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Channel: ゆうちゃんの日記
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イ・シンの評価 第39話

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ユルは、父親の手紙を持つと、チェウォンと仁川国際空港に向かった。
その車中でも チェウォンは何本も電話をし続け、色々な人と打ち合わせや依頼をしていた。

「ご迷惑をおかけします」
「・・・手紙には、どこまで書いてあった?皇位継承権のことも書いてあった?」
「ご存じなんですね。はい、書いてありました」
「そう。ユル君の所為じゃないから。全て恵政宮さまの執着から始まったこと。君が皇位継承権を失ったことも恵政宮さまの所為だから。君は、最大の被害者だと俺は思ってる」
「・・・・・」
「ユル君は孝烈殿下によく似てるよ。姿形じゃない。性格がね・・・穏やかに見えたけど、内面はとても熱い人だった。だから、孝烈殿下を慕う人は多かったよ。この件が片付いたら、一緒に墓参りに行こうな。俺もソンジョおじさんに会いたいしさ」
「・・・はい」


その頃、香港国際空港第2ターミナルには、多くの中国人観光客の中にペク・チュンハの姿があった。
チュンハは、中国人観光客に紛れる事で敵の目を誤魔化そうとしたのだ。

(これでは、例え監視されてても見失うに違いない)

セルフチェックイン機で搭乗手続きを済ませると、チュンハは再び人混みに紛れるのだった。
何事もなく目立たぬよう飛行機に搭乗すると、チュンハはやっと緊張を解いた。
離陸前、CAが新聞や雑誌を乗客に勧めている姿をボンヤリみていると、一人のCAが新聞を手渡してきた。

(おいおい、俺、渡されても中華新聞読めねぇし・・・えっ!?)

新聞の間に一枚のメッセージカードが挟まっており、チュンハは固まってしまった。

(態々、中華系の航空会社を選んだのに筒抜けかよ・・・)

自嘲した笑いを噛み殺しながら、チュンハはメッセージを読み出した。

≪ペク・チュンハ元翊衛士、聞きたいことがある。
 君は何に忠誠を誓っていた?そして今は、誰に誓っているんだ?
 本当は、誰に操を立てたらいいのか分かっているんだろう?
 ソウルに着いたら、その答えを聞きたい。ユルさまと待っている。
                            チェ・ウォン    ≫

チュンハは、読んだ瞬間、顔を歪めた。

(やはりチェ・ウォンだったか・・・すべてお見通しなんだな・・・)

チュンハは、すべては恵政宮の権力への執着が原因で、自分は恵政宮の捨て駒にすぎないことに気づいていた。
ただ尊敬する孝烈殿下の遺児をどうしても皇位に戻したい、その一心だけで行動を共にしてきたのだ。

(話をするってどこでするつもりだ、チェ・ウォン。一介の大学講師だと侮っていた。お前の力は、一体どこにまで及んでるんだ?)

チュンハは、ソウルに着くまでの飛行時間、あらゆることに考えを巡らせた。

(この飛行機が判明している時点で計画は失敗だろう。できるなら、チェ・ウォンに一矢報いたい。しかしユルさまがチェ・ウォン側に付いた今、俺がすべきことは何だ?)

チェ・ウォンと対峙することは避けられないことだけは理解したチュンハは、じっと目を瞑るのだった。
機体が仁川国際空港に着陸し、乗客が全員降りるのを待って、チュンハは機内を出た。
そこには、見覚えのある人物が、チュンハを出迎えた。

「僕を覚えてる?」
「はい。ス殿下のご学友だったチョン議員・・・ですね」
「そう。イ・ユル君が待っている。案内するよ」
「あ、あの・・・」
「僕も詳しくは何も知らないんだ。ただソ・ファヨンがスを殺したと確信はしてるけどね」
「!!!」

チョン議員はそれ以上口を開かず、チュンハをチャン航空専用のVIPルームへ案内した。
VIPルームにはユルとチェ・ウォンがいて、チェ・ウォンはのんびりとコーヒーを飲んでいた。
2人が部屋に入ると、チェウォンは立ちあがり、笑顔を見せた。

「チョン議員、ありがとうございました。お陰さまで助かりました」
「いや、君のお役にたてて良かったよ。私も腰掛けていいかい?」
「どうぞ、どうぞ。ペク元翊衛士、お久しぶりで良いかな?でも話すのは初めてだよね?」
「チェ・ウォン・・・一体、俺に何がしたいんだ?いや、何をさせたいんだ?」
「あのさぁ・・・俺、武闘派じゃないからそんなに凄まないで。チビッちゃうじゃん。パンツの替えがないから、ちょっと困る」
「は?」

チュンハはバカにされているとムカッとしたが、ユルがケラケラと笑いだしたため、怒りを必死で抑えた。

「アジョシ、今、この場面でそれ言う?ホント緊張を知らないよね」
「失礼な・・・俺、これでも緊張してるし。ペク元翊衛士、とりあえずこれ見て。見てから、話をしよう」

チェウォンは、チュンハの前に孝烈殿下の覚書のコピーと3人のDNA鑑定結果の紙を置いた。

「!!!これは、事実なのか?」
「君ならス殿下の直筆や落款を知ってる筈だ。偽物か本物か分かると思うけど?」
「・・・・・」
「DNA鑑定に関しては、俺が直接依頼され、病院に持って行った。鑑定結果を知り、当時の担当医に聞いた。ファヨン妃は、懐妊前から知っていた。というより、ファヨン妃が自分以外の卵子を使ってでも体外受精を成功させるよう指示を出していた。ミン妃が先に懐妊したからね」
「・・・チュンハ、これも読んでくれる?父上が、僕に残してくれていた手紙なんだ」

震える手で手紙を受け取ると、チュンハは手紙を読み出し、頭を抱えた。

「・・・俺がその手紙を受け取った日、ス殿下はこれからファヨン妃と最後の話し合いをすると仰ってた。その翌日、殿下は事故死された」
「えっ!?」
「最初はね、君を疑ったんだ。でも葬儀が済んで、宮が落ち着いてすぐ違うと分かった。でも俺の親父、事故死に見せかけて殺したの君だろ?あるいは、誰かに金で依頼した?」
「お前の父親?」
「シン・チェヨン。俺、本当はシン・チェウォンていうんだ。ソンジョおじさんに頼んで、身元隠して偽名で宮に出入りしてたんだ」
「!!!」
「証拠はないし、心証だけだから、親父の事は別にいい。俺ら父子はいつも覚悟して仕事してたし、君も主の命令だったんだろ?それなら仕方がないとも思えるしさ」
「チェ・ウォン・・・」
「でもなシン殿下は殺しちゃダメだ。敬愛するス殿下が、誰よりも愛した宮が崩壊するぞ。考え直せ」
「・・・・・」
「考える時間が必要だろ?お前がユル君に手配したマンションで休めば?そこにス殿下付きだったパク内官の日誌が置いてある。読んでみれば?ス殿下が、どんなにお悩みだったかよく分かるぜ。でも秘文書で、返さないと俺、窃盗犯になるからちゃんと返して。明日、取りに行くからさ」
「ああ、分かった」
「じゃ、帰ろうか?ユル君、どうする?」
「・・・チュンハに付いています。今までよくしてもらったんで一人にしたくないんだ」
「そう?じゃ・・・」
「いや、ユルさまを連れて帰ってくれ。一人でじっくり考えたい」
「チュンハ・・・」
「ユルさま、決してユルさまを失望させるようなことはいたしません。ですから、一人にさせてくれませんか?」
「・・・分かった。絶対に変な気を起さないで。これ、命令だから」

チェウォンは、チョン議員にチュンハを頼み、ユルと共に車の乗り込み走り去った。

「ペクくん、乗りかかった船だ。送って行くよ」
「・・・ありがとうございます」

チョン議員の車の助手席に乗ったチュンハは、疑問を口にした。

「クスクス、彼が大学教授なのは間違いないよ。それもソウル大で最年少で韓国史の教授になった天才。でも父親がシン先生なら納得だよね。小さい頃から、宮に出入りしてただろうし秘文書も見放題だったんじゃない?」
「そんな事が宮で許されるのですか?」
「許される役職が一つある。僕もスに頼まれたが、荷が重いと断わったんだ」
「それは・・・」
「暗行御吏(アメンオサ)。皇帝の密偵だよ」
「!!!」
「暗行御吏は、人脈が広くちゃならない。仕事柄、僕は制限される。だから無理だと判断したんだ」
「ですが、一介の大学教授がそんなに広いはずがない」
「大学の学閥を舐めちゃいけないよ。ソウル大出身の官僚や議員がいかに多いか・・・それに彼の奥さんは、スアム文化財団の理事だ。つまり彼は、ユン・ソギョン元大統領の娘婿なんだ」
「えっ!?」
「分かった?甥を通じて、神話やソングループとも繋がりがあるし、今は神話学園の教授だから教え子にも力を持った御曹司や令嬢がいるだろうね。彼と比べれば、僕なんて足元にも及ばないし、君が太刀打ちできるわけがない」

チュンハは、財界・政界の協力者がなぜ突然連絡を絶ったのか、やっと理解できた。
そしてあまりにも無謀な企みだったことも・・・チュンハは、ぐったりとシートに凭れかかった。

「君がスをとても慕っていた事は知っている。スも君をとても信頼していた。それをソ・ファヨンに利用されたんだね」

チョン議員は憐れむように呟くと、そのまま黙ってソウルのマンションまで車を走らせたのだった。



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