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Channel: ゆうちゃんの日記
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四獣神 第9話

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朝、バタバタと人が走る音で、シンは目が覚めた。
ノックもなしに寝室のドアが開けられ、コン内官が姿を現した。

「コン内官、何かあったのですか?」
「い、いえ、お帰りなら良いのです。昨夜から殿下がお戻りでないと報告を受けたものですから焦ってしまいました」
「あっ・・・」

シンは、香遠亭から誰にも声を掛けずに東宮殿に戻ったことを反省した。

「次回から気をつけます。そうだ、忘れていた。伯母上の携帯の発信記録にミン・ヒョリンという名前がなかったか調べてほしい」
「ミン・ヒョリン・・・昨日、話に出ていた女生徒の名前ですね?」
「ああ、彼女の携帯に≪ファヨン先生≫という着信記録があったんだ。伯母上がヒョリンを使って、何か企んでいるのかもしれない」
「すぐに調べます」
「それから9時にシン・チェヨン氏の使いの者が宮にやってくる。その際、皆さんに集まってもらえるよう手配してほしい」
「えっ、かしこまりました。殿下、朝の挨拶に遅れます。お急ぎください」

朝の挨拶で昨夜知り得た情報を話し、一旦朝食を摂りに東宮殿に戻ったシンは、9時前に再び正殿に戻った。
シンが部屋に入った時、もうすでに皇太后に皇帝・皇后両陛下は定位置に腰掛け、玄武は陛下の膝の上にいた。

「遅くなりました」
「いや、まだ時間前だ。気にする事はない。それよりホ弁護士の話も気にかかる」
「へ?(何で三尾さんが?)」
「先程、連絡があったんだよ。『9時からのご予定は?』とな。急なトラブルかもしれないな」

≪は?ハラボジ、急に飛ばさないでよ。って、ここどこ?≫
                                          『姫、ここは宮で、皇族が集まる部屋の隣の部屋だな
≪ヨンちゃん、マジですか!?タイちゃん、帰るわよ≫
クククッ、分かった。青、ソンジョの孫の世話、頑張れよ


シンは慌てて席を立つと、声のする部屋との襖扉を開けた。

「チェギョン、さっきから声聞こえているから・・・観念して、こっちに来てくれ」
「げっ、皆さん、勢揃いだったりする?」
「する。あれ?朱雀は一緒じゃないのか?」
「うん。上手く逃げたみたい」

シンが女の子の手を引いているのを見て、陛下と皇后は驚いてしまった。

「突然、お邪魔して申し訳ありません。はじめまして、シン・チェギョンと申します。今日はハラボジの使いできました」
「チェギョン、久しぶりじゃの。覚えておるか?」
「あっ、薄紫のハルモニ!いつも亀さんを膝に乗せてた・・・ん、亀さんは?」
「チェギョン、陛下の膝の上だ」

何も分からない陛下は、シンの言葉にキョトンとし己の膝を見た。
そしてそれまでキョロキョロしていたチェギョンが、玄武の姿を認めると途端に難しい顔をした。

「シン・チェギョン、どうした?」
「殿下、皇后さまを向かいのソファーにご案内して・・・」
「えっ?・・・ああ、分かった。皇后さま、こちらへ」

シンは、チェギョンに言われたまま陛下の隣に座っていた皇后をエスコートして、反対側のソファーに腰掛けた。

「亀さん、大変だったね。おいで」

シンには、陛下の膝からチェギョンの背後に抱きついた玄武が見えた。

「殿下、申し訳ないんだけど、食べ物用意してくれる?できれば、3人分ぐらい?」
「ああ、分かった」
「陛下のお身体は、私が見る限り、多少胃腸が弱いことはあってもどこも悪くありません。気持ちの問題だと思われます」
「「「えっ!?」」」
「私もあの変なハラボジの孫ですから、そこに立っているハルモニの膝が悪いことや皇后さまが腰痛を抱えておられるぐらい分かります。皇后さま、少し失礼しますね」

そう言うと、チェギョンは皇后の腰に手を当て、ジッと念を送った。

「皇后さま、いかがですか?」
「あら?何やら腰が軽くなったような気がします。今、何をしたのですか?」
「ヒーリングです。でも痛みを除いただけです。治療は、病院でお願いしますね」
「ええ、分かりました。ありがとう」
「ハルモニは後でしますね。殿下、ハルモニにも座ってもらって」
「了解」

シンは、遠慮する最高尚宮を背もたれのないソファーに座らせた。

「陛下、生まれつき体が弱いのは仕方ありません。ですが、心まで弱らせてはいけません。その精神の弱さが体を蝕んでいるんです。病は気からと言うでしょう?」
「無礼な!!」
「ああ、だから私じゃダメだってば・・・どうしたら信じてもらえると思う?」
『あれは、我らが見えぬからの』
「へ?見えないの?なのに皇帝?ウソでしょう?」
「一体、何をブツブツ言っておるのだ?」
「チェギョン、昨日ソンさんがしてみせたような印は結べないのか?翊衛士に見せたやつ・・・」
「ああ、あれ?でも陛下じゃキャパオーバーだと思うけど?翊衛士のオッパも腰抜かしてたし・・・」
『姫、構わぬ。やれ!倒れたら、それまで。玄の力が他に回せる』
「青龍、待ってくれ!陛下を見捨てるのか?」
『いくら玄が痛みを取ってやっても本人に気力がなくては仕方あるまい。玄の力が勿体ないわ』
「・・・太子まで一体誰と話しておるのだ?」
「チェギョン、構わない。やってくれ」
「・・・分かった。それより陛下から出ている気で、部屋の空気が悪い。これを何とかしないと、タイちゃん達が辛い」
「言われてみれば・・・少し暗いな」
「少しじゃないわよ!この気が、いつもそばにいる皇后さまに影響してるんだから・・・」

チェギョンがブツブツ何かを唱えたと思うと、部屋がスーッと明るくなったように感じられた。

「「「えっ!?」」」
「私、ほとんど修行してないから、オッパみたいに一人だけって無理なのよね」

チェギョンが指で印を結んで『ハッ!!』と気合を入れた瞬間、部屋に居る全員に玄武、白虎、青龍の姿が目に飛び込んできた。

「デカッ!何で、皆大きくなってるかなぁ?窮屈なんだけど?」
『クククッ・・・姫、すまぬな。何でも最初が肝心だと言うだろう?』
「あはは・・・亀さん、姿だけ?ひょっとして通訳必要?」
『いや、正気なら聞こえておる筈だ。愚かなソンジョの息子よ、我は玄武。我の声が聞こえておろう?』
「は、は、はい」
『先程、我らの姫が言ったことは間違ってはおらぬ。本来なら、我らは宮を守る神。だが儂は、お前の体調維持しかできなかった。その所為で、ソンジョがいた時のような宮ではなくなった。例え体が弱く、気が小さくともお前は皇帝だ。皇帝としての義務は果たそうと思わぬのか?バカな王族達に丸め込まれ、ストレスを貯めるなど自業自得というものだ』
亀さん、かなりご立腹みたいだね
ああ、玄の方が相当ストレスを貯めていたと見た。俺、姫といられて良かったぜ
へへへ・・・
『そこ!姫、白、喧しいわ!!ソンジョの息子、これから怒涛のような日々が始まる。歯を食いしばって皇帝を続けろ』
「・・・はい」
『この阿呆は、本当に分かっているのか?』
『青・・・だから孫を覚醒させたのだ。孫の教育を頼んだぞ』
『本人次第だ。孫、ヤル気はあるのか?ないのなら言え。今すぐ俺は宮を去る』
「「「!!!」」」
『頑張ります。宜しくお願いします』
『そこの阿呆な息子よ、我はソンジョの守護神だった白虎。ソンジョは病を克服する機会をチェヨンに貰っていた。だが、≪昔のような気力はない。病が治ってもこれでは国民に迷惑をかける。精一杯生きた。悔いはない≫と言って生涯を閉じた。お前は、皇帝としての務めを果たし、精一杯生きておるか?』
「・・・・・」

≪ご歓談中、申し訳ありません。東宮殿付きの翊衛士、キムでございます。至急、こちらへ来るようにと言われ参上いたしました≫

廊下から先触れが聞こえた瞬間、三神は姿を消した。

「殿下、多分ハラボジの指示をキムさん夫婦が伝えたんだと思う」
「分かった。キム翊衛士、入ってくれ」
「御意」

キム翊衛士は、部屋に皇族全員と昨日出会った女生徒がいて、思わず固まってしまった。

「オッパ、キムさんは家のアパートに何か言っていましたか?」
「い、いいえ。大変良くしてもらっていて、申し訳ないぐらいだと言っていました」
「そう、良かった。オッパを呼び出したのは、多分私のハラボジです。今朝、路上で死んでいる王族のチョンさんが発見されたそうです。多分、内輪揉めだと思う」
「「「!!!」」」
「昨日、姿を消したオッパのご両親に疑いが掛かり、警察がオッパに行方を聞いてくると思う。その時は、雇用先が物騒だから逃げると言っていたと証言してくれますか?そして私やソンの話はせずにご両親に連絡を取ってください」
「は、はい。でも大丈夫なのですか?」
「はい。昨日は夜通し、キムさん夫婦の歓迎会でドンチャン騒ぎをしていましたのでアリバイは十分。証言できる人間も信頼できる者ばかりよ。殿下もいらっしゃいましたし・・・」
「えっ、殿下?」
「ああ、いた。本当に何もしていないんだ。安心していい」
「私の話は以上。オッパ、時間とってゴメンね」
「い、いいえ。両親を宜しくお願いします。では、失礼させていただきます」

キム翊衛士は一礼すると、部屋を出ていった。

「陛下、所轄警察が捜査をしていると思いますが、これを宮内警察預かりにしていただけませんか?」
「・・・・・」
「マズイ!殿下、皆さんを部屋の外に・・・」
「えっ、あっ!!」

チェギョンの視線の先には、黒いオーラを纏った陛下がガタガタと震えている姿があった。



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