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Channel: ゆうちゃんの日記
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改訂版 開眼 第2話

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しばらくすると、キム内官がチェウォンと皇太后を伴って、居間に戻ってきた。
 
「ヒョン、何の用だ?もう話は済んだ筈だろ?」
「チェウォン、この情報について、詳しく話を聞きたい」
「・・・話すことは何もない。その報告書が全てだ。このままでは、宮は国民のお荷物でしかない。存続させたいなら、王族会を立て直すか潰せ」
「「「!!!」」」
「チェウォンや、一体、何の話なんです?」
「おばさま、何でもありません。ヒョンの不甲斐無さに少し苦言を呈しただけです。ただス兄貴の追尊に関しては、慎重になさってください。賢帝と言われたおじ様が、なぜ無情にもファヨン妃とユルさまを国外追放にしたか・・・そのお心を汲んでいただけたらと思います」
「・・・分かりました。肝に銘じましょう」
 
チェウォンと皇太后の話が一段落するのを待って、ミンが口を開いた。
 
「チェウォンさん、お聞きしてもいいでしょうか?先程の話で、腑に落ちないことが多々ありました。なぜ太子の身辺を詳しくご存じなのですか?」
「ミンさん、宮の情報はいい加減で遅いからですよ。娘が帰国したのはもう半年も前で、今、殿下と同じ高校に通っています」
「「えっ!?」」
「娘は興味がないのか何も言いませんが、娘と一緒に帰国した子が色々と教えてくれるんですよ。そうだ、おば様、ユルさまの許嫁も白紙になさった方が良い。宮の事を思えばこの婚姻は危険だし、本人同士も望んではいません。良い友人みたいですよ」
「チェウォン、なぜそこまで知っておるのだ?」
「クスクス、ユルさまと娘たちは、留学先でクラスメートだったんですよ。だから、ユルさまの情報は、娘を通して筒抜けなんです」
「「「!!!」」」
「昔は我が儘放題だったユルさまですが、今は明るい好青年になったようですよ。娘曰く、娘の親友である許嫁がユルさまの性根を叩き直したそうです。そういう意味では、おじ様の目は確かだったのでしょうね」
「チェウォン、父上の目が確かだと思うなら、太子に・・・」
「ヒョン!!その前にすることがあると言っただろ。なぜ10歳にも満たない娘を海外に出さねばならなかったか、よく考えてくれ」
「チェウォン?」
「・・・娘を皇太子妃にして宮を牛耳ろうとしている王族にとって、うちの娘は目障りでしかない。親父が表舞台から姿を消した後は、危なくて学校にも通わすことができなかったんだ」
「「「!!!」」」
「最初はスイスの全寮制のミッションスクールに入れ、時期を待って渡英させた。イギリスでユルさまの傍にいる限り、悪さはできないだろ?すぐに宮に報告が行くからな。俺は、10年かけて王族全員を調べ上げ、万全の体制が整ったから娘を帰国させたんだ。ヒョン、どうする?お前が動かないなら、俺が王族会を潰すぞ」
「ま、待ってくれ。この件は、私に任せてくれ。絶対にお前の期待を裏切るようなことはしない」
「・・・じゃあ、お手並み拝見という事で・・・もし納得できない解決だったら、俺は国を捨てるからな。ヒョン、もう用はないだろ?いい加減、帰らせてくれよ」
「チェウォン、最後に一つ聞かせてくれ。まさか娘とユルは、付き合ってるのか?だから、太子には会わせられないと言ってるのか?」
「ハァ?そんなこと、ある訳ないだろ!娘にとってユルさまは、親友のBFでクラスメートだ。それ以上でもそれ以下でもない」
「なら、なぜ・・・」
「さっき言ったろ?!ヘミョンちゃんが、お前の坊主みたいにただ流されて生きているだけの男と結婚したいって言ったらどうする?もろ手を上げて賛成できるのか?」
「「・・・・・」」
「そういう事だ。。。坊主、悪く思うなよ。地に足がついてない男は認めるわけにはいかないんだ」
 
シンは、チェウォンに正論を並べられ、返す言葉がなかった。
 
「チェウォンさん、お願いがあります。息子に外の世界を教えてもらえませんか?」
「は?ミ、ミンさん?」
「シンは、宮の中の世界しか知りません。目標を持ちたくても持てないのでしょう。地に足がついていないと言うなら、地に足がつくようあなたが教えてやってくれませんか?陛下に教えたようにです」
「はぁ・・・坊主、外の世界に興味があるか?平たく言えば、国民の暮らしや娯楽だな」
「教えていただけるのですか?」
「・・・おば様、殿下をうちでしばらく預かっていいですか?どうせ、もうすぐ春休みだ。殿下なら課題を出せば、進級はできるんでしょ?」
「ほほほ・・・コン内官、学校に連絡して手配しておやり」
「かしこまりました、皇太后さま」
「チェウォン、これで良いですか?」
「あと、未成年を如何わしい店に連れていくようなバカはしませんから、おば様の後ろで睨んでいる婆さんを説得していただけると有難いです」
「おほほほ・・・久しぶりに会ったというのに 相変わらずチョンは苦手のようね。最高尚宮、チェウォンを信じてあげましょう」
「・・・坊ちゃん、我が天を悪の道に導かないように頼みます」
「チェ、マジで信用してないよな。おい、坊主、東宮殿に着替えを取りに行くぞ」
「は、はい」
「ヒョン、心配しなくても、うちにはペク・チュンハ元翊衛士がいる。ス兄貴が可愛がっていたヤツだ。ファヨン妃に利用されそうになっていたから、俺が引き抜いた。ああ、最長老は白で、俺の協力者だ。今後の事は、最長老と話し合うんだな。じゃあな」
 
チェウォンがシンを従えて正殿居間を出て行くと、陛下はすぐに最長老と宮内警察長官を呼び出すようキム内官に命じた。
 
「ヒョン、一体何が・・・」
「チェウォンが、王族たちの不正している証拠を持ってきました。アイツが納得する解決をしなければ、宮どころか国自体が揺らいでしまう。早急に対処しようと思います。それから、ミン。長い間、寂しい想いをさせてすまなかった。これからは、できるだけ夫婦の時間を持とう」
「あなた・・・ありがとうございます」
「母上、お先に失礼します」
 
陛下が、キム内官とコン内官を引き連れて部屋を出て行くと、皇后と皇太后、そして最高尚宮だけが残った。
 
「ミンや、チェウォンにシンを預けるなんてよく考えましたね」
「ふふふ、はい。陛下は、今でもチェウォンさんと遊んだ日々が懐かしいとよく零されます。あの日がなかったら、きっと国民の気持ちを分かろうと思わなかったとも・・・そんな想いをシンにも味わってもらいたい。そうすれば、変わってくれるのではないかと・・・それに一度、チェウォンさんのお嬢さんにも会ってみたいですし・・・」
「チェギョン?昔は、いつもニコニコしている天使のような子でした。口数が減り、表情が乏しくなったシンがチェギョンの前では笑うのです。そうでしたね、最高尚宮?」
「はい、皇太后さま。あの悪ガキのお子さまとは思えないほど、可愛いお嬢さんでした」
「クスクス、最高尚宮、そんなにチェウォンさんはヤンチャだったのですか?」
「社会勉強と言っては、毎日のように外に連れ出して、当時の陛下付きの翊衛士は大変でした。ですが、皇帝に就かれた今、その経験が生かされているような気がします。きっと殿下もいい影響を受けられるのではないでしょうか?」
「ええ、そうであってほしいものです」
 
 
皇后、皇太后、最高尚宮が、しみじみと昔話に花を咲かせている一方で、東宮殿ではチェウォンが溜め息を吐いていた。
 
「坊主、この服はお前の趣味なのか?」
「えっ!?」
「公務の際のスーツは仕方ないとしよう。だが、この私服は何だ?ダサすぎるだろうが・・・一体、誰が選んでるんだ?」
「さぁ・・・気づけば置いてあるというか・・・」
「ハァ・・・お前ね、幼稚園児じゃあるまいし、私服ぐらい自分で選べ!」
 
チェウォンは、おもむろに携帯を取り出すと、どこかに電話を掛けだした。
 
「忙しいのにすまない。至急、男物の服を揃えたい。服から靴、コートに至るまで全てだ。お宅の息子が着るような服を適当に見繕って持ってきてくれない?悪いけど、社長のあんたが責任もって持ってきてほしい。今から2時間後でどう?頼んだよ」
 
シンは、どこに掛けたのかは分からないが、社長を電話一本で動かせることができるチェウォンを信じられない目で見た。
 
「何だ?」
「い、いえ・・・」
「ああ、言っておくけど、これは俺の裏の顔だから。本来の俺は、専業主夫だ。家に戻ったら、今の俺は忘れてくれ。良いな?」
 
(陛下に毒舌を吐くこの人が、専業主夫だって~!?ダメだ、全く理解できない。一体、何者なんだ?それより俺は、この先どうなるんだ?)
 
 
 
 

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