Quantcast
Channel: ゆうちゃんの日記
Viewing all articles
Browse latest Browse all 229

改訂版 開眼 第4話

$
0
0
最初に入った応接間に足を踏み入れると、すでに夥しい量の服や小物が陳列しており、一人の男性が緊張した面持ちで鎮座していた。
 
「急に用を言いつけて申し訳なかったね」
「いいえ、とんでもございません」
「紹介しよう。倅のチェジュンと遠縁の子だ。おい、好きな服を選びなさい。特に坊主は、10着ぐらい選べ」
「親父、俺もいいのか?」
「進学祝いだ。その代り、入学したら小遣いはなし!自分でバイトして稼げ」
「ゲロゲロ・・・やっぱ親父は鬼だな」
「俺もそうだったんだ。これが、シン家の教育方針だ。悔しかったら、お前も自分の倅にやれ」
 
チェウォンの言葉に カン社長は驚いているようだった。
 
「カン社長、とりあえず店ごとに納品伝票をきってくれる?それを見て、ここにいる秘書が支払いに行くから」
「えっ!?」
「・・・カン社長、何か履き違えていないか?タグを見る限り、ショッピングモールのテナントから拝借してきたんだろ?うちは、各ショップからテナント料を貰って、場所を提供しているだけだ。うちからしたら、テナントに入っているショップはお客様なんだよ。オーナーだからって、タダでいただくわけにはいかない。この分じゃ、どうせバーター伝票も切って来てないんだろう?」
「申し訳ありません。すぐに納品伝票を用意します」
「気にするな・・・あんたに任せた俺の人選ミスだ。ウソン、返却と支払い、その他の手続き、すべて任せる」
「はい。早急に手続きに入ります」
 
ガックリと肩を落とすカン社長にチェウォンは憐みの眼差しを向けた。
 
「カン社長、お宅とは親父の代からの付き合いだ。俺が知っている親父さんは、実直で真面目一筋の人だった。あんたも根は良い人だと思ってる。だが、このままでは、あんた会社潰すよ。俺、任せておけないんだけど?」
「申し訳ありません」
「悪いけど、カングループは規模を縮小させてもらう」
「・・・はい」
「一つ聞いていいか?余所様の教育方針に口出す権利はないけど、息子の小遣いはいくらだ?洋服代は、別途支給してるとか?」
「えっ!?」
「お宅が持ってきた服の値段、見た?かなり高額だよ?被服費に毎晩のように遊び歩いている飲食代、一体いくら渡してるのか、前から不思議だったんだよね。お宅の息子、ひと月で間違いなく一般サラリーマンの月給数か月分を使ってるよね?」
「・・・・・」
「息子が改心しない限り、俺、お宅と手を切るよ。それから、息子がテナントから無断拝借していた場合、訴訟起こすからね。覚悟してよね。帰っていいよ。お疲れさま」
 
ガックリと肩を落としてエレベーターの中に消えていくカン社長の後ろ姿を見送ったシンは、バカな息子を持つと苦労するなと哀れに思った。
 
「ハァ、マジであり得ねぇ親父だな」
「チェジュン、苦労知らずの2代目のボンボンはあんなもんさ。きっと甘やかされて育ったんだろうよ。坊主、あれが世襲制の怖いところだ。俺から見れば、畑は違えど、あの社長のバカ息子と坊主は一緒だ」
「えっ!?」
「精進しないと、公務に行くたびに国民から石を投げられるぞ。因みにそのバカ息子、坊主のご学友だから」
「!!!」
 
(カン社長・・・じゃあ、さっきのはインの親父さん?)
 
「ヒョンのツレ、最悪だな。でも何で芸校なんだ?神話で英才教育受けさせたら、バカなりに経営のノウハウが身に付くだろうに・・・」
「・・・映像に興味があったのか、皇太子のご学友というステータスが欲しかったんじゃない?チェジュン、もし芸校に行きたかったら、行っていいぞ。学力だけなら問題ないから、どうにでもなる」
「冗談だろ!?俺には、芸術の才能はない。今のままで十分だ」
「チェジュン、どこに通うんだ?」
「俺?幼稚舎から、ずっと神話だけど?あそこ、セキュリティー万全だし英才教育バッチリだからな」
 
(神話だって?!国公立のソウル大の双璧と言われる神話に通ってるのか?かなりのセレブ校だと聞いたことがある。アジョシの会社のスケールって、想像以上かも・・・)
 
「おい、選べたか?」
「はい。これでお願いします」
「うん、なかなかセンス良いんじゃない?ついでにこれとこれも持っておくと便利だな。ウソン、あとこの服に合う小物や靴も支払いに行った時、調達してきてくれ」
「了解です」
「じゃあ、着替えて、母屋に戻るとするか・・・」
 
チェウォンが奥の部屋に消えると、ウソンは買い取る予定の服の値札のタグを切っていく。
 
「殿下、足のサイズは?」
「えっ!?28cmです」
「了解!値札を取った服は、母屋に持ってってくれていいから。後で、スニーカーと安全靴を持っていく」
「あの・・・安全靴って!?」
「親父さんは、間違いなく二人を建設現場に連れていくだろうからな。必要なんだよ。俺は、漁船にも乗せられたぞ。漁船に乗るなら、ゴム長も要るな。確認しておかないと・・・」
「ゲロゲロ・・・ウソンヒョン、湿布用意しといてくれる?」
「クククッ、了解!後で、一緒に持っていってやる。殿下、聞いた話じゃ、陛下も工事現場で働いてるぜ。おそらく漁船も乗ったことあるんじゃないか?」
「!!!」
「・・・恐るべしシン家の教育方針」
「チェジュン・・・アジョシが俺は専業主夫だって言ってたんだけど、本当か?全然、想像がつかないんだけど・・・」
「マジだ!こっちの事業は、ほとんど人任せで趣味みたいなもんだな。祖父さんは、時代もあったんだろうけど仕事第一主義で、あまり家にいなかったらしい。その反動か知らないけど、親父は家庭第一主義だ。見たら、ビックリするぜ」
「お袋さんは?」
「保険の外交員で、バリバリのキャリアウーマン!うちの家訓は、働かざる者食うべからずだからな」
 
その時、ドアが空き、着替えを済ませたチェウォンが戻ってきた。
 
(!!!)
 
チェウォンの姿を見たシンが唖然とする姿を見て、チェジュンとウソンはお腹を抱えて笑いだした。
 
「お前ら、何笑ってんだ?おい坊主、口開いてるぞ。ボーっとしてないで、さっさと服を紙袋に入れろ」
「あ、はい・・・」
 
(さっきまでのは、何だったんだ?只の中年のおっさんじゃないか。それより何で割烹着&健康サンダルなんだ?)
 
着替えを持ったシンは、チェウォンとチェジュン親子と一緒にエレベーターに乗った。
 
「おい、どこ行くんだ?こっちだ。車には乗らない」
「へ?」
 
チェウォン親子は、駐車スペースとは反対方向にある非常ドアの向こうに消えていった。
シンが慌てて後を付いていくと、そこは少し広いが普通の民家の庭先だった。
 
「ここが、シン家の母屋だ。ようこそ、我が家へ。シン君、疲れたろ?家でゆっくりしようじゃないか」
「いらっしゃい、シンヒョン」
 
目の前で、父子がニコニコと笑っている。
 
(さっきと全然顔つきが違う。この親子、絶対に二重人格だ。俺、ここでやっていけるのか?)
 
 
 

Viewing all articles
Browse latest Browse all 229

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>