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Channel: ゆうちゃんの日記
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選択 第49話

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昼食の時間になり、ソウルからやってきた一同が一室に集まった。
当然ながら、全員に毒見する女性が付き、全部確認してからの食事となった。

『皆さま、どうぞお召し上がりください。あとコチュジャンとニンニクを別に用意しましたが、これはどちらに?』
「回して使います。それから皆さん、落ち着かないようですから、下がってください」
『はい、姫さま』

女性達が下がると、緊張が解けたのか、部屋の空気が変わった。

「チェギョン、これがここの生活なのか?俺は、落ち着かないぞ」
「クスクス、SPのオッパ達、連れて来なくて正解だったでしょ?まだ序の口だから・・・お風呂も背中流す人が付くから」
「げっ、マジか・・・」
「言っとくけど、そこまでだからね。添い寝や夜伽の女性は居ません。オッパ、絶対に手を出さないでよ」
「バッ、バカにするな!めちゃくちゃ年上じゃねぇか!」
「だってオッパは守備範囲が広いって、イジョンオッパが言ってたもん」
「あんの野郎~!チェギョン、俺はアイツほど節操なしじゃねぇからな。信じるな!!」
「クスクス、は~い。オッパ、コチュジャンとニンニク、お好きにどうぞ♪ソ先生、ヨンエさんも良かったら使ってください。おそらく味が素朴すぎて物足らないと思いますので・・・」
「「ありがとうございます」」

食事をしていると、障子が開き、オジジが入ってきた。

「食事中、失礼いたします。姫や、おかえり。皇后さま、ようこそいらっしゃいました。どうぞ我が家だと思い、お寛ぎ下さい」
「お言葉に甘えて、寛がさせていただきます。ありがとうございます」
「姫、儂に頼みたい事とは何じゃ?」
「オジジ、ハギュンアジョシの下で働いているヨンエさん。これから本格的にうちに仕えてくれるって。うちの行事・しきたりをレクチャーお願い」
「あい、分かった。姫、お前さんにはしてもらうことが多々あるから、そのつもりでいておくれ」
「え~~!今回は、やだ!皇后さまの傍でのんびりする」
「クククッ、皇后さまに食してもらう食材の調達じゃ。それなら良かろう?」
「うん、やる♪」
「皆さん、この館から見渡せる場所は、すべてシン宗家の所有地です。ご自由に散策してください。ただし、山には一人で入らないようにしてくださいよ。ではヨンエさんとやら、食事が済んだら儂の部屋まで来なさい」
「はい、かしこまりました」
「姫よ、のんびりするのは構わん。じゃが、やることだけはやるようにな。では皆さん、お食事中失礼しました」

オジジが出ていくと、シンが不満そうにチェギョンを見た。

「チェギョン、オジジと話をする時間を取ってくれないか?」
「シン君、ここは宮じゃないから。アジュマにオジジの居場所を聞けば、オジジの所に連れてってくれるよ。夜中だろうが、早朝だろうが、オジジはOKだから」
「夜中だろうがって・・・本当に良いのか?」
「うん。オジジは、一族及びその関係者の相談役なの。要するにカウンセラー、悩み何でも相談所なの。宮にもそういう人がいると、職員の士気も上がるし、風通しも良くなるんだけどね」
「あっ、だからあの時、ヒスンをここに連れて来たんだ」
「そう・・・やっぱ年の功には勝てないしね。あっ、私からのお願いです。ジテおじ様、ウビンオッパ、シン君、ここは普段男手がない。今回の滞在中、2時過ぎに毎日輸送ヘリが来ることになってる。荷物の搬送を手伝ってください」
「了解。何が来るんだ?」
「へへ、私が食べたかった物がどっさり?」
「はぁ?!こんなことなら、アイツら連れてくるべきだった・・・」
「クスクス、チェギョンさん、一宿一飯の恩義だ。それぐらいさせてもらうよ」
「おじ様、ありがとうございます。では、そろそろ到着するので行きましょうか。おば様、オンニ達と散歩でもしててください」

チェギョン達が部屋を出ていくと、皇后もソオンの案内で主治医と一緒に森林浴に出かけることにした。
邸を出るまでに出会ったアジュマ達が、涙を浮かべながら皇后を見つめたり、頭を下げる。
不思議に思ったソオンが一人のアジュマに話を聞きに行ったが、何事もなかったように戻ってきた。
大きな木の下にベンチが置いてあり、そこに座ると村が一望できる。
ソオンは皇后にベンチを勧めると、村の事を色々説明しだした。

「クスクス、皇后さま。これから大変ですよ。古のお姫さま体験ツアーが、古の王妃体験ツアーになりそうです」
「えっ!?」
「姫さまが、昼食前に一同を集めた際、皆に頭を下げられたようです。皇族の方もそうでしょうが、ここもシン宗家直系一族が頭を下げることはありません」
「まさか、私の為ですか?」
「はい。『私は、親の愛情を知らずに育った。その分、先代が愛情を持って育ててくれたから、自分を不幸だと思ったことはない。でも自分はどこか欠けているという思いが、心の片隅から消えてはくれない。そんな私を皇后さまは、初対面から娘のように可愛がってくれ、母親の無償の愛というものを身を持って教えてくれた。その皇后さまが、今、大変苦しんでおられる。どうか皇后さまを私の母だと思って仕えてほしい』と仰ったそうです」
「チェギョンが、そんな事を・・・」
「ここの者は皆、姫さまの身に降りかかった不幸を知っています。その姫さまが、皇后さまを母同然の人だと仰った。その事が、皆どれ程嬉しかった事か・・・全員が、皇后さまに感謝してお仕えすると思います」
「お忍びで一緒にお買い物やプールに行ったぐらいで、そんな・・・」
「何気ない事でしょうが、姫さまにとって貴重な出来事だったようです。それにブラジャーを選んでくださったり、初潮を我が子のように喜び、祝ってくださった。普段、自分の事をお話されない姫さまが、私に『生まれてきて良かったと初めて思った』と嬉しそうに言っていました。今日の事は、全国に散らばる一族に伝わると思います。もう我が物顔で、もてなされてください」
「えっ、それはちょっと・・・」
「クスクス、皇后さま、ファイティン!」

皇后は、本当にチェギョンが可愛くて、シンやヘミョン同様我が子のように接していただけなのに、チェギョンがここまで喜んでくれているとは思いもしなかった。
そしてチェギョンの寂しさを改めて知り、胸が痛かった。
が、邸に戻ると、そんな感傷はどこかに消えてしまうほど、箸を下にも置かぬ丁重な扱いに困惑してしまうのだった。

(ホント、これは古の王妃体験ツアーだわ・・・)

毎日、チェギョンが全国から取り寄せる滋養のある食材を使った料理を食し、チェギョンやアジュマ達が古典楽器で奏でる音色に癒され、シンとも今まで取れなかった親子の時間を持ち、充実した日々を過ごす皇后。
そんな皇后の傍には、チェギョンやシン達がいて、邸中が華やいでみえた。
シンは、時間があれば、カメラ片手に里の至る所に出向き、里に人たちと交流を持った。


ある夜、チェギョンが、数人の里の男たちと邸から姿を消した。

「ふふ、心配なさいますな。朝方までには、戻ってきます。いやぁ、明日の夜は楽しみにしていてくださいよ」

オジジが心配するシン達にそう言うと、自室へと下がっていった。

(これもシン宗家の儀式の一つなのか?そうなら、一言言ってから行けよなぁ~、バカチェギョン!)






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