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Channel: ゆうちゃんの日記
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イ・シンの評価 第53話

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夏季休暇に入り、それぞれが忙しい日々となった。
ユルは、マンションでチェウォンによる集中講座を受け、シンは公務と慰問に執務、そしてその合間にや講義を受ける。
チェギョンはといえば、儒教学者の祖父と韓国史教授の父からしっかり学んでおり、四書五経や宮の歴史などは訓育担当のチェ尚宮より詳しい程で、漢字の読み方や皇后と刺繍を楽しんだり、皇太后とお茶をしながら女性皇族の在り方を学んだり、毎日宮に来るものの楽しく過ごしていた。

そんな中、宮広報部主催の定例記者会見が行われた。
いつもは広報部の職員が受け答えするのだが、今回は色々返答に困る質問をされると予想される為、コン内官が質疑応答の担当になった。
陛下やキム内官たちと綿密な打ち合わせをして、コン内官は会見に臨んだ。

ーまず最初に王立学園の大幅な人事異動についてお伺いします。
「皇太子殿下が通われる高校から苦情が寄せられたことが発端で、色々な不正が明るみになりましたので対処した次第です」

ーそれは、どのようなことでしょうか?
「大学学長が王族の圧力を掛けられ便宜を図っていたこと、それを知った一般の学生たちがお金で教授たちを懐柔し、王立の品位も偏差値も下げてしまったことです」

ー殿下が通われている芸術高校から、どのような苦情がきたのでしょうか?
「教育課程を取っていない生徒が、大勢教育実習に申し込みをしてきた事と教育課程を取っている学生もいましたが、王立学園には芸術科はないので、おかしくないかとの苦情でした。また応募してきた学生は全員女性だったことで、皇太子妃の座争奪戦に我が校を巻き込まないでほしいと言われました」

  記者たちが、ざわつき出した。

ースアム文化劇場での殿下の公務についてですが、我々に事前に入っていた情報では、皇太子妃候補筆頭が殿下の通訳をするという事でしたが、その辺りはどうなんでしょう?
「公式発表で、殿下がオペラ観劇の公務に出向かれるとしか言っておりません。どちらからの情報か分かりませんが、その情報に宮は一切関係なく、コメントするつもりはありません」

ー劇場の玄関にお一人王族のご令嬢が立っておられましたが、どういうことでしょうか?
「宮は、何も知らされていませんでしたし、王族に同行の依頼もしておりません。スアム側に通訳をさせてほしいと申し出があったそうですが、殿下に失礼があっては困るとお断りしたと後でお聞きしました。でもなぜと仰るなら、当人にお聞きくださいとしか言いようがありません。その王族は、公務の妨害をしたと言う事で、即日除名処分が下っております」

ーその王族以外にも数名が除名になっていますよね?
「はい。不正が発覚しましたので・・・皇族・王族は、国民の模範でないといけないという法度がございます。その決まりに著しく逸脱した行為が発覚しましたので除名になりました」

ー話は変わりますが、皇太子殿下は成年皇族となられました。ご婚姻の予定は?
「何も決まっておりません」

ー噂によりますと、『スアムの姫』と呼ばれる女性と仲が良いと聞いていますが?プライベートでは、宮の翊衛士が護衛に付いているそうですね
「(そうきたか・・・)彼女の祖父は、先帝陛下と親交があり、現陛下と孝烈殿下の講師でもありました。また父親は、皇太子殿下の幼少時に講師を務めていただいておりました。その関係で、今でも家族ぐるみのお付き合いをしておられます。護衛の件ですが、翊衛士を派遣したのは1度だけです。その日、彼女の社交界デビューと聞いていたので、皇后さまが心配して付けられました。ですが、お付けして正解だったみたいですね」

「ご質問は以上でしょうか?」

「では、こちらからご報告を。元皇太子である故孝烈殿下の妃であった恵政宮さまですが、堅苦しい宮には戻りたくないと数年前より皇籍から外れておりました。そのソ・ファヨン氏ですが、先日、渡英先の自宅でお亡くなりになったそうです。そしてご子息の義誠宮さまは、陛下や殿下を支えるため3月に帰国されており、渡英で中断しておりました教育を目下受けておられます。義誠宮さまは、できれば秋頃に皆さまの前にお立ちできるようになりたいと努力されておられます。どうぞ今、しばらくお待ちください」

「では、これで定例会見を終了いたします」

『ちょっと待ってください

コン内官が、プレスルームから出ようとするのを遮るかのように声が掛った。
コン内官は、仕方なく振り返ると、声をかけた若い記者を見つめた。

「公式会見は終わりましたが?」
『分かっています。コン内官さまは、皇太子殿下付きの侍従ですよね?』
「そうですが、何か?」
『先程、殿下の婚姻について、何も決まっていないと仰いましたが、先日送られてきたFAXの内容と矛盾しませんか?』
「矛盾とは?」
『≪機が熟すまで、黙って見守ってほしい≫と書かれていました。なのに決まってないなんて、おかしくないですか?』
「では、まだ機が熟していないのでしょう」
『では、いつ熟すのですか?』
「ここからは、オフレコで頼む・・・君は、殿下をお幾つだと思っているんだ?この国の法律は、何歳から結婚できるか分かってるのか?」
『知っています』
「皇族の方々も我々も殿下のお相手は、皇太子ではない殿下御自身を見てくれ、お慕いしてくれる人が望ましいと思っている。だが皇太子妃になりたい、させたいご令嬢や親は、皇太子妃の座が目的で、殿下御自身に魅かれておられるわけではない。そしてどんな手段を使ってでもと考える輩が多い。その意味が分かるかね?」
『・・・体を使ってでもということでしょうか?』
「確かにそう考えるご令嬢もいる。資格も学力もないのに教育実習生として殿下に近づこうという女学生はその部類だ。そんな輩は多いが可愛いもので、我々が注意しているのは、少しでもライバルを減らす為、排除しようとする者たちだ」
『排除・・・ですか?』
「・・・幼少時は幼友達の立場欲しさに 今は皇太子妃候補を減らすために 怪我をさせたり命を狙ったりする輩がいる事だ。事実、先程話に出たお嬢様は、幼少時から何度も危ない目に遭っておられる。お爺様は、ひき逃げ事故で亡くなられている程だ。その所為で、何年も宮とは疎遠になられていた。そんな中でも数年前、骨折するほどの暴行を受けられた。調べれば、金で依頼している王族がいた。幼少時に殿下と仲が良かっただけで、排除の要因になったようだ。それだけ皇太子妃の座は、欲深い輩にとっては魅力的なのだろう」
『・・・・・(ゴクリ)』
「話は戻るが、殿下がご婚姻できる年齢になるまで、まだ1年近くある。仮にだが、婚約発表をしたとする。婚約者の方は、本来は幸せな期間の筈なのに身の危険に怯えながらの1年になるだろう。君たちの好奇心を満たすために我々は殿下の大事な人を危険に晒すわけにはいかない。ご理解いただけただろうか?」
『はい。申し訳ありませんでした』
「再度、お願いする。機が熟すまで、黙って温かく見守っていただきたい。公表した暁には、ご自由に報道していただいて構わない。では、これで失礼する」

コン内官がプレスルームを出ていくと、ずっと対峙していた記者は膝から崩れ、座り込んでしまった。
それほどコン内官から発せられる怒りのオーラが、凄かったのだ。
プレスルームにいた記者たちは、その記者の肩を叩いて出ていった。
最後に残った記者に、手を貸してもらい、やっと立ち上がった。

「大丈夫か?」
「はい、お手数おかけしました」
「よく頑張って聞いたな。サンキュ。だがな、記者を続けたいなら気を付けろ」
「えっ!?」
「例え事実であろうと、報道一つで宮は簡単に崩壊する。国民の希望であり、誇りであることが宮の存在意義だからな。だから自分の身が可愛ければ、安易な報道は決してするな。先輩記者からの忠告だ」
「・・・はい」
「それから、『スアムの姫君』にも手を出すな」
「えっ!?」
「彼女は宮だけじゃない。大企業の御曹司たちや元大物政治家たちが、全力で守っている。先日も大手の敏腕記者が、御曹司の逆鱗に触れたようで南米に飛ばされた。俺らのちっせぇ出版社なら、一瞬で記事ごと捻り潰される」
「!!!」
「でもな、お前さんが聞いてくれたお陰で、色々分かった。礼を言う」
「何がですか?」
「なぜ、『スアムの姫君』を大物たちが必死で守って、今まで隠してたかだ。その姫君が、この時期に表舞台に出てきた。そしてコン内官さまの話では、しばらく疎遠になっていた家族と、今は家族ぐるみのお付き合いをされている。そうなったら、ビンゴだろ?俺たちは、ジッとその時期を待ってればいいだけだ」
「はぁ・・・」
「ここまで言って、まだ分かんねぇか?・・・お前、記者辞めて事務に回れ。その方が会社の為だ」
「そんな・・・」
「このままじゃ、お前は絶対に禁忌に触れるぞ。冗談じゃないから、信じられないなら会社に戻って上司に聞け!じゃあな」

先輩記者は、若い熱血記者をその場に残して帰って行った。
若い記者は社に戻ると、上司に会見の報告と先程の先輩記者の話をした。
上司は、みるみる顔色を変えて、その若手記者を雑用係に戻してしまった。

「そんな~~(泣)、編集長~~」
「お前は会社を潰す気か!?熱心で見込みがあると思ってたが、頭の回転が悪いただの無謀な奴だったとは・・・もうすでにお前は、要注意人物としてイエローカードが出てるだろう。御曹司たちが、赤札を張ったら最後、お前は国を捨てないと生きていけなくなるぞ。馘にならないだけありがたく思え!」
「えっ、え!?」
「神話、ソンヒョン、ソングループ、そしてスアム・・・バカな財閥や財団とは一線を引く。健全且つ強大だ。この世界で生きていきたいなら、もっと勉強をしろ!」

数年後、この若いジャーナリストは、皇太子妃の父親とは知らずに出会い、記者達が恐れる御曹司たちや皇族と顔馴染になる。
だが、あまりにも世間のイメージと違い過ぎ、記事にすればバッシング間違いなしの取材する価値なしの集団だと知った。


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