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Channel: ゆうちゃんの日記
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選択 第19話

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10時前、シンは、緊張した面持ちでチェギョンと正殿居間へと向かった。
正殿居間にはすでに陛下をはじめ、皇太后、皇后が集まっており、最長老たちが来るのを待っていた。
 
「太子、チェギョン、おはよう」
「「皇太后さま、おはようございます」」
「チェギョン、よく眠れましたか?」
「はい、お蔭さまで。それと勝手にお泊りしてしまってすいませんでした」
「チェギョン、こちらにいらっしゃい」
「はい、皇后さま」
 
チェギョンは皇后の前まで来ると、跪いて皇后の手を取った。
 
「先程、会議の事聞きました。色々とありがとう。それから、あなたの傍に居たかった。いたら、こうして慰めてあげられたのに・・・辛かったですね」
「皇后さま・・・」
「これからは、辛いことがあれば何でも私に言って甘えなさい」
「えっ!?」
「シンもですが、チェギョンあなたも大人にもっと甘えて良いのですよ」
 
『皇后さま、大変ありがたいお言葉ですが、あまりチェギョンを甘やかさないでいただきたい。チェギョン、こっちにおいで』
 
声がした方向に顔を向けると、そこにはシン・ハギュンが立っていた。
そして事情聴取を終えた最長老、コン内官、キム内官も同時に入ってきた。
チェギョンはハギュンの隣に立ち、事の成り行きを見守ることにした。
 
「皆さん、お待たせいたしました。ユン・ソギョン元大統領の口添えで青瓦台、経済界は神話、ソンヒョン、ソングループの協力の許で、今朝までに分かったことをご報告させていただきます。会議でチェギョンさまが指摘されたことは全て事実と判明し、証拠も押収できました」
「コン内官、真か?」
「はい、王族全員の自供も済んでいます」
「「「・・・・・」」」
「陛下、不祥事を起こした王族たちの処罰はどういたしましょう?」
「・・・私にもどうしたらいいものか、見当もつかぬ」
 
陛下のその言葉を聞いて、チェギョンの中で何かが切れた。
 
「はぁ、元凶はここなのね。陛下、お言葉を返すようですが、あなたには責任感がないのですか?そもそも王族の腐敗の原因はあなたではないのですか?」
「「「!!!」」」
「チェギョン、何て無礼な事を・・・すぐに謝りなさい!」
「最長老のお爺ちゃん・・・お爺ちゃんは陛下が目覚めることを期待して、今まで王族の悪行に目を瞑っていたんでしょうが。もっと早く陛下を見限るべきだったと思う」
「チェギョン・・・」
「パクお婆ちゃま、子どもの育て方を間違えたんじゃない?陛下、自分は兄上の身代わりで貧乏くじを引いたと思ってるよ。そんな心構えで皇帝に就いてもらっちゃあ、国民は迷惑なだけだよ」
「チェギョンや・・・それは真ですか?」
「目の前の本人に聞けば?」
「ヒョンや、真か?何とか申し開きをせい!!」
「皇后さま、私なりに皇帝の職務を忠実に全うしてきたつもりです」
「忠実?では、皇帝の職務って国民の幸せを願う事じゃないんですか?国民が宮に不信感を持っているのに忠実に全うしてきた?それって、自己満足なんじゃないですか?」
「それは・・・」
「質問を変えます。パクお婆ちゃまは、難病で苦しんでいる子供たちの為にティディベア基金を設立してます。また皇后さまも働く母親特にシングルマザーの地位向上に力を入れておられます。では陛下は、国民の何に力を入れておられるのですか?」
「・・・・・」
「何の目標もなく、ただ与えられた仕事を淡々とこなしているだけなら、悪いですが私でもできます」
「ああ・・・」 
「母上!!」
 
皇太后が崩れ落ちそうになり、後ろに控えていた最高尚宮とハン尚宮が慌てて支えた。
その時、ハギュンの携帯が鳴り、ハギュンは黙って廊下に出ていったが、すぐに戻ってきてチェギョンに耳打ちした。
 
「イ・ソンジェ!交通事故の揉み消しの被害者、ひき逃げで夫婦が亡くなってた」
「「「!!!」」」
「お爺ちゃんがもっと早く動いて粛清してたら、こんな悲劇は起こらなかった。人の命を粗末に扱う王族って本当に必要なわけ?一体、どう責任取るつもりよ!」
「・・・すまぬ」
「すまぬ?ゴメンで済んだら、警察は要らないっつうの!」
「・・・・・」
「陛下、いい加減な父の背を見て育つ子どもの事を考えたことはありますか?反面教師にでもなるつもりですか?私のような皇帝にはなるなって!?ふざけないで!!」
「チェギョン、少し落ち着け・・・」
「アジョシ、分かってる。。。陛下、この国は李王朝になるまでに色々な王朝がありました。素晴らしい王を排出したにも拘らず、全ての王朝が滅亡していった原因が分かりますか?侵略戦争の敗戦、貴族たちの腐敗・陰謀、色々ありますが、最終的には民を蔑ろにした事だと思います。まだお分かりになりませんか?」
「えっ!?」
「このままじゃ李王朝は終焉を迎えると言っているんです。私の先祖の言葉です。『王たる者、民が平穏に暮らせるよう心を砕くべし。民の声を聞き、民と共に笑い、民と共に苦しめ。さすれば、国は豊かになるだろう』・・・陛下、皇帝の器でないとお思いならば、殿下に譲位なさるか、李王朝の幕を下ろすべきです。その際は、パクお婆ちゃまは私が責任もって引き取らせていただきます。どうかご安心を」
「「「!!!」」」
「陛下、逃げても誰も責めませんよ。器じゃないのに居座られる方が迷惑ですから。ご決心されたなら、ご連絡ください。アジョシ、大邱に飛びます。ウビンオッパに連絡を」
「もう東宮玄関前で待機させてる。俺も後から追いかける。先に行け!」
「うん。皇后さま、お会いできて嬉しかったです。では・・・」
 
チェギョンは出ていったが、この重苦しい雰囲気を壊すことができないぐらい誰も口を開こうとしなかった。
その様子を見ていたハギュンは、フゥ~と溜め息を吐くのだった。
 
(チェギョン、バッサバッサと見事な切口で切り捨てたな。だがな、一体、誰がこの場を収めるんだ?)
 
 
 
 
 

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