大騒ぎの後、チェウォン達一行が帰り、シンがシャワーを浴びた直後、チェギョンが宮にやってきた。
「チェギョン!ちょうど今、チェギョンに電話しようと思ってたところだったんだ」
「うん。チェジュンが、シン君が待ってるから行ってきたらって言ってくれてね。だから、来ちゃった。へへへ」
「誰かに送ってもらったのか?」
「うん。オッパの家のSPのアジョシに送ってもらった。アッパもチェジュンも泥だらけでさぁ。外で何やってんだか・・・」
「何も聞いてないんだ。さっきまで宮にいたんだよ、2人とも」
「え~~!!全然、知らなかった」
「朝から、陛下やユル達も参加して、宮を探検した後、昼飯皆で作って食ったんだ」
「へ~、楽しかったみたいだね」
「ああ、野郎ばっかりでワイワイ騒いでさ。めちゃくちゃ楽しかった」
「フフ、良かったね」
「・・・チェギョン、散歩デートしよう。宮内だけどさ」
「うん♪」
シンはチェギョンと手を繋ぎ、香遠亭に向かって歩き出した。
他愛のない会話をしながら、時には笑いあい、じゃれ合って散歩する。
目的地に着くと、池にかかる橋、その橋向こうに建っている塔、その見事に調和された美しさに、チェギョンは目を輝かせた。
「うわぁ、すごくきれ~!シン君、すごいよ。連れてきてくれてありがとう」
「くす、気にいってくれて良かった」
「うん。ずっと見てても飽きないぐらい美しいよ。ホント、ずっとここにいたいもん」
「いれば?」
「へ?今、なんて?」
「居たらいいって言った。いや、居てほしい」
「えっ!?」
「俺、心の準備してほしいって言ったよな?まだ準備できない?」
「あっ・・・」
「確かに俺と結婚したら大変かもしれない。でも俺、全力で支えるから。だから俺とここで楽しく暮らそ?シン・チェギョンさん、俺と結婚してください」
「///・・・はい。イ・シン殿下、私をお嫁にもらってください」
シンは、嬉しくて思わずチェギョンをギュッと抱きしめてしまった。
そして少し体を離し、額、頬と順に口づけすると、最後にチェギョンと唇を合わせた。
(うわっ、柔らか・・・めちゃくちゃ気持ちいい~。止められねぇ~、どうする俺?)
何度も啄み、キスを続けていたシンは、心を鬼にしてやっとの想いで唇を離した。
みるみる顔を真っ赤にしていうチェギョンが可愛くて、シンは再び腕の中に閉じ込めてしまった。
「ゴメンな。嬉しくて、止められなかった。嫌じゃなかった?」
「うん、嫌じゃなかった。私も嬉しかった」
「ああ、なんて可愛いんだ。俺、もう帰したくないかも・・・」
「えっ?」
「クククッ、今日は、ちゃんと帰すから安心して。とりあえず戻って、陛下たちに報告しよう」
「えっ、もう?」
「実は、チェギョンはもうとっくに婚約者で、いつ公表できるんだ?って思ってたんだ」
「えっ、うそ・・・」
「うん、ホント。今日アジョシに言われて、先走って暴走してる事に気づいてさ。陛下に早くプロポーズしてOKを貰えって叱られたんだ。だから、陛下に報告して安心してもらわないと・・・一緒に付いてきてもらって良い?」
「うん♪」
シンとチェごンは、再び手を繋いで、元来た道を戻り始めた。
「シン君、でも本当に私で良かったの?」
「チェギョン以外なんて俺は無理だ。ガキの時から今まで、チェギョンしか好きになったことないし、これからもそんな奴は現れないと誓えるぞ」
「ありがとう。私もずっとシン君だけだったよ」
(ああ、ダメだ、押し倒したい!可愛すぎるだろ、チェギョン!)
何とか自分を落ち着かせ、シンは陛下の私室へチェギョンを連れていった。
「失礼します、シンです。チェギョンを連れてきました」
『入るがいい』
シンがチェギョンと部屋に入ると、陛下だけでなくユルとチェジュンもいて、ニヤニヤしていた。
「な、な、何でいるんだ?」
「あれ?チェジュン、さっき家で会ったよね?」
「シンヒョン、ヌナ、何で俺らがここにいるか分かんないの?」
「「へ?」」
「クスッ、シン、おめでとう。プロポーズOK貰えて」
「お、お、お前ら、覗いてたのか?」
「チェウォンが、心配だから見に行こうと言いおってな・・・クククッ」
「「はぁ?」」
「あの親父が、こんな面白いこと見逃す筈がないだろうが・・・俺とユルヒョンは、無理やり引っ張ってこられたんだ。シンヒョン、見られたくなかったら日をずらすべきだったね」
「///あのクソ親父・・・で、肝心のアジョシはどうしたんだ?」
「慈慶殿だ。クククッ・・・そのお前たちのラブシーンがショックだったみたいでな。『チョンちゃんとこ、行ってくる』って言っておった」
「クスッ、叔父上、正確に言わないとダメですよ。アジョシ、涙と鼻水でボロボロの顔をして、肩を落としてたよ。面白がって見に来て号泣するなんて、自業自得だよね」
シンもチェギョンも チェウォンのバカさ加減に呆れてしまった。
「ホント、父がご迷惑おかけしました」
「いやいや、チェウォンのお陰で、息子のプロポーズを見学するという貴重な経験ができたよ。ハハハ・・・」
「「///・・・」」
「でも良かったな、シン。おめでとう」
「ありがとうございます」
「そこでだ、話は戻るが、チェギョン、夏季休暇が始まったら、訓育を始めてほしい」
「訓育?」
「チェギョン、お妃教育のことだ」
「///あ、はい。宜しくお願いします」
「訓育は皇后の権限になる。詳しい事はミンにききなさい」
「はい、陛下」
「チェジュン、ユン・スンレ殿を呼び出してくれぬか?できれば、ユン・ソギョン殿とジフ君も。顔合わせを兼ねた食事会をしよう。ユルも一緒にな」
「「はい!」」
「シン、チェギョン、報告を兼ねて慈慶殿に行って、母上に食事会の事をを伝えて来てほしい。クククッ・・・それとチェウォンの様子も見てきてくれ。もう落ち着いておればいいがな」
シンとチェギョンは、チェウォンを見るのが少し怖い気もしたが、とりあえず慈慶殿に向かう事にした。
皇太后の部屋には、皇太后と女官しかおらず、シンとチェギョンは首を傾げた。
「ウォンから聞きましたよ。シン、良かったですね。チェギョン、これから宜しくな」
「はい、皇太后さま。あの、こちらに父がお邪魔していると聞いたのですが、帰ったのでしょうか?」
「チェギョン、最高尚宮の姿が見えない。見送りに行ったのかもな。早く連絡して、呼びもどさないと・・・」
「シン、呼びもどすとは何かあるのか?」
「はい。陛下がシン家の家族を全員呼んで、顔合わせを兼ねた食事会をしようと仰っいまして、そのお誘いをお二人に伝えに来たので、アジョシを呼び戻します」
「オホホホ・・・ウォンは帰っておらぬから連絡はいらぬ」
「えっ・・・」
「別室で、今チョンが慰めておるわ。ほんにウォンはいつまでたっても親離れできぬのぉ・・・」
シンは、チェウォンが最高尚宮に甘えている姿を想像してしまい、身震いしてしまった。
シンの隣でチェギョンも嫌な顔をしていて、シンは思わず笑ってしまった。
(アジョシ、ホント天真爛漫すぎるだろうが・・・)
夕方、チェギョンの母イ・スンレが、ジフと共に宮にやってきた。
「陛下並びに皇后さま、初めてお目にかかります。チェギョンの母のイ・スンレでございます。この度は宮にご招待くださりありがとうございました。残念ながら、急な事でしたので父のユン・ソギョンは都合がつかず、申し訳ありませんが欠席させていただきます」
「いえ、こちらこそ急にお呼び立てして却って申し訳ない。今日、息子がチェギョン嬢にプロポーズの返事をいただいたので、皆でお祝いしようとなったのです。内輪の集まりです。どうかお気楽になさってください」
「ありがとうございます」
皇族全員が口にはしなかったが、チェウォンの奥方なのにまともだなぁと思っていた。
和やかな雰囲気で食事が進んでいたが、急にチェウォンが爆弾発言をして一変した。
「なぁスンレ、考えたんだが、もう一人女の子を作ろう」
「///ウォンオッパ、急に何を言い出すのよ!?」
「だって寂しいじゃん。チェギョンがいなくなったら、俺、泣くよ」
「もうすでに泣いたように見えるけど?」
「「「クククッ・・・・」」」
「だって・・・なぁ、俺、頑張るからさ」
「頑張らなくていいから・・・大体、誰が育てるのよ。産んだら育てないとならないのよ?」
「俺が育てるって!」
「それがイヤだから言ってるんでしょう。ジフとチェギョンが普通に見える?チェジュンだけはと思って、SPに子守お願いした私の苦労も分かりなさいよ。それでもやっぱりあの子も少しおかしいと感じた時、どれだけ絶望したか・・・」
シン家側の子どもたちは微妙な顔をしたが、皇族は全員笑いを堪えるのに必死だった。
「スンレ、ひどい・・・」
「チェギョンがお嫁に行っても私がいるでしょ。それにすぐに孫ができるわよ」
「孫?俺に孫?」
「そう、チェギョンの子どもよ」
「・・・ヒョンく~ん、俺、孫の講師予約しとくね」
「クククッ、分かった。その時は宜しくな」
「やった!スンレ、ずっと一緒にいてくれるって言ったよな?」
「ええ、言ったわよ。死ぬまで一緒にいてあげる」
「死んでも一緒の墓にも入ろうな♪」
「それは、勘弁してもらえない?あの世でも苦行って・・・私どれだけ前世で悪いことしたのよ」
「スンレ~~~(泣)」
「「「ブハハハ・・・」」」
やはりチェウォンの嫁は、とてつもなくしっかりした人だった。