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Channel: ゆうちゃんの日記
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改訂版 開眼 第6話

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風呂から上がったシンは、部屋に戻ると、少し考えてからリュ・ファンに連絡を入れた。
 
『ヨボセヨ。シン?こんな時間にどうしたの?』
「・・・ファン、学校で噂になってる俺の【秘密の恋人】って誰だ?」
『ハァ?シン、何言ってんの?ヒョリンと付き合ってるんでしょ?』
「ヒョリン?ヒョリンは、インの女だろうが・・・ファン、何おかしなこと言ってるんだ?」
『ちょっと待って。シン、本当にヒョリンと付き合ってないの?』
「話したこともないし、二人で会った事もない。そんなのいつも一緒にいるお前らが一番知ってるだろうが・・・一体、誰がそんな噂を流してるんだ?」
『・・・・・』
「ファン?おい、何とか言えよ」
『ゴメン。最初、おかしいとは僕も思ったんだ。でもヒョリンが、『シンは照れ屋なのよ。二人の時はとても情熱的なんだけどね』って・・・噂が流れてもシンは何も言わないし・・・じゃあ、ヒョリンの嘘なんだよね?』
「全くの出鱈目だ。大体、俺は学校と宮との往復しかしたことがないし、傍には必ず翊衛士がいる。二人になることは、絶対にありえない」
『だよね・・・僕らが間違ってた』
「ファン、俺は進級するまで学校には行けない。それまでに噂を払拭しておいてくれ」
『うん、一応、やってみるけど、あまり期待しないで。正直、インとギョンは、完全にお前たちは付き合ってるもんだと信じてるからね』
「ファン、これ以上大ごとになれば宮が動く。皇族の婚姻は早い。今、この手の噂は非常に拙いんだ。ファン、何としてでも止めるんだ」
『分かった。じゃあ、シンも公務、頑張って』
 
電話を切ったシンは、床に敷かれた布団にゴロンと寝ころび、天井を睨みつけた。
 
(噂を流した犯人が、ヒョリン本人だって!?あり得ないだろうが・・・あの女、何を考えてるんだ?大体、俺よりインの方がいつも一緒に行動してるんじゃないのか?訳分かんない女だよな・・・)
 
慣れない布団で眠れそうもなかったが、オンドル(韓国式床暖房)が思いのほか気持ち良く、シンはスッと眠りに落ちていった。
 
 
 
翌日から、シンはチェジュンと護衛のチュンハと共に 工事現場に放り込まれた。
背負子を背負い、何個ものブロックを乗せられ、現場までを往復する単純作業。
ブロックの重みが肩に食い込み、体が悲鳴を上げるが、チェジュンが、シンを心配し励まし続けてくれた。
 
(俺より体力無いはずなのに、チェジュンの奴・・・)
 
現場で働くおっさん連中のワイ談には閉口したが、シンにとって聞く話すべてが新鮮だった。
そして生まれて初めて空腹を知り、労働の後の飯はとても美味しいと感じた。
最後に バイト代を手にしたとき、シンは震えるぐらい感動してしまった。
 
「初めて汗水たらして働いて手にした金はどうだ?」
「すごく感動してます。この5万ウォン、記念に取っておきます」
「オーバーな奴だな。ちょっとそこのレストランのメニュー表を見てごらん」
 
シンは、指さされたレストランに近づくと、看板のメニューに目を向けた。
 
「これが、ソウルの物価だ。ここは気軽に行ける店だが、そこそこのレストランなら一人10万ウォンは軽くする」
「えっ!?」
「サラリーマンの平均給料は、200万ウォン~300万ウォンの間ぐらい。国民は、その中から税金を払い、家族を養って生活している。この国は学歴社会だから、子どもの教育費はバカにならない。大変だと思わないか?」
「・・・思います」
「昨日、買い取った服の値札は見たか?」
「あっ・・・!!」
「明らかに贅沢品だろ?」
「はい、それもかなり・・・」
「有名芸能人や皇太子が着ているとなれば、宣伝にもなるし、店側も喜んで無償提供するだろう。だが、ただの御曹司なら何のメリットもない。勝手にお持ち帰りしていたなら、たかりという犯罪になる」
「・・・・・」
「今日、社長自ら出向いて、被害に遭っていたショップに謝罪と代金を支払ったそうだ。その額、1000万ウォン以上」
「!!!」
「坊主、宮は国民が納めた税金で維持し、生活が賄われている。国民がいるから成り立っているんだ。それを忘れるな」
「はい!」
 
家に戻ると、満面の笑みを浮かべたチェギョンに出迎えられ、そのままチェジュンと一緒に風呂に押し込まれた。
 
「はぁ、気持ちいい~!ヒョン、疲れたろ?肩、大丈夫か?」
「ああ、何とか。チェジュンは大丈夫か?」
「何とかな。。。どうせ3年間は、俺はこんな生活だろうし諦めてるさ」
「シン家の教育方針だもんな。。。なぁ、チェジュンから見た姉さんて、どんな奴なんだ?」
「ヒョン・・・ヌナに興味持ったか?どうと言われても・・・10年近く留学してて、俺だってヌナと住みだして半年だからな。いつも明るく裏表がない。悪く言えば、バカ正直?・・・親父、よく人拾ってくんだよ。来た当初はナイフのように尖ってんだけど、最後の方は優しい目になるんだ。それがさぁ、ヌナが帰国してから、そいつ等来た翌日から顔つきが変わるようになった。多分、ヌナの笑顔に癒されるんだろうな」
「・・・・・」
「ヒョン、それはヒョンにも当てはまると思ってるけど?俺、【氷の皇子】のヒョン、昨日から一度も見てないし」
「・・・シン家の人たち全員に癒されてるよ。アジョシは、ビックリの方が多いけどな」
「クククッ、親父は普通じゃないからな。祖父さんも俺は優しい祖父さんの記憶しかないけど、親父には厳しかったらしい。親父も2代目のボンボンだからな」
「で、チェジュンは3代目だな」
「ヒョン・・・俺は、お互いが好きならヌナとのこと反対しない」
「チェジュン?」
「ヒョン、俺、腹減ったよ。早く、身体洗って上がろうぜ」
「ああ、うん・・・」
 
風呂から上がり、夕ご飯を腹いっぱい食べたシンは、チェギョンに肩を借りて部屋に戻った。
そして全身筋肉痛で動けないシンは、チェギョンにクスクス笑われながら、全身に湿布を貼ってもらったのだった。
 
(この俺が湿布だらけになるなんて・・・)
 
 
工事現場の次は、漁師の家に泊まり込みで漁船に乗り、続いて農家に泊まり込んで野菜の収穫や苗の植え替えなどの手伝いをさせられた。
夜が明けきらないうちに出航して、漁場まで移動し、シン達は漁師たちに交じって網を引き揚げた。
波に揺られながらの作業は、かなり困難を極めたが、取れたての魚をその場で捌いてもらって食べた刺身は最高に美味しかった。
そして漁獲量によって、毎日日当が違い、魚が取れないと日当が0の時もあると聞き、漁業に従事する人たちの大変さを知った。
また農家では、老夫婦が温かく迎えてくれ、収穫作業の合間に色々な話を聞かせてくれ、シンは興味深く話をきいたのだった。
充実した日々だったが、全ての予定を終え、迎えに来たチェウォンを見た時は、なぜかホッとした。
 
「お疲れさん。ソウルに戻ろう」
「「はい」」
「坊主、この1週間、どうだった?辛かったか?」
「体力的にはきつかったですが、聞いた話はどれも興味深くて、とても有意義に過ごせました。また取れたての魚や野菜の味は、最高に美味しかった」
「だろうな・・・坊主、良い顔になったな。坊主、ここまでの体験はできないだろうが、宮に戻っても公務という形で色々な人の話を聞くことができる。お前は、恵まれた環境なんだよ」
「あっ・・・」
「皇族は、親身になって話に耳を傾け、手を握って励まし、言葉をかけるだけで、喜ばれる存在だ。俺的にはオイシイ職業だと思うけど?」
「オイシイ職業・・・ですか?」
「そう、職業!責任が人より少し重いだけだ。制約なんて、人それぞれ皆あるんだよ。チェジュンとチェギョンだって、誘拐防止の為、学校と自宅以外はSPが付いている。したくない勉強もしてるしな。坊主と一緒だ。それより究極の制約を強いられてるのは、女官だよな。今の時代に恋愛禁止って、人権侵害もいいところだろうが・・・」
 
チェウォンの話を聞いて、シンは目から鱗が落ちるような気分になった。
 
(俺だけが辛いわけじゃなかったんだな・・・)
 
「チェジュンは、疲れて寝てしまったようだな。坊主も着くまで、少し眠れ。チェギョンが、坊主の部屋着をバカ程作って、帰ってくるのを待ってたぞ。楽しみにしてろ」
「はい・・・」
 
目を瞑ると、チェギョンの笑顔が思い出され、シンはスーッと眠りに落ちていくのだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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