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Channel: ゆうちゃんの日記
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選択 第52話

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シンは、チェギョンがいないこともあり、久しぶりのイジョンと話がしたくて男湯に入った。
背中を流す為、ソッパジ姿のアジュマ達が入ってくると、イジョンは男同士の話がしたいとアジュマ達に断った。

「ああ、久しぶりにのんびり湯に浸かれたよ。イジョン君、ありがとう」
「温泉は、やっぱ裸で入りたいですからね。シン、お前も脱いで裸で入れよ」
「クスッ、はい」

シンは素っ裸になると、腰のタオルを巻いて湯船に浸かった。

「シン、久しぶりにミンと風呂に入った感想は?」
「はぁ?お前、今までずっと皇后さまとチェギョンと風呂に入ってたのか?!」
「///仕方ないでしょ。身重の母上にチェギョンの世話はさせられないでしょうが・・・」
「えっ!?そうか・・・そうだな。チェギョン、まだ寝ちまうのか?」
「毎日じゃないですけどね。チェギョン、母上に背中洗ってもらって嬉しそうにしてましたよ」
「そっか・・・チェギョン、大はしゃぎしただろ?良かった。ホント良かった」
「イジョンヒョン?」
「俺も詳しい事は何も知らねぇ。ジフは聞いても言う奴じゃねぇしな。ただチェギョンの口から、母親の話は一切聞いたことがねぇのは確か。皇后さまは、チェギョンにとって理想の母親像なんじゃねぇの?」
「「・・・・・」」
「話変わるけど・・・俺さ、ちょっと気になることがあんだわ。悪いけど、ここに人呼んだ。付き合ってくれ」

ジテとシンは、何のことか分からなかったが、頷いた。
しばらくすると、一人の男が無言で風呂場に入ってきた。

「なぁ、あんた、よく似てるけどアイツじゃないよな?誰だ?」
「兄を知ってるんですね・・・」
「あの頃は、俺も派手に遊んでたしな。で、何でここにいんの?」
「・・・あなた方が逆上せてしまう。露天風呂の方に移動しませんか?」

男に促され、3人は露天風呂に入り直すと、男はイジョンに話しかけた。

「兄の事をどこまでご存知ですか?」
「ヤクの売人で、あちこちから追いかけられてたぐらいだな。一時期、ツレが血眼になって探してたし・・・」
「そうですか・・・兄をおびき出す為、拉致され半殺しの目に遭っていたところを助けられたのですが、その時、会ったのがイルシムのウビンさんと姫さまでした。ウビンに、兄は相当恨みを買っているから俺や両親の命の保証ができないと言われました。でも姫さまが保護してくださると、その代り世俗と離れた生活になるが構わないか?と聞かれ、両親と一緒にここでお世話になることを決め、ここでお世話になっています」
「そっか・・・でもさ、ここって何にもないだろ?満足してんの?」
「クスッ、平穏が一番ですよ。両親がいて、恐怖に晒されることなく足を伸ばして眠れる。これだけで十分幸せです」
「・・・良かったな。アンタもチェギョンに会えて・・・」
「はい。。。ここには、俺たちのような境遇の人たちが大勢いるんで、気兼ねすることもないですしね」
「「えっ!?」」
「・・・昔から、無実の罪を着せられそうになってる人を助けてたってチェギョンが言ってた。だから、ここの書庫には、ビックリするような人の文献があった」
「マジ?俺も読みてぇ~!!誰、誰?」
「ちょっ、イジョンヒョン、落ち着けよ!」
「クスクス、イジョンさん。ご心配されたようですが、俺らは感謝こそすれ姫さまを裏切るような真似は絶対にしません。どうかご安心ください。では、ごゆっくりお寛ぎ下さい」

男が出ていくと、イジョンはフッ~っと大きく息を吐いた。

(ヒョン、かなり緊張してたんだな・・・)

「扶余のお宝といい、ここに住む人たちといい、シン宗家、恐るべしだな・・・」
「それは、俺も思います。でも何でシン宗家は、今まで表に出てこなかったんでしょうね?」
「出てこなかったわけじゃねぇよ。実際、この国のTOPの奴らは知ってるしな。宮に遠慮してんじゃねぇの?ククッ」
「・・・そうかも」
「冗談だよ。爺さんの代はそうだったかもしんねぇけど、今は違うぜ。チェギョンを守るためだ」
「えっ!?」
「俺が言うのはアレだけど、アイツ莫大な資産貰っちまったんだよ。で、身が危ないってヤツ?」
「今も命を狙われてるんですか?」
「いや、そっちは片づいたと聞いてる。政略結婚のほうだ」
「政略結婚?まだ13なのに?」
「SCの姫さまは、全てがベールに包まれている謎の女性なんだわ。勿論、シン宗家との繋がりも極秘だしな。シン宗家やチェギョンにそのつもりがなくても欲に目が眩んだ輩なら、卑怯な手段に出てでもチェギョンをモノにしようと考えるさ。実際、見合いの申し込みもかなりあるって話だし、顔なんて晒したら想像しただけでも怖いぜ」
「・・・・・」
「まぁ、それもあと数年ってとこかな?2~3年したら、社交界に出る予定みたいだしな」
「えっ!?何で?」
「結婚相手を探す為だろ。最近、ハギュンさんがパーティーに参加しだしたしな。今から、チェギョンを任せられそうな男を物色してるんじゃねぇの?」
「チェギョンが、誰かが選んだ奴と結婚なんかする筈がない!」
「・・・聞いてねぇのか?代々シン宗家の当主は、一族が選んだ奴と結婚する決まりだそうだ。チェギョンの親父は、それを無視して自分の選んだ女と結婚したんだよ。だが、結果はご覧の通り。チェギョンだけが犠牲になった。だからチェギョンは、一族に逆らえない。可哀想だがな」
「「・・・・・」」
「そんなに驚くことか?お前だって、似たようなもんだろ!?俺の勘だが、チェギョンの相手、ジフが有力候補だ」
「えっ!?」
「逆上せそうだ。そろそろ上がろうぜ」

イジョンが風呂から出て行っても、シンはしばらく呆然としていた。

(だからチェギョンは、自分に対しては投げやりなのか?ジフヒョンか・・・チェギョンはそれで納得してるのか?俺ら、まだ13歳なのに・・・)



夕食が終わり、そのまま部屋に戻る気になれず、シンは庭に出た。
村を見下ろせる場所でボーっと立っていると、後ろから皇后に肩を叩かれた。

「あっ、母上でしたか?」
「チェギョンがいない所為?あなたが、物思いに耽るのは・・・ちょっと座って、話をしましょうか」
「母上・・・」
「入浴してからよね。お風呂で何があったの?」
「母上、俺も婚姻する相手はもう決まってるんですか?」
「俺も?お風呂で、チェギョンの事を何か聞いたの?」
「・・・シン宗家の当主は代々一族が決めた相手と婚姻するらしく、ハギュンさんがパーティーに出て物色し始めたと・・・」
「そう・・・それを聞いて、シンはどう思ったの?」
「ショックでした。13なのに全て周りに決められて・・・何とかしてやりたくても俺には何もできないし、もしかしたら俺もチェギョンと同じ運命なのかもとか考えていました」
「シン、貴方は大丈夫よ。王族からの変な横槍は、私が阻止します。だから、安心しなさい」
「母上・・・ありがとう」
「・・・シン、一つ聞いていいかしら?貴方はチェギョンの事をどう思ってる?仲の良い友達のままなのかしら?」
「えっ!?・・・う~ん、同志かな?俺の足らない部分を補ってもらって、俺は今は添い寝ぐらいしか役に立ってないけど、いつかは助け合えたらと思ってるけど・・・」
「そう・・・まだ貴方も13歳ですものね・・・でもこの機会を失ったら、私はもう言えないかもしれない。シン、心して聞いてちょうだい。シン、貴方には先帝がお決めになった許嫁がいるわ」
「えっ!?」
「いえ、正確には『いたわ』ね。先方から断られたの。お相手はチェギョンよ」
「!!!」
「皇后さまは、チェギョンを諦めておられないわ。私は・・・貴方にその気がないなら、残念だけど、私の出産を機にチェギョンとは縁を切りましょう。貴方には幸せになってほしいもの」
「・・・その気があるなら?」
「その気があるなら・・・出産後もチェギョンが宮に残れるように私が何とかします。その代り、婚姻に付いては貴方がチェギョンを説得すること。流石に何でも親がかりは見っともないですからね。どうかしら?」
「どうかしら?と言われても今まで考えたこともなかったので、どう答えれば良いのか・・・」
「そうよね・・・でもね、シンには申し訳ないけど、私には時間がないの」
「母上?」
「シン・・・私が病気をおして出産する話は聞いているのよね?」

シンは、皇后の目をじっと見つめながら頷いた。

「ガンなの・・・それもかなり進行してるわ」
「!!!」
「皇后として、愛する夫の妻として、どうすべきか悩んだわ。堕胎して治療をしても助かる確率は50%。なら、産もうと思った。きっとこの子は、シンを理解し支えてくれる筈。そう信じて産もうと私は・・・シン、泣かないで」

皇后に頬を撫でられ、初めてシンは自分が涙を流していることに気づいた。

「ショックよね。でも何も知らずに、私に万が一の事があった方が貴方は辛い想いをすると思うから。シン、私は諦めたわけじゃないわよ。この子を無事出産し、貴方が幸せな婚姻をするのを見るのが、私の今の目標よ」
「母上・・・」
「でもね、やはり万が一の事も考えてしまう。この子にはシン、貴方のような寂しい想いはさせたくないの。母親がいないだけでも辛い事なのに女官任せなんかにはしたくないわ。春に王族の令嬢と顔合わせをしたのもこの子のベビーシッターとして相応しいかを見たかったの。結果は、悲惨だったけどね。でもチェギョンに出会った。シン、貴方が許してくれるなら、チェギョンにこの子を託したいと思ってる。チェギョンなら、あなた達二人が嫌だと思う事は、絶対に阻止してくれる。きっといい子に育ててくれると信じてるの。シン、13歳の貴方に酷な選択をさせることは十分承知しています。でも良く考えてほしい。。。。先に部屋に戻るわね」

13歳のシンには、皇后の話はそう簡単に理解できるものでも 消化できるものでもなかった。

(考えろって・・・こんな話を聞かされて、何を考えろって言うんだ!?チェギョン、お前は知ってて、俺に言わなかったのか?)




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