギョンの部屋だから、行ってきな」
「はい、じゃお邪魔してきます」
「いってら~♪ああ、誰もいないからってオイタはダメだからね。アジョシ、まだ心の準備できてないだろうしね。グハッ・・・」

背後でジフが大笑いしている声を無視して、シンは離れに向かうのだった。

(俺からしたら、ジフさんもアジョシと変わらないよな。ホントくえない性格・・・)










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