早朝、徳寿宮前で集合した一行は、車3台に分かれて、目的地へと出発した。
午前9時すぎにシンとチェギョンをピックアップするため、温洋の御用邸に立ち寄った。
「ユルさま、いらっしゃいませ」
「チェ尚宮、シン達は?」
「それが・・・まだお目覚めでは・・・取りあえず、お上がりになってください。お茶をお出しします」
「はぁ~、まだ寝てるって事?シンは、いつもの離れ?」
「さようでございます」
「皆、ゆっくりしてて。ちょっと起こしてくるよ」
「ユルさま、慣れてる私が行った方がよろしいかと・・・」
「じゃ、付いてきて」
「はい」
ユルとヘジンは、シンとチェギョンが宿泊した離れへと向かった。
「ここさぁ、伝統的な韓屋の御用邸なんだけど、離れだけはバリ風のアジアンテイストなんだよね」
「確かにオープンな感じで、雰囲気が違いますね。ハァ、やっぱり・・・」
「えっ!?」
「ユルさまは、ここにいらっしゃってください。私が起こしてきます」
「あっ、うん・・・」
ヘジンは開け放たれた窓から部屋に侵入すると、申し訳程度に下半身にシーツを被せ、抱き合って寝ている二人を見て溜め息を吐いた。そしてチェギョンにシーツを被せ、シンを揺り起した。
「殿下、おはようございます。いい加減、起きてもらえませんか?」
「ん・・・チェギョン?」
「残念ながら、ヘジンです。チェギョンの体温計はどこですか?計るんでしょ?」
「えっ!?へ、ヘジン!///」
「殿下、体温計!」
「///あっ、俺のバッグの中だ。取ってくれ」
「はい、はい。もう全員が母屋で待っているんですが・・・何分ぐらい掛りますか?」
「・・・超特急で急いでも30分は掛るかも・・・先に行っててくれると有難い」
「では、鍵と住所を書いたメモをお渡しください」
「分かった。ゴメン、後ろ向いてくれる?俺、全裸なんだ」
「今更・・・はい、はい」
ヘジンが背を向けると、ユルが部屋の入り口でお腹を抱えて、笑いを堪えてる姿があった。
「はぁ、ユルさまもご覧になったんですか・・・これが、いつものお二人です」
「クスクス、ヘジン、お疲れさま。シン、一体、いつ眠ったんだ?」
「///ユル、煩いよ。明け方だったかな?・・・ユル、チェギョンを見るんじゃねぇぞ」
「プクククッ・・・明け方ね。チェギョン、悲惨。大丈夫なの?」
「・・・ああ。小さいけどこれで結構体力あるし、負担が掛るような抱き方はしていない」
「寝不足というだけで負担なんです!!何度言えば、分かっていただけるのか・・・頭は良いと思うんですけどね」
「///ヘジン、ゴメン」
「クククッ・・・ヘジン、最高♪シン、僕ら先に行くからさ、チェギョンをシャワーに入れて、キレイにしてから来いよ。ヘジン、行こう」
「///うるせぇ~」
背中越しにシンの喚く声を聞きながら、ユルはヘジンと母屋へ引き返した。
ユルはメンバーにシン達の状況を説明し、先に目的地である別荘へと移動した。
別荘に着いた一行は、話し合って部屋割りをし、いったん解散することにした。
「はぁ・・・ヘジン、想像以上にスゴイ別荘よね。温泉もあるんでしょ?」
「みたいね。。。さぁ私は、早くレオタードに着替えて、レッスン室に行かないと・・・ガンヒョンは、何をするつもり?」
「う~ん、そうね。チェギョン達を待って、それから考えるわ」
ヘジンが着替えるのを待って、2人でリビングに向かうと、丁度シンとチェギョンが到着した所だった。
チェギョンは、アンナとフランクに抱きつき、再会を喜んでいる。
シンはというと、イン達に囲まれ、からかわれていた。
「ふん、お前ら、笑ってられるのは今だけだからな。チェギョンが立てた1日のスケジュール表だ」
ヘジンとガンヒョンもその輪の中に入って、そのスケジュール表を覗き込み、大いに笑った。
6:00 起床 & ランニング(体力向上)
7:00 朝食
8:00 各自夏休みの課題か受験勉強
12:00 昼食・休憩
13:00 自由時間か夏休みの課題(自主練習)
17:00 学園祭の準備(合同練習)
19:00 夕食
20:00 各自、自主練習
※ 一人のミスは、全員の連帯責任!完璧にできるまで、寝かせない!
皆で、楽しい思い出を作ろう♪
「げっ、マジかよ!?これ、遊ぶ時間ねぇぞ」
「早く振り付けをマスターしたら時間は取れるってさ。こういうのは、恥ずかしがってたら余計に恥ずかしいし、周りを白けさせる。完璧にやってこそウケるし、自分たちの達成感も半端ないんだってさ」
「・・・なぁ、チェギョンも美術の課題あるんだろ?しなくていいのか?」
「ギョン、何を期待してんだ?アイツ、相当暇を持て余してたみたいで、夏休みの課題は全部終わってる」
「げっ・・・」
「言っておくが、お前たちが合宿に参加したいって言いだしたんだからな。恨むなら、自分たちを恨め!」
「僕は、完全なとばっちりだと思うけど?」
「ユル・・・コイツらがいなかったら、俺とユル、2人でやらせるつもりだったと思うぞ。大勢の方が、マシだと思え!上皇さまがバックに付いているチェギョンに刃向えるものなら刃向ってみろよ。因みに伯父上もユルの晴れ姿が見られるって、手を叩いて喜んでおられたぞ」
「父さんまで・・・はぁ、頑張るよ」
「ジュンギュ、関係ないと思ってるだろ?チェギョンを甘く見るなよ。学祭の次の日が公演日だろ?踊って、公演の告知とチケットの販売をさせると言ってたぞ。間違いなく、チケットのノルマ課せられるぞ」
「「げっ・・・!!」」
「ガ、ガンヒョンは・・・?」
「私?私は、ヒスンとスニョンの3人で、あんた達の衣装を作るわ。そうそう、学校が始まっても完璧じゃなかったら、宮で合宿するつもりだって・・・」
「「「え~~~!!!」」」
(チェギョンって・・・殿下がやんちゃ姫とよく揶揄されるが、俺から見れば間違いなく爆弾娘だっつうの。ヘジンにこちら側の人間と言われたけど、できたら向こう側に行きたい気分だ。ハァ・・・)
イン達が夏休みの課題をするためにカメラを弄り始めると、シンがジュンギュに近づいてきた。
「驚いたか?」
「はぁ、かなり・・・」
「分かりにくいが、これがあいつなりの配慮だ」
「えっ!?配慮?」
「ああ。バレエの公演は、一部の愛好家やセレブが見るものだと思われてるよな?もっと幅広い層に関心を持ってもらえれば、バレエ人口も増え、この国のバレエ界もレベルが上がる筈だって。チェギョンが力説してた」
「チェギョンは、そんなことを・・・」
「俺の所為で、アイツ、辞めてしまうからな。その前に バレエ界に何らかの恩返しがしたいんだと思う。すまないが、協力してやってくれ」
「はい!」
「サンキュ」
(チェギョン・・・考えがグローバルすぎる。。。これって、世界を知っている彼女ならではの考えなんだろうな。俺、チェギョンに出会えて本当に良かった)