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Channel: ゆうちゃんの日記
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改訂版 開眼 第1話

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シンは、陛下に呼ばれ、コン内官と共に正殿居間へと向かった。
居間には、すでに陛下と皇后が座っており、陛下は珍しく笑顔を見せていた。
 
「太子、今から客が来る。失礼が無いように・・・」
「・・・はい」
 
シンは、コン内官の顔を見たが、コン内官も心当たりがないのか首を横に振っただけだった。
 
(客?陛下が嬉しそうにする客って・・・誰だ?)
 
しばらくすると、一人の男が入ってきた。
 
「陛下、皇后さま、ご無沙汰しております。お元気でいらっしゃいましたか?」
「チェウォン、お前らしくないぞ。普通に話せ」
「・・・なら、気を遣え!人払いしろよ」
「クククッ、分かった」
 
シンは、目の前の男性の言動に驚き、思わず凝視してしまった。
陛下が右手を挙げると、女官が全員出て行き、最後にコン内官と陛下付きのキム内官も部屋を出て行こうとした。
 
「アジョシ、久しぶり。アジョシは悪いけど残って。ヒョン、もう一人はお前の右腕か?」
「そうだ」
「じゃあ、あんたも残ってて」
「コン内官、キム内官、二人はここに残れ」
「「御意」」
「チェウォン、これでいいか?」
「・・・ヒョン、単刀直入に聞く。急な呼び出し、何の用だ?」
「帰国したそうだな」
「俺らは、犯罪者か!?監視を付けるんじゃねぇ!まさか親父たちの戯言の話じゃないだろうな?」
「その、まさかだ。突然、婚姻しろと言われても 太子もお前の娘も戸惑うだろう。だから、会わせたい」
「!!!」
 
シンは、突然の婚姻話に驚き、固まってしまった。
 
「はぁ?断る!今の時代、許嫁もクソもないだろが・・・見て見ろよ。お前の息子もビックリしてるぞ」
「先帝が、遺言を残した。皇族として、守らねばならない」
「断固、断る!死んだ祖父さんの戯言より、ヒョン、息子の幸せを考えてやれよ!好きな女と結婚させてやれって・・・大体、親父たちの所為で、娘はずっと留学させられててやっと帰国したんだ。当分、嫁には出したくねぇ。おい、坊主。好きな女はいないのか?」
「えっ!?い、いません」
 
シンは急に話を振られ、どもってしまった。
 
「ハァ・・・最悪だな・・・」
「チェウォン、アジョシの孫で、お前の娘だ。絶対に太子を変えてくれるはずだ。頼む。会わせてやってほしい」
「何で3代続けて、宮の面倒を見なきゃならないんだ!?ヒョン、俺が辞める時、俺は何て言った?どんなに忙しくても家族の時間を大切にしろって言ったよな?なぜ、しなかった?俺の努力を無にしやがって・・・」
「チェウォン?」
「昔のミンさんは、こんな貼り付けたような笑顔じゃなかった。とても輝いてたよ。坊主もだ。寂しそうな眼はしていたが、素直ないい子だったよ。今はどうだ?全てを諦めたような人形みたいな目をしてるぜ?きっと過去のことも記憶が曖昧で、何も覚えていないんじゃないか?息子をここまで追い詰めたのは、間違いなく父親であるお前だ。そんな舅がいるところに可愛い娘をやれるか!息子の嫁取りをする前に まずは家族の絆を繋ぐ方が先決だと思うのは俺だけか?」
「チェウォン・・・」
 
シンは、チェウォンの言葉に知らぬうちに頬に涙が伝っていた。見れば、皇后もハンカチで涙を押さえている。
 
(このアジョシは、昔の俺を知ってる?一体、誰だ?)
 
「ヒョン・・・今の王族会は腐ってる。まさか気づいてないんじゃないだろうな?」
「「えっ!?」」
「マジかよ!?アジョシとキム内官だっけ?二人は、薄々だが分かってんだろ?」
「チェウォン君・・・」
「チェウォン、どういうことだ?詳しく話してくれ」
「娘を皇太子妃にして実権を握ろうとする動きとス兄貴の息子を皇太子に擁立しようとする動きがある。後者には、ソ・ファヨンの影がちらついてる」
「「「!!!」」」
「ス兄貴は良いヤツだったが、女を見る目だけはなかったからな。クククッ・・・アジョシ、ファヨンの動向を見張った方が良いよ。坊主が帰国準備を始めたらしい」
「チェウォン君、すぐに指示を出すことにしよう。色々とすまない」
「ヒョン、何、驚いてるんだ?これでもあの親父の息子だからな。この位の情報は、簡単に入る。何時まで俺に尻拭いをさせるつもりだ?いい加減、しっかりしろよ!それで少しでも風通しを良くして、息子に譲ってやれ!」
「すまん・・・ヒョン、やっぱり諦めきれない。お前が無理なら、娘を太子にくれ」
「断る!それにあのオババは、まだいるんだろ?オババがいる限り、あり得ないね。娘が苛められる」
「それは・・・お前が私に悪さばかり教えるからだ。自業自得だな」
「ふん、悪かったな。おい、坊主。自分の人生を親に勝手に決められていいのか?このままじゃ、後悔と恨みだけで人生終るぜ。自分の未来は、自分で切り開けよ」
「・・・はい」
「アジョシ、これ、渡しておく。この情報をどう使おうが、俺は関知しない。好きにして。ヒョン、おば様は皇太后殿か?折角来たんだから、挨拶だけして帰るわ。じゃあな」
 
シンは、初対面だというのにチェウォンの温かさと聡明さに魅かれ、これで会えなくなるのは残念だと思った。
チェウォンが席を立とうと、腰を浮かせたとき、シンは意を決して声を掛けた。
 
「ア、アジョシ、僕にお嬢さんを紹介してくれませんか?」
「「「!!!」」」
「お嬢さんというより、アジョシに興味を持ちました。もっとあなたと話がしたい」
「坊主・・・悪いが、俺にはそんな趣味はない。一つ忠告をしてやろう。自分で選んだのか、宮が選んだのかは知らんが、あの学友はいただけない。友人だと思うなら、間違いは正してやれ。これ以上、自分の評判を落とすな」
「えっ!?」
「それとさっき好きな女はいないと言ったから噂なんだろうが、【秘密の恋人】と呼ばれてる女がいるだろ?違うなら、否定しろ。皇太子殿下は、女を見る目がないと噂されてるらしいぞ。クククッ・・・」
「「「「!!!」」」
「坊主・・・お前も親父に似て、周りに無関心なのか?最低な親子だな。益々、娘はやれんな。ミンさんの苦労が目に浮かぶ。ミンさん、良かったら気晴らしにうちに遊びにきてください。スンレが喜びます。では・・・」
「チェウォン!!」
 
陛下の呼び声にも振り向きもせず、チェウォンは颯爽と正殿居間を出て行ってしまった。
 
「クスクス、チェウォンさんは、本当にお変わりありませんでしたね。相変わらず、口が悪く、温かい・・・」
「・・・チェウォンだからな」
「陛下、あの方はどういった方なのですか?」
「太子もチェウォンが気にかかるか?皇帝にあんな口をきくのはアイツぐらいだからな・・・チェウォンは、先帝の親友チェヨンアジョシの息子で、私の悪友だ。兄上が亡くなった時、私を補佐するために一時期私付きの内官をしてくれていた」
「あっ!・・・では、あの方が、伝説のシン内官さま」
「キム内官、そうだ。太子も昔会っているというか、世話になっている。皇太孫にあがった頃、しばらくアイツの家で過ごしている」
「恐れながら、申し上げます。殿下が入宮された当初、チェヨン氏が度々お嬢さまを連れて参内されており、殿下はお嬢さまといつもお遊びになられておられました。チェウォン君は、お嬢さまの話を聞いて、先帝に直談判をし、問題が解決するまで、家で保護してくださったのです」
「コン内官、保護とは?」
「・・・当時、皇太孫宮の女官たちは、すべてユルさまにお仕えしていた者たちで、殿下を虐待していたようでした」
「「「!!!」」」
「チェウォン君は、当時の最高尚宮を馘にすると、今の最高尚宮と共に女官の改革を進め、ファヨンさまの息のかかった女官たちはすべて排除して、殿下の安全を確保してくれたのです」
「・・・なぜ、報告しなかった?」
「女官の統括は、皇后さまの役目。知ったとしても心を痛めるだけで、何もできない。なら、皇太子・皇太子妃の教育で余裕のないお二人に知らせる必要はないと、チェウォン君と先帝が判断されました」
「「・・・・・」」
「チェウォン君が宮内の不穏分子を一掃した時、先帝がお嬢さまを殿下の許嫁にされました。このまま宮に残れば、未来の府院宮として権力を振るっていると誤解されるかもしれないと、チェウォン君は陛下の行く末を心配しながらも退官したのです。チェヨン氏も同じ理由から財界の表舞台から身を引かれたと聞いております」
「チェウォン・・・コン内官、チェウォンの娘には会った事があるか?私たちは、一度もないんだ」
「ございます。明るくて、可愛いお嬢さまでございました。殿下はお嬢さまとずっと一緒にいる方法はないのかと先帝に相談され、許嫁の約束がなされたのでございます」
「えっ!?僕がですか?」
「はい」
 
シンが必死に思い出そうと頭を働かせている間に、コン内官はチェウォンが渡した封筒を陛下に手渡した。
封筒の中身を見た陛下の顔が、徐々に険しくなってくる。
 
「キム内官、今すぐ皇太后さまの許に行って、チェウォンを連れて来てくれ!帰ったのなら、翊衛士を動員してもいい。すぐに連れ戻すのだ」
「は、はい!!」
 
キム内官が慌てて居間を出て行くと、陛下は頭をかきむしって、天井を仰いだ。
 
「皇后、太子、私は今まで何をしていたんだろうな・・・本当にすまない」
「「陛下・・・」」
 
(一体、あの書類には何が書かれてあったんだ?)
 
 
 
 

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