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Channel: ゆうちゃんの日記
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イ・シンの評価 第41話

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早朝6時、インターフォンが鳴り、玄関を開けると思っていた人物ではなく、見知らぬ少年が立っていた。

「おはようございます」
「ああ?」
「親父に言われて、迎えに来ました。親父からの伝言です。『ファイル、返して』だそうです」

真面目な口調で、父親の口真似をする少年が、チェウォンの息子だとやっと理解できたチュンハだった。

「ククッ、親父に似てるな・・・ちょっと待て」

チュンハがパク内官の日誌を持って玄関に向かうと、少年は先程より不機嫌な顔をしていた。
訝しく思いながらもファイルを渡し、出かけるために靴を履いた。

「で、どこに行けばいいんだ?」
「・・・その前に訂正してください」
「は?何をだ?」
「親父に似てるってことです。あの親父に似てるなんて、俺には屈辱以外の何ものでもないんです。訂正してください」
「プククク・・・それは悪かった。訂正する」
「分かってくれればいいんです。じゃあ、行きましょうか?」

この親子の関係に興味を持ったチュンハは、素直に息子の後ろを付いて歩いた。

(何気なく歩いてるが、隙がない。この子も、只者じゃないな)

「なぁ、息子からそんな風に言われる親父って、どんな奴なんだ?」
「・・・見たまんまの変人です。爺さんもかなりおかしい人だったみたいですけど、俺は記憶にないです」
「えっ、あのシン先生がか?!」
「ああ、祖父をご存じなんですね。あの変人の親です。まともな訳がないでしょ」

チュンハが知っているシン・チェヨンは、いつも穏やかで人格者だったので、孫の話が信じられなかった。
地下鉄乗り場の階段を下りると、売店で全ての新聞を購入し、再び地上に戻った。

「おい息子、地下鉄に乗るんじゃなかったのか?」
「ああ、歩いていける所なんですよ。ちょっと昨夜のことが気になって買いました」
「全紙をかよ・・・」
「はい、全部チェックして準備しないと、学校に行けませんから・・・」
「???」
「それと息子の名前は、シン・チェジュンです。以後、お見知りおきを・・・」
「お見知りおきって・・・もう会う事もないんじゃねぇの?」
「それは、貴方次第でしょ」
「・・・俺の事、聞いてるんだろ?なのに何で?」
「死んだ爺さんの日記を読んだからです。貴方のことも書いてありました。忠誠心が間違った方向にいっただけでしょ。親父も爺さんも先帝が困ってたら、間違いなく殺ってたと思います。いや、実際殺ってたかも・・・」
「・・・・・」
「朝から、公共の道で何で物騒な話をしてるんでしょうね・・・俺、親父の跡を継ぐつもりです。でも俺だけじゃ、シンヒョン一人の世話で手一杯なんです。だからユルヒョンが心配なんですよね」
「お、おまっ・・・何を考えてるんだ?」
「別に・・・その忠誠心を上手く活かす方法があるのになぁと思っただけです。さぁ、着きましたよ」

そこは、以前自分がチェヨンを見張ったことがある家だった。

「昔、祖父が住んでた家です。今は、年に数回利用するだけですかね」
「こんな立派な家をか?」
「小さい頃からヌナが危険な目に遭うんで、転々としています。バカな王族がホント多くって・・・」
「えっ!?」
「親父~、連れ帰ってきたぞ~!」

チェジュンは家の中に入ったが、チュンハは入りづらく、何気なく庭を見つめていたが、不審な物に気づき近づいた。

「いらっしゃい」
「!!!お前、これ・・・」
「あ、やっぱり気づいちゃった?荒れ地だから気づかないと思ってた。親父がね、栽培っていうか植えてた。親父がどこまでしてたかは知らない。俺は・・・クスッ・・企業秘密だな」
「・・・・・」
「だから言ったろ?どこに、誰に忠誠心を持つかだけだって・・・さあ入って、メシ食おうぜ」

家の中に入ると、チェギョンが食卓に朝食を並べており、チェジュンに起こされたのか寝惚け眼のシンとユルが座っていた。

「はっ、アジョシ!」
「坊主、煩い。紹介する。ペク・チュンハ元翊衛士。あの叫んでた奴が、イ・シン皇太子殿下。で、紅一点が俺の娘のチェギョン」
「・・・どうも」
「おはようございます。娘のシン・チェギョンです。朝からお呼び立てしたみたいで、すいません。良かったら、ご一緒に朝食召し上がってください」
「あ、はい。ありがとうございます」

チュンハは、一番馴染みのあるユルの隣に座った。

「チュンハ、少しは眠れた?」
「・・・はい、少し」
「あれ?ユル君のお知り合いなの?」
「あ、うん。僕がイギリスに行く時、翊衛士を辞めて一緒に付いてきてくれたんだ」
「へぇ~、優しい人なんだね。アジョシ、小さい頃のユル君て、難しい言葉で話すから大変だったでしょ?」
「チェギョン、お願いだから止めて!ホント反省してるんだから・・・」
「プッ、思い出した!ユル君、君、おマセさんだったよね」
「へ?何がですか?・・・いや、良いです。何の事だか分かりませんが、マセテました。だからこの話は止めにしましょう」
「アジョシ、勿体ぶらずに教えろよ!」
「シン、黙れ!アジョシ、言わないで!!」
「じゃ、俺が言う。ユルヒョン、『無礼者!皇太孫に触れるとは何事だ!』ってヌナに怒った後、『望みなら、褥を一緒にしてもいいぞ』って言ったらしいじゃん」
「///チェジュン!!」
「「ブハッ・・・」」

シンとチュンハが、同時に飲んでいたコーヒーを吹き出した。

「シン君もアジョシも汚い!!自分で拭いてよね。で、アッパ、褥って何?」
「布団のことだ」
「ふ~ん、ユル君、一緒に寝たかったのね。普通に言ってくれれば、一緒にお昼寝してあげたのに・・・」
「「「ブッ・・・・アハハハ・・・・」」」

ユルは赤面だが、他の男たちはお腹を抱えて笑いだした。

「クククッ・・・コホン、アーアー、ンン・・・チェギョン、今晩、アッパと褥を共にしよう」
「ゲッ、キモい、死ね!」
「チェギョン姫~~、それ酷過ぎ。アッパ、泣くよ」
「泣けば・・・」
「クスクス、しかしチェジュンは、何で知ってるんだ?」
「死んだ爺さんの面白ネタ帳で読んだ。多分、先帝の爺さんに聞かせて、2人で大笑いしたんじゃない?」
「そのネタ帳、破って捨てたい・・・」
「ユルヒョン、大丈夫。ユルヒョンは、それ1つだから。大半は、ヌナとシンヒョンだし・・・ホント笑えるぜ」
「・・・チェジュン、それ出せ!俺が燃やしてやる」
「もう無駄。全員読んで、爆笑した後だから・・・でも、インヒョンがエム君に昇格して良かったよな。それまで親父、『スンデの坊主』だったもん。親父がさ、会うたびに『イン君、成長したか?』って聞く訳よ。インヒョン、何も知らず『はい、すくすく大きくなってます』だしね。俺、ネタ帳読んだ後は爆笑しそうで行けなかったしね。おば様のケーキ、絶品なのにさ」
「「ブハハハ・・・」」

意味の分かるシンとユルだけが、涙を流して笑っている。

「またどうせ下ネタなんでしょ。ホント、朝からいい加減にしてよね。アジョシ、バカな親子でホントすいません」
「いえ、お構いなく。俺も楽しませてもらってますから・・・」
「ヌナ、なに良い子ぶってるんだよ!?インヒョンが、変な名前で呼ばれるのは、全部ヌナの迷言からだからな」
「は?何それ?」
「それは、お前が小さい頃、イン君と坊主の陰茎を比較したからだ。イン君が切る前のスンデで、シン君がシイタケだってな。それを親父が書き残してたんだ」
「///うっそ~!!!爺ちゃん、バッカじゃないの!?」
「///・・・・」
「で、坊主、シイタケは成長したら、どんなになるんだ?エリンギとか言うなよ」
「アジョシ、死ね!!」
「クッ・・・アハハハ・・・・」

あまりのバカさ加減にチュンハは、堪らずお腹を抱え、涙を流して笑っていた。

「良かったな。まだ笑えるじゃん」

チェウォンにそう言われ、『ああ、コイツには一生敵わない』とチュンハは思ったのだった。

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