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Channel: ゆうちゃんの日記
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選択 第53話

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皇后と話をして以来、シンは物思いに耽るようになり、口数が極端に少なくなった。
周りの者は心配したが、皇后が放っておくようにと言ったので、見守るしかなかった。
一人シンが庭で佇んでいると、オジジが隣にやって来た。

「何か、面白い物が見えますかな?」
「オジジ・・・チェギョンはいつ戻ってくるのですか?」
「・・・殿下、顔の相がよくないですな。チェギョンに会ってどうなさるおつもりです?」
「チェギョンに聞きたいことがあります。チェギョンなら皇后さまの事を知っていた筈。なのになぜ俺に言わなかったのか、理由が聞きたい」
「理由なんぞ儂でも分かりますぞ。皇后さま本人が隠してるのに第三者のチェギョンが言う訳にはいきますまい。それも皇后さまの命が危ないなど、口が裂けても言えるわけがなかろうの」
「あっ・・・オジジも知ってたのか?」
「姫ほどの力はないが、儂もシン宗家直系の出だからの。。。。少し前まで、皇后さまと殿下には溝が御有りだった。そんな時に聞かれても殿下はきっと『関係ない』とか『バカな選択をして』などと思われたと思うぞ。下手をすると、『厄介ごとが増えるな』と思われたかもしれん」
「・・・(確かにそうかもしれない)」
「チェギョンの事じゃ、きっとお二人の溝を埋めるようなメッセージを伝えていたと思うぞ。気づきませんでしたかな?」

シンは、チェギョンと出会ってからの事を思いだしてみると、確かに何度も思い当たることがあった。

「言われてました・・・」
「だろうの。。。皇后さまから、何を言われたかは想像がつきます。殿下、今から姫に拘る必要はない。殿下に相応しい素晴らしい女性がきっと現れる」
「オジジ?」
「さぁ、皇后さまの所に行きましょう。。。誰か控えておるか?ミン・ソオンを皇后さまの部屋まで連れておいで」
『かしこまりました、お館さま』

何処からともなく声が聞こえ、人の気配が消えた。

「ふふ・・・陰から守ってくれる者です。里では必要ないんじゃがの。あやつらは、慎重すぎてな。気を悪くせんでくだされ」
「・・・宮にいた頃も付いていたのですか?」
「ふふ、居りましたな。先々帝はお気づきではなかったが、先帝は気づいておられた気がします。因みにハギュンは拒否して、付けておらなんだ。それがス殿下の悲劇を防げなんだ原因の一端じゃと、あやつは後悔しとりますわい。あんな女子(おなご)に惹かれてしもうた本人の責任じゃのにのぉ・・・」
「・・・・・」

シンは、オジジの言葉に思わず納得してしまった。
シンと皇后が寝泊まりしているチェギョンの部屋の前まで来ると、ソオンが立っていた。

「待たせたかの?皇后さまに面会する。付いておいで」
「はい、お館様」

シンは、オジジが何のためにここに来たのか分からず、後ろに付いて部屋に入った。

「皇后さま、失礼しますよ。お体の方は、いかがですかな?」
「お蔭さまで、随分良くなりました。ホント、何とお礼を申し上げていいのか、言葉が見つかりません」
「それは、儂らの方です。皇后さまには、感謝してもしきれない想いでおります」
「チェギョンの事ですか?」
「いかにも。娘のように可愛がっていただき、また命の尊さを身を持って教えてくださった。。。ソオン、お前さんが皇后さまに頼んだのじゃろう?一か八かの賭けじゃったが、裏目に出てしもうたようじゃ」
「「「えっ!?」」」
「姫からの伝言じゃ。自分はもう戻らぬが、皇后さまがご出産されるまで誠心誠意お仕えせよ・・・じゃ」
「「!!!」」
「あ、あのお館様、裏目とはどういう事でしょうか?」
「・・・エコー写真や幸せそうな皇后さまのお顔を見て、自分は皇后さまの傍にいてはいけないと言うておった。心の傷が、開いてしもうたようじゃな」
「・・・申し訳ありません。命の尊さを知れば、ご自分を大事にしてくださるかと・・・考えが浅はかでした」
「一族でも一部の者にしか、姫の父親の勘当の理由を知らせておらぬからの。仕方あるまいと思っておる。姫が何度も命を狙われたのは知っておるじゃろ?」
「はい。今もその警戒を続けておられることも知っています」
「一番最初の未遂事件は、姫が話し始めてすぐの3歳の時。寝ている時に首を絞められた。犯人は実母じゃ」
「「「!!!」」」
「姫がどこまで覚えておるのか、正直分からぬ。じゃが、相当傷が深いとみえる。『悪魔の子が、天国に行くにはどうすべきだ?』。姫からよく聞こえる心の声じゃよ」

オジジの話に チェギョンの心の叫びが聞こえたような気がした。
皇后とソオンは、ただチェギョンを想い、涙を流している。

「ソオン。姫が、皇后さまに幸せをいただいた恩を返す。体調次第だが、皇后さまが臨月に入るまでここで静養していただけ。ソウルに戻れば、皇后さまは王立に入院していただく。こちらにいる主治医とお前さんを中心に医療チームを組む。メンバーは、ハギュンに揃えるよう指示を出した。万全の態勢で皇后さまのご出産に臨むんだ」
「はい、お館様・・・」
「では皇后さま、心穏やかにお過ごしくださいませ。殿下、同情からは何も生まれん。姫には余計な感情で無用じゃ。チェギョンからの伝言です。『ありがとう。楽しかった』。では・・・」

オジジが部屋をでると、ソオンも皇后とシンに一礼をして、部屋を出て行った。
残された皇后とシンは、其々がチェギョンの笑った顔を思い出していた。

「・・・シン、私はチェギョンを救いたい。私の決断はシンを困らせるかもしれないけど、どうか了承してちょうだい」
「母上・・・チェギョンをベビーシッターとして任命されるつもりですね?」
「ええ。何としてでもこの子を産み、私の生死に関わらず、チェギョンにこの子を任せます。シン、チェギョンとこの子を守ってちょうだい」
「母上・・・お約束します。必ず、2人を守れるよう努力します」
「・・・シン、私が昨日話した話は忘れてくれていいわ。チェギョンを家族の一員として迎えてあげて」
「はい・・・母上」

シンは皇后の想いを汲み取り頷いたが、頭の中は昨日から何も整理できていなかった。
そして今のチェギョンの悲話と皇后の決断・・・もうパニックになりそうだった。

(俺、落ち着け!とりあえず、母上を安心させることが第一だ。チェギョンが宮で過ごすことは賛成だから、問題ない。問題なのは、婚姻か・・・大体、シン宗家当主のチェギョンが誰かに嫁ぐことは可能なのか?)













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