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Channel: ゆうちゃんの日記
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イ・シンの評価 第48話

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生徒たちの撮影風景をにこやかに見ていた教生ハン・ジョンジェは、突然見知らぬ男性から声を掛けられて驚いた。

「驚かせちゃった?ゴメンねぇ~。実習はどう?君にとって有意義な時間かな?」
「えっ、あ、あの・・・?」
「ああ、俺?俺ね、ここの理事長の叔父。見込みのありそうな教生が入ったって言うからさ、敵情視察?」
「敵情視察と言う事は、どこか芸術系の学校の先生なんですか?」
「ううん、韓国史の教授♪」
「はぁ?」
「クスクス、冗談だって。ちょっと話がしたいんだけど、時間くれない?」
「それは、構いませんけど・・・」

ハン・ジョンジェがチラッと指導教師を見た事に気づいたチェウォンは、ジフに連絡を入れた。

「ジフ?俺・・・あのさぁ、映像科の教生の先生とデートしてくる。後の処理、宜しく」
「はい、これでOK。ほら、あそこの先生、スマホ出てるだろ?さぁ、行こうか」

ジョンジェは、チェウォンに訳も分からず誰もいない屋上へと連れてこられた。

「ここなら、大丈夫かな?」
「はい?あの・・・」
「あのさ、家は手伝う気はないの?ハン流通グループ、大きいよね」
「ご存じなんですね。はい、家の手伝いをするつもりはないです。父も好きな事をすれば良いと言ってくれていますし・・・」
「大事にしてもらってたんだ。良かった」
「えっ!?」
「単刀直入に聞くけど、実の両親の事は、どこまで知ってるの?」
「あ、あの・・・」
「警戒しないで、何もしない。今日、君と会う事は、ハンちゃんには了解をもらってる」
「ハンちゃん?」
「皇后さま付きのハン尚宮。君の父親の姪にあたる人」
「・・・実母の名前と職業だけです」
「そっか・・・実母の名前は、イ・ミョンイで合ってる?」
「・・・はい。でもどうしてそれを・・・」
「う~ん、誰にも言わないでくれる?俺、君の母親のミョンちゃん、大好きだったんだよね」
「えっ、じゃあ・・・」
「違う、違う・・・俺、君が生まれた時、もう結婚してたし。ミョンちゃん、俺の存在知らなかったし・・・」
「へ?意味がよく分かりません」
「今はそんな役職ないんだけど、昔俺ね皇帝の密偵だったんだ。で、蔭から見てた。俺ってシャイだし」

ジョンジェは、この軽薄そうな男のことをどこまで信じていいのか分からなかった。

「ミョンちゃんの顔は知ってるの?」
「・・・はい。入職した時の集合写真で見ました」
「えっ、たったそれだけ?じゃ、俺の秘蔵お宝写真やるよ。先帝の親父に撮らせた写真」

スーツの内ポケットから出された写真を見た瞬間、ジョンジェの顔に驚きが広がった。

「やっぱり気づいた?だから、美術科のあの子を見てたの?」
「・・・はい。何だか似てるなぁって見てました。でもどうして?あの子が生まれた時は、母はもう・・・」
「そうだね。亡くなってた。で、何で、皇太子殿下をジッと見てたわけ?珍しいからじゃないよね?」
「そこまでご存じなんですか。ええ、殿下に実の父の事を知らないか、聞きたかったからです」
「そっか・・・だそうだ。坊主、皇族が盗み聞きなんてすんな!出てこい!!」

ジョンジェが驚いていると、蔭からシンがバツが悪そうに出てきた。

「お前ねぇ、俺を信じるんじゃなかったの?」
「ゴメン、どうしても気になって・・・で、ハン先生の実母って女官だった訳?」
「ハァ、そうだ。悪いけど、坊主にその写真、見せてやって」

シンは写真を見た瞬間、目を見開いてチェウォンに視線を移した。

「どういう事?」
「どうもこうもそういう事。坊主、ハン先生の顔、誰かに似てると思わないか?」
「「えっ!?」」
「そっか・・・あんまり会ったことないよな。はい、これでどう?」

もう一枚、ポケットから出した写真は、ユルの父親である孝烈殿下だった。

「「あっ・・・!!」」
「俺の憶測で悪いけど、知ってる事と併せて話すね。それでいい?」
「はい、お願いします」
「俺の親父は、先帝の息子2人の講師だった。だから父子家庭だった俺は、今の最高尚宮と皇太后さまによく面倒をみてもらってた。その最高尚宮、女官の一番偉い人ね。最高尚宮が目を掛けていたのが、ハンちゃんとミョンちゃんだった。2人は、皇子2人が結婚した時に妃の女官になることが決まってた。で、最初に孝烈殿下が婚姻して、ミョンちゃんが皇太子妃つきの女官になった。君は知らないと思うけど、一時芸能界に身を置いてただけあって綺麗な人だった。でもその半面、派手な人でもあった。宮は外から見れば煌びやかに見えるがそうじゃない。規律と義務ばかりの生活だ。そうだろ、坊主?」
「ああ、息が詰まるときがあるな」
「当然、派手好きな人もこんな筈じゃなかったと思ったが、後の祭り。日々勉強で、外野からはお世継ぎの催促。彼女が八つ当たりする相手は、女官しかいなかった。よく泣いているミョンちゃんをハンちゃんが慰めてる姿を見たよ。勿論、蔭からね」
「「・・・・・」」
「ここからは、推測だから・・・その事実を知った孝烈殿下が、何らかのアクションを起こした事は間違いないんだ。その頃、ケンカが絶えなかったし。で、ミョンちゃんに謝ったか、ミョンちゃんが慰めたのかは、分からない。何かの拍子に一線を越えてしまったんだと思う。その結果が、君なんだろうね」
「アジョシ、この事を宮は把握してなかったのか?」
「昨日、チョンちゃんに確認した。退官の理由は、皇太子妃と信頼関係が結べる自信がないだったらしい。でもハンちゃんだけは、事実を知ってた。だから伯父にミョンちゃんを預けたんだ。ハン流通なら守ってもらえると思ったと言ってた」
「・・・じゃ、美術科のあの子は・・・どういう事ですか?」
「・・・君の弟だと推測される。彼は、イ・ユル。孝烈殿下の息子。母は、皇太子妃だったソ・ファヨン。対外的にはね。彼ね、体外受精でファヨン妃から生まれてる。ファヨン妃の主治医の話じゃ、突然女性を連れて来て、『内密でこの子の卵子を取り出して、自分の卵子と一緒に受精させてほしい』と言ってきたそうだ」
「「!!!」」
「主治医は最初は断わったが、脅されて仕方なく従ったそうだ。その女性の名も教えてもらえなかったと言っていた。やっとファヨン妃の懐妊が確認できた数日後、その女性が病院に運ばれて急死した事を知ったそうだ。俺がこの事実を知ったのはつい先日。ハンちゃんは知ってたけど、君を守るために黙ってたそうだ。俺の話は以上。何か質問は?」
「そのソ・ファヨンという人物は?」
「もうとうの昔に 国外追放になってる。もしかしたら、もうこの世にいないかもしれない」
「は?アジョシ、なに言ってんの?」
「・・・アイツがイギリスに一旦戻ってる。俺んちの庭、いじってたからな」
「あっ・・・」
「聞いたんだろ?俺んちの秘密。アイツ、親父の書斎に籠もってたしな」
「あのイ・ユル君はこのことは?」
「遺伝子的な母親が別にいる事は伝えた。ハン・ジョンジェ、彼は一番の被害者だと思っていい。だから恨まないでやってくれないか?」
「ハン先生、俺からもお願いします。本当にアイツ、苦労してるんです。ひょっとしたら、今も苦しんでるかもしれない。だから、ユルはそっとしておいてくれませんか?何なら、俺から皇太后さまに話してもいい」
「えっ!?」
「本当なら、君が皇位継承権第一位になるからね。坊主は、それを言ってるんだ」
「はっ、冗談。僕に皇太子なんて無理です!絶対に嫌です!!」
「クククッ、そこまで嫌がらなくても・・・でもね、君は皇族の血を引いてるのは間違いないと思うよ。先帝のソンジョおじさんも孝烈殿下も現陛下の坊主の父親も全員、カメラが趣味なんだ。その影響で、坊主もカメラ好きだし・・・」
「そ、そうなんですか・・・何か、へへへ・・・嬉しいかも・・・」
「公には言えませんが、僕も血の繋がった従兄弟が増えて、嬉しいです」
「殿下、ありがとうございます」
「アジョシ、ユルには話すのか?」
「俺は無理。話すなら、お前から話せよ」
「マジかよ・・・ハン先生、もう少し時間をください。その時は、ハン尚宮を通してお知らせします」
「いえ、もう・・・自分のルーツが分かっただけで十分ですから」
「じゃ、止めとこ。親父んちに、誘おうと思ったけど止めとく。いっぱいミョンちゃんの写真あるんだ♪」
「おい、エロ親父!怖い奥さんに絞められるぞ」
「ダメ、黙ってて。ただのグラビアアイドルの写真みたいなもんだから・・・」
「おい、女官をグラビアアイドルと一緒にするな!まさか、その写真で一人で・・・」
「キャー、皇太子殿下って、フ・ケ・ツ♪ちょっとだけだってば~」
「このクソエロ親父、一回死んでくるか?息子の前でよくもまぁ・・・ハン先生、ホント申し訳ありません」
「いえ、でも、クククッ・・・お二人、本当に仲が良いですね」
「あい、未来のおとうたまですから♪」

シンは、この未来の義父をどうしてくれようと頭を抱えるのだった。

「こっちは、これで解決っと。後は、美術科だな」
「あの美術科と言うのは、もしや教生のキム先生ですか?」
「うん。ある女生徒をよくジッと見てるんだってさ。本人は気づいてないんだけど、周りが気になるって言っててね。何か知ってる?」
「ああ、キム先生、その女生徒のファンなんですよ。もう一度、あの絵を見たい。できれば、水墨画の技法を学びたいって、実習初日に聞きました」
「「・・・・・」」
「あのぉ・・・どうかしましたか?」
「いや、ちょっと拍子抜けしただけ。あの絵は、無理!他の絵で良いならどうぞ」
「へ?」
「アジョシ、技法だってさ。教えてやれば?但し、女性だから全裸は止めろよ」
「あ、あの・・・」
「ああ、その子ね俺の娘。特別賞貰った絵は、今皇后さまの部屋に飾ってある。だから、見せられない。因みに娘に水墨画を教えたのは俺。坊主にも教えた・・・」
「え~~~!!」
「俺ね、これでもできる子なんだ♪」

ハン・ジョンジェは、この掴みどころのないチェウォンにもっと知りたいと思ってしまった。
でも知っても きっと理解できないだろうとも思った。



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