皇太后たちが席に座ると、開口一番皇太后が、3人に話しかけた。
「急に呼び出してすまぬ。先程、太子の妙な噂を聞いて、そなた達を呼び出した。太子は否定しておるが、実際はどうなのじゃ?太子には、秘密の恋人がおるのか?」
「えっ!?否定って・・・シン、お前、ヒョリンと付き合っているんじゃ・・・」
「無礼者!ここ宮で、殿下を呼び捨てにするとは、高校生にもなって公私の区別もつかぬのか!」
「ひぃ・・・も、申し訳ありません」
「最長老、構わぬ。太子、これがそなたの友人なのかえ?」
「申し訳ありません、皇太后さま。少し彼らと話をさせてください。イン、もう一度聞く。お前が、ヒョリンと付き合ってるんだよな?」
「シ、殿下・・・」
「イン、何で答えないんだ?ギョン、ファン、お前たちも俺がヒョリンと付き合っていると思ってたのか?」
「「・・・・・」」
「殿下、よろしいでしょうか?美術科のイ・ガンヒョンと言います。彼らは、殿下とミン・ヒョリンが付きあってると思っていますよ。この場合、思い込んでいると言った方が良いのかしら?そして生徒たちから、物凄く嫌われています」
「「「!!!」」」
「えっ!?ガンヒョンさん、どういう事だ?詳しく話してくれ」
「殿下が登校された際、以前は煩いほどだったのに、今では彼らとミン・ヒョリン以外出迎えがないことにお気づきですか?」
「言われてみれば・・・あまり気にしていなかった。それが、どうかしたのか?」
「はぁ、最低だわ」
「これ、ガンヒョン。御前でなんという事を。。。皇太后さま、陛下、躾がなっていない娘で申し訳ありません」
「最長老、気にするでない。私は、真相を知りたいだけじゃ。ガンヒョンさん、そなたから見た太子と友人たちは、どういう子だ?正直に話しておくれ」
「はい、皇太后さま。王族の娘として言わせていただくと、なぜ王立ではなくて芸校に入学したのか理解に苦しみます。王立なら皇族への配慮から醜聞は漏れることはありません。だから、これ程まで生徒たちの反感を買うことはなかったと思うからです」
「それは、太子が生徒たちから反感を買っておると申すのか?」
「申し訳ありませんが、そうです。そこにいる3人と殿下の恋人の横暴、傲慢さに生徒たちは皆、ウンザリしています。だから、殿下もこの友人たちと同類と見なされ、皆に敬遠されています」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。お前たち、どういう事だ?俺は、お前たちのそんな態度を見たことがないぞ?」
「シン・・・おい、お前。何を根拠にそんな出鱈目を言うんだ!?俺たちが、何をしたっていうんだ?」
「呆れた。。。本当に自覚がないの?丁度、良かったわ。貴方に渡してくれって頼まれてた物があったの。これ、返すわ」
ガンヒョンは、鞄の中からお金を入った封筒を取りだすとインの前に置いた。
「な、何の金だ?」
「全然秘密になっていない殿下の秘密の恋人が、癇癪を起こして壊した携帯の代金。あなたがあの女の代わりに払ったでしょ?」
「「「あっ・・・」」」
「携帯の持ち主は、完全なとばっちりだったわ。なのにあなた達は謝罪もなく、お金を投げ捨てて行ったわよね?親に買ってもらった携帯をそんな理由で壊れたとは言えないあの子は、一旦そのお金で携帯で買って、バイトを増やして必死でお金を貯めたのよ。その所為で、あの子が貧血で何度倒れたと思ってるのよ」
「ガンヒョンさん、それは真か?」
「はい、皇太后さま。私の友人の2人が宮フリークで、公務で遅刻してきた殿下をもう一人の友人の携帯で写メを撮ったところ、殿下の恋人が逆上して、携帯を踏みつけ壊しました。私だけじゃありません。多くの生徒がその現場を見ています。それ以来、殿下の人気は急降下しました」
「・・・イン、ギョン、ファン、事実なのか?」
「シン・・・すまない」
シンは、思わず頭を天井に向け、目を瞑った。
皇太子が国民を愚弄する態度を容認していると思われていることに呆然としながらも 何も知らなかったでは済まされない事をシンは感じていた。
「太子、ガンヒョンさんの話を聞いて、どう思う?」
「皇太后さま、陛下、何も知らなかったとはいえ、僕の責任です。申し訳ありませんでした。それから何度も言いますが、問題になっている女生徒とは何の関係もありません。そこにいるインから紹介されましたが、彼の恋人だと思っていたので、傍にいることを許していました。嘘は言いません」
「殿下、じゃあ・・・あの女は、自意識過剰の勘違い女ってことなの?」
「そうだ。俺には、学校の中でしか自由がない。その自由の中でもあの女と2人きりになったことはない。それは、こいつ等も知っている筈だ。イン、ギョン、ファン、もう一度聞く。なぜ俺があの女と付き合ってると勘違いしたんだ?ギョン、お前が話せ」
「あ、うん。ヒョリンから付き合ってるって聞いた」
「お前ら、俺に確認もせずにそんな嘘を信じたのか?」
「だ、だってよぉ・・・プライベートのシンはとても情熱的に愛してくれるのとか言われたらさぁ、いくら何でも皇太子にそんな事は聞けないって・・・」
「はぁ?!」
シンは、ミン・ヒョリンに対する怒りが沸々と湧き上がってきた。
「君たち、弁解するわけではないが、我々は分刻みのスケジュールを送っている。それは、太子も例外ではない。そして警備上の問題もあるが、一人で行動することはない。予定外で接触した人物は、私に報告される。だが、今まで太子が女生徒と密会しているといった報告は一度も受けたことがない」
「・・・俺らは騙されてたという事ですか?」
「可哀想だが、そうだろうね。だが、イ・ガンヒョンが教えてくれた君たちの傲慢な態度、これは許されるべきじゃない。先程、君たちのプロフィールの報告書を読んだ。大企業の御曹司にしては、余りにもお粗末すぎる。キム内官、彼らの両親を呼び出しなさい」
「はい、陛下」
ガックリと肩を落とす御曹司3人を見て、ガンヒョンは大きな溜め息を吐いた。
「ガンヒョン、彼らに何か言いたそうだね。この際だから、遠慮なく言いなさい」
「ありがとうございます、陛下。空気の読めないお頭が可哀想なチャン・ギョン。ミン・ヒョリンの下僕のカン・インはマゾ体質。3人の暴言を黙ってビデオに撮っているリュ・ファンは一番最悪。3人が継ぐ会社は、代が変われば絶対に潰れる。そしておバカな3人に担がれている殿下に対しては、不安視されてるわ。これが、芸校生のあなた達への評価と噂。少しは考えて、行動したら?」
「「「「///・・・・・///」」」」
「クククッ、流石、最長老の孫だけはある.。女性なのが実に惜しい。男性なら、間違いなく優秀な侍従に慣れただろうに・・・ガンヒョン、先程携帯を壊された女生徒の事だが、なぜ君に代金を託したのだ?」
「はい、彼女は唯一、私が最長老の孫だと知っていて、私から殿下を通して、お金を返してくれるように頼まれました。それが、一番波風が立たないだろうと・・・私もそれがベストだと思い、預かりました」
「そうか・・・して、その女生徒は、働きすぎて倒れたと申したな?太子、これも自分は関係ないと放置するつもりか?」
「いえ、直接、その女生徒に謝罪をしたいと思います。ガンヒョンさん、誰か教えてくれないか?」
「美術科のシン・チェギョンです」
「「!!!」」
「殿下、謝罪されるおつもりなら、今、チェギョンを呼び出しましょうか?」
「えっ・・・否、学校で謝罪するから連絡はいい」
「・・・分かりました。ですが、気安く話しかけるような真似は絶対にしないでください。周りの生徒たちに余計に反感を買いますよ」
「えっ!?どういう事だ?」
「無関心な殿下や自己中な御曹司たちはご存じないでしょうが、チェギョンは・・・本人は鈍感で気づいてませんが、芸校のアイドルなんです。明るくて気さくなもんだから、誰もあの子を悪く言う子はいません。だからチェギョンの携帯が壊されて、生徒全員が殿下の敵になったわけです」
「なっ・・・!!」
シンは、初めて知った事実に口を開けたまま唖然としてしまった。
そしてシンの隣で陛下は肩を震わせて笑っており、最長老は苦笑を漏らしていた。
(嘘だろ~~!?あのシン・チェギョンが、芸校のアイドル・・・何が友達を失うだ!?全員、アイツの味方じゃねぇか!!)