シンは、御曹司たちの両親が宮に着くまで、4人にしてもらえるよう陛下に頼んだ。
御曹司たち以外が退室すると、シンは呆れたように落ち込む3人を見た。
「・・・何か言ったらどうだ?」
「シン、マジごめん」
「ゴメン、僕らの所為でシンの立場まで悪くなるとか、考えたことがなかった」
「今更、後悔したって仕方がないだろ。気づかなかった俺も悪かったんだ。でもヒョリンは、何でそんな嘘を吐いたんだ?イン、お前が連れて来た女だ。何とか言えよ」
「・・・シン、気づいてなかったのか?ヒョリンは、お前が好きなんだよ」
「は?ギョン、何て言った?無関心な俺でもヒョリンがインを足代わりに使ってることぐらいは知ってるぞ。だから二人は付き合ってると思ってたんだ」
「シン・・・今からでもヒョリンのことを真剣に考えてやってくれないか?家柄も王族じゃないが、そう悪くはない」
「イン、冗談も大概にしろよ。俺の写メ撮ったぐらいで、他人の携帯を踏み潰すような女を真剣に考えろってか!?あり得ないだろうが・・・お前、俺の立場、分かってる?」
「・・・だよな。スマン」
「なぁ、どう考えても分からないんだが、写メごときで他人の携帯を壊す理由は何だ?」
「あの時さぁ・・・『私の前で、よくもシンの写メを撮れたわね。図々しいにも程がある。身の程を教えてあげる』って言って、ヒョリン、僕らが止める間もなく携帯を取り上げて踏みつけたんだ」
「そ、そうだった。で、俺がヤリすぎだって言ったら、気分が悪いって舞踊科の教室に戻っちまって・・・俺とファンも周りの視線が痛くってさ、逃げるように映像科の教室に戻ったんだった」
「はぁ?で、インは弁償するつもりで金を差し出して、すぐにヒョリンの後を追った。違うか?」
「・・・ああ」
「はぁ、そんな女が俺の恋人だって思われてるのか?マジ、勘弁してくれ」
「「・・・ゴメン」」
「お前たちは分からなかったかもしれないが、皇太后さまも陛下も相当お怒りだった。そんな陛下がお前らの両親を呼び出したんだ。覚悟しておいた方が良い」
それを聞いたギョンはオロオロしだしたが、インとファンは黙って俯くだけだった。
その時、部屋の外からコン内官の声が聞こえ、招き入れると、恭しく報告書が手渡された。
「陛下にお持ちしましたところ、殿下にもお見せするようにとの事でございます」
何気なく報告書に目を通したシンは、徐々に顔つきが厳しくなってきた。
「急いで調べた分だけでございます。まだ調査は続行しておりますので、詳細は後日報告させていただきます」
「・・・分かった。下がってくれ」
「御意・・・」
コン内官が退室すると、シンはギロリとインを睨みつけた。
「イン・・・聞いていいか?お前、ヒョリンに貢いでるのか?」
「えっ、貢って・・・確かにお前の誕生日パーティーの時は、ドレスをプレゼントした。でも後は、バレエスタジオへの送迎と飯を奢る程度しかしてない。それが、どうかしたのか?」
「イン・・・今は21世紀で、家柄や身分を気にする時代じゃない。俺も今日、知ったんだが、皇太后さまも陛下も全く拘ってなかった。だから、ヒョリンが母子家庭だろうが気にはしない。でもな、乗馬クラブの入会金にや月会費、それにあのブランド品の数々、住み込みの家政婦の母親の給料だけで賄えるとは思えない。おそらく芸校の授業料で精一杯なんじゃないか?」
御曹司3人は、シンの話を信じられない思いで聞いた。
「シ、シン、今の話、本当なのか?」
「ああ。宮の情報部が調べたんだ。間違いない」
「ヒョリン、自分の事、社長令嬢だって・・・俺ら、完全に騙されてた」
「ギョン、社長令嬢だから人を見下していいなんて理屈は通らない。いい加減、その特権意識は失くせ。マジでチャングループが潰れるぞ」
「げっ・・・ご、ゴメン。なぁシン、俺たち、どうなるんだ?」
「さぁな・・・自分の事も分からないのにお前らの事が分かる訳ないだろうが・・・今頃、陛下とお前らの両親が話し合って、決めてるさ」
「・・・父さん達、僕らに失望しただろうな。。。」
ファンの呟きを最後に コン内官が呼びに来るまで物思いに耽ってしまい、誰も口を開こうとはしなかった。
御曹司3人が両親と一緒に帰っていった後、シンはすぐに正殿居間に呼び出された。
居間には皇太后と陛下が、難しい顔で膝を突き合わせて話していた。
「お呼びと伺い、参りました。陛下、皇太后さま、失望させてしまい申し訳ありませんでした」
「太子・・・十分、反省してるようだからもう何も言わん。イ・ガンヒョンの口から息子たちの行状を聞いた両親たちは、皆、絶句していたよ。クククッ、ガンヒョンは、しっかり両親にも説教しておったわ」
「最長老の孫が、同じ学校とは知りませんでした」
「彼女は一部の傲慢な王族たちと一緒のように見られるのが嫌で、周りには王族であることを隠しているらしい。流石、最長老の孫と言ったところか。本当に女子なのが勿体ない」
「いかにも・・・男なら、良い友人関係を結べたと思います」
「クククッ、ガンヒョンに同じことを言ったら、即否定されたよ。無関心を通り越して無気力なお前とは、ウマが合わないとな」
「///・・・・・」
「話を戻そうか。両親たちは、問題の女生徒とは絶対に接触させないと言っておった」
「当然です。僕は、顔も見たくありません。陛下、考えていたのですが、校内に翊衛士を入れる許可をください」
「ほぉ、あれだけ拒否していたのにか?」
「背に腹は代えられません。できれば、不敬罪で拘束したいぐらいです」
「では学校に連絡して、手配しておこう。あと両親たちは、学校に今までの事を謝罪しに行くと言っておった。本来なら私も行くべきなのだろうが、学校側が却って恐縮するだろう。だから代わりにコン内官に行ってもらう。後で謝っておくんだな。その結果、学校側がお前たちにペナルティーを課すようなら、お前も一緒に罰を受けなさい。これは、命令だ」
「はい・・・」
これで問題解決するかのようにホッとした陛下とシンに対して、皇太后は顔を顰めた。
「そなた達、肝心な問題を忘れておらぬか?シン・チェギョンさんじゃ。それに皇后をいつまでも軟禁できぬ。どうするつもりじゃ?」
「「あっ・・・!」」
「そもそもチェギョンさんが許嫁になった経緯は、シンが先帝に直訴したからじゃ。ヒョン、そうであろう?」
「えっ!?」
「間違いありません。まさか太子、チェギョンさんを忘れたのか?」
シンは、全くチェギョンの記憶がなく、皇太后と陛下の話が信じられなかった。
その時、いつも沈着冷静なキム内官が、かなり慌てた様子で居間に入ってきた。
「キム内官、どうした?シン家の借金問題で、何か進展はあったのか?」
「陛下・・・地上げ屋に裏から手を回していたのはユン家、皇后さまのご実家だと判明いたしました」
「何だって!!」
「「!!!」」