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シンとチェギョンの離婚騒動記 前篇

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皇太子イ・シンとシン・チェギョンは、先帝の遺言で婚姻をしたが、最初はギクシャクした関係だった。
だがお互い歩み寄り会話をすることで、徐々に打ち解けてきたようにシンは感じていたが、最後の壁がどうしても打ち破ることができずにいた。

(あと一歩踏み込もうとすると、チェギョンはサッと引いてしまう。何でだ?)

そんなある日、シンが映像科の教室にいると、ギョンが凄い勢いで飛び込んできた。

「おい、聞いたか?アヒルが、今日から来た美術の臨時講師と公衆の面前で抱き合ったらしいぜ」
「!!!」
「やっぱり庶民出の皇太子妃様は品がないな・・・シン、お前もそう思ってるだろ?」
「イン、いい加減にしろ。それはシンもお互い様だろ?」

シンは、チェギョンが男と抱き合っていたと聞いて、その後のインとファンの言葉は耳に入っていなかった。
呆然としていると、突然シンのスマホから着信音が流れた。

『シン君?私、チェギョンだけど・・・今、良いかな?』
「・・・何だ?」
『あのね・・・お世話になった人が昼休みに訪ねて来てくれることになってね。申し訳ないんだけど、シン君のお部屋貸してもらえない?コン内官アジョシに聞いたら、シン君の許可を取ってくれって言われたの。良いかなぁ?』
「駄目だ!」

シンは、チェギョンが臨時講師と皇族専用部屋で密会するのかと思い、即座に拒絶して電話を切ってしまった。

「シン、誰からだったんだ?珍しく感情が出てるぜ」
「妃宮だ」
「えっ、アヒル!?お前ら、話する仲なのか?」
「・・・ギョン、バカだろ!突然婚姻したんだ。お互い分かりあうには会話は大事だろうが!」
「「「・・・・・・」」」

シンは、訳の分からないギョンの質問を退けるとコン内官に連絡を入れ、チェギョンを訪ねてくる人物を聞いたのだった。
昼休みになると、シンはチェギョンのお客さまを出迎える為、生徒用ではなく来客用の玄関に向かった。
そしてイン、ギョン、ファンは、シンが突然教室を出ていったので、ヒョリンに連絡を入れながら慌てて後を付いて行くのだった。
シン達が玄関に着くと、もうすでにチェギョンが女生徒と男性講師らしき男性の3人で仲良さそうに立ち話をしていた。
シンが呆然と立ちすくんでいると、その様子を見たギョン達が悪態を吐き出した。

「やっぱり庶民出の皇太子妃さまは違うねぇ。白昼堂々逢引きかよ。もう少し自分の立場を考えたらどうだ?」
「えっ!?」
「君、何を勘違いしてるのか知らないけれど、僕たちは幼馴染みたいなものだよ。同じ絵画教室に通ってたんだ。クスッ、そういう殿下こそ、もう少しご自分の立場をお考えにならないと・・・チェギョンが可哀想ですよ」
「えっ!?どういう・・・」
「流石、皇子様というか・・・既婚者である貴方がいつも同じ女性を隣に侍らせ、呼び捨てを許しているのはどうかと思いますけどね。半日しかいませんが、僕の耳にも噂は入ってきてますよ」
「オッパ!!」
「チェギョンは黙ってなさい。噂をすれば・・・ガンヒョン、あの子が全然秘密になってない殿下の秘密の恋人か?」
「ええ、そうよ。いつもチェギョンに偉そうに文句言いに来るのよ。そこのバカ3人と一緒にね」
「えっ!?」
「う、煩い!!誰がバカだって!?俺たちは、親切に庶民に真実を教えて、分を弁えろって教えてやっただけだ」

ギョンの怒鳴り声で、生徒達が大勢集まり出し、息を潜めて成り行きを見守っていた。

「庶民ね・・・チェギョンは国民が認める皇族だけど、君たちはまだ庶民とバカにしてるわけだ。殿下、一つお伺いしたい。なぜチェギョンとの婚姻を承諾したのです?」
「黙れ、エセ講師!シンはなぁ、ヒョリンと結婚の約束をしてたのに無理やり婚姻させられたんだ!学校の中でぐらい、恋人と一緒にいても罰は当たらないだろうが!!」
『!!!』
「・・・殿下、本当ですか?僕が聞いた話と違うんですが・・・殿下には拒否することもできたのに承諾した。だから話が進んだのではないですか?」
「は?嘘吐くな!大体、借金まみれの家の娘より将来有望で社長令嬢のヒョリンの方が、断然シンに相応しいだろうが!!」
「おい、さっきからギャンギャン吠えてるお前、宮に一時期お借りした借金は全額返済したし、シン家に借金はない。それに将来有望?誰がだ?俺の祖父や親父が大事に育ててきたチェギョンの才能を摘み取ったのは、宮だろうが!!」
「「「えっ!?」」」
「俺は嘘を吐いていない。俺の祖父が、チェギョンの描いた絵を売った金を持って婚約破棄を願い出たが、皇太后さまに拒否されたんだ。殿下が承諾したから、このまま推し進めるとね。チェギョンは、もう篤志家の間では有名な画家の卵だったんだ。それに先帝と人間国宝が認めたチェギョンより相応しいって、一体どこの令嬢なわけ?」
「・・・・・」
「ガンヒョン、そこの殿下の彼女はどこの令嬢なわけ?」
「知らないわよ。聞いたことも会ったこともないもの・・・妾腹じゃないの?そこのバカ3人の母親も最近じゃ肩身の狭い想いをしているらしいわよ。一国の皇太子に息子達が女を宛がおうとしてるって・・・」
『!!!』
「黙れ、貧乏人!ヒョリンはな、ミン貿易の令嬢だ!!」

ギョンがヒョリンの素性を叫ぶと、男性講師は一瞬唖然としたが、すぐにヒョリンを睨みつけた。

「君、俺のこと兄貴から聞いたことある?俺、ジュヒョクから聞いたことないけど?」
「えっ!?ジュヒョクオッパの妹さんなの?」
「チェギョン、あんたどこまで大ボケなのよ。ジュヒョクオッパは、2人兄弟でしょうが!チェギョンみたいな娘が欲しかったのって、あんたミン社長夫婦に溺愛されてたわよね?」
「「「えっ!?」」」
「うん、えへへ・・・『お嫁さんにおいで』って言ってもらってた」
「クスクス、ジュヒョクは怒ってたけど、半分その気だったよ。で、自称ミン貿易のお嬢さん、ご両親や兄が溺愛しているチェギョンを知ってて罵倒してたわけ?」
「・・・で、でもプロポーズをされたのは私よ!!」
『!!!』
「・・・殿下、それが本当なら、チェギョンをもう解放してもらえませんか?チェギョンを支援する者は、いくらでもいます。ご学友たちもそうお望みのようですよ」

目の前の会話が呑み込めず黙っていたシンは、男性講師に言われて我に返った。

「ちょ、ちょっと待ってください。僕は、チェギョンと別れるつもりはありません」
「「「シン!!」」」
「それにコイツらが何で勘違いしてるのか分かりませんが、ヒョリンは恋人ではありませんし、プロポーズもしてません・・・ヒョリン、何でそんな嘘を吐くんだ?」
「だって・・・」
「ヒョリン、君が『噂になってるけど結婚するのか?』と聞いてきた時、俺は確かに『友人の君のようだったら気心が知れてる分、楽だろうな』とは言った。だが、『明るくて良い子そうだから、会うのが楽しみだ』とも言った筈だ。違うか?」
「・・・シン・・・」
「以前、『宮って窮屈そうで肩が凝りそう』って言ったよな?それを聞いた俺が、何でヒョリンにプロポーズしないといけないわけ?」
「で、でもよぉシン、ヒョリンと付き合ってたんだろ?」
「イン、お前が言うか?!お前が、甲斐甲斐しく世話してるからお前の想い人か彼女だと思ってたから、傍にいる事を拒否しなかったんだ。そうじゃなかったら、排除してた」
「「うそ・・・・」」
「嘘じゃない!小さい頃からチェギョンが許嫁だって知ってたし、初めから受け入れていた。なのに無責任に他の女に手を出すような男だと思ってたのか?何で、そんなバカな誤解をしたんだ?ファン、何故だ?」
「それは・・・ヒョリンが・・・シンと付き合ってて、プロポーズされたのに無理やり結婚させられて可哀想だ。シンは妃殿下を心底嫌ってるって・・・」
『!!!』
「ハァ、原因は、自称ミン貿易の社長令嬢の嘘のようですね。殿下、もうすぐ祖父のハン・ソクジンと父のジェジュンが来ます」
「話は宮から聞きました。なぜ韓国の近代絵画の大家お二人が、妃宮に会いに来るのですか?」
「チェギョンは、2人の秘蔵っ子なんですよ。会いたいのもありますが、ガンヒョンが殿下のご学友たちの暴言を許せず、僕に相談したからです。祖父たちは別れさせる気満々で来ると思いますよ。どうします?」
「じゃ、じゃあシン、私があの女の代わりに皇太子妃になるわ」
『ハァ~~~~!?』

ヒョリンの頓珍漢な言葉に固唾をのんで見守っていた生徒たちから、大ブーイングが起こった。

「な、何なのよ!あんた達、煩いわね!」

ヒョリンが周りの生徒たちに怒鳴り散らしていると、玄関に車が止まり、運転席から若者が飛び出してきた。

「チェギョ~ン!!」
「「オッパ!!」」

オッパと呼ばれた男がチェギョンに抱きついたので、シンは慌ててチェギョンを奪い返し、自分の腕の中に閉じ込
めた。
その瞬間、周りの生徒たちから一斉にどよめきが起こった。

「「「シン!!」」」

(お前達、煩いんだよ!妻が男に抱き締められてるのを見て、平気でいる男がどこにいるんだっつうの!!俺たち、新婚なんだぞ!!)




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