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Channel: ゆうちゃんの日記
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短編 前篇

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シンが朝の挨拶に向かうため私室を出ると、固い顔をしたコン内官一人だけが待っていた。
シンはコン内官に声をかけることなく東宮殿を出ようとすると、背後からコン内官が声をかけてきた。

「殿下、朝の挨拶は無用。しばらく東宮殿以外の楼閣に立ち入ることを禁じると皇太后さまが仰せでございます」
「えっ!?」
「では私は所用がございますので、これで失礼いたします」
「ちょっと待ってくれ。皇太后さまは、何にお怒りなのだ?俺には身に覚えがないんだが・・・」
「・・・失礼ながら、申し上げさせていただきます。殿下のその無関心さだと思われます」
「は?」
「本日、登校されればご理解できると思います。では、失礼いたします」

シンが訳も分からず呆然と立っていると、今度は背後からチェ尚宮が声をかけた。

「殿下、いつもより早いですが、お食事になさってはいかがですか?」
「あっ、ああ・・・」

気も漫ろに食事を済ますと、シンは自分の預かり知らぬところで学校で何が起こっているのか気になった。
しかし皇太后やコン内官の態度から、決して自分にとって良いことではない事は確かだった。

(ホント、何があったんだ?)

複雑な想いを抱えたまま学校に向かうと、校舎前でイン達が女生徒と睨みあっていた。
シンが公用車から降りると、女生徒の1人がシンに向かってきた。

「あんた、それでも皇太子?宮を潰したいわけ?」
「えっ!?ちょっと話が分からない。君って・・・いつも一緒にいる子だよな?入学してすぐに一度話した・・・」
「そうよ!あの子の扱い方を教えてもらったわ。なのに何で殿下の友人と恋人は、あの子を目の敵にするわけ?今までどれだけ嫌がらせ受けてたか・・・挙句に怪我までさせて」
「えっ!?怪我って・・・一体、どんな怪我を負わせたんだ?」
「全身打撲と左腕の骨折よ。利き腕は何とか無事だったけど、完全に犯罪の域だし・・・殿下が絡んでるから、警察にも届けられないんだけど?」
「それは、どういう・・・」
「さっき謝罪を求めたら、『庶民が偉そうにするな。俺たちは、皇太子のご学友だぞ』ですって・・・皇太子のご学友って、どれだけ偉いのよ!?皇族も何様な訳?」

驚いてイン達を見ると、その背後にある玄関扉に寄りかかるようにして、騒動を見物している一人の人影が目に入った。
シンが自分の存在に気づいたのを察したその人物は、静かに首を横に振って、知らぬふりをするように合図してきた。

「はぁ、そういう事か・・・もうすでに宮には報告が上がっているようだ。皇太后さまは大変お怒りで、宮は今朝から対処に入っている感じだった。俺は、完全に蚊帳の外だったがな」
「もう一つ言わせてもらうけど、女の見る目が無さ過ぎ!惚れたなら、せめて躾はしっかりしなさいよ。周りに迷惑を掛けるんじゃない!!」
「ちょっと待ってくれ!話の脈絡が全然掴めないんだが・・・確かにアイツは、君や美術科の生徒達には迷惑を掛けてると思う。でも俺が知っているアイツは、食い物に目がなくて明るくて良い子だったぞ?君に言うのは恥ずかしいが、女を見る目はある方だと思ってる。それに見守ってはいるが、付き合ってはいないぞ。アイツ、俺のこと覚えてないのかもな」
「「「!!!」」」
「・・・ねぇ、一つ確認させてもらっても良いかしら?ミン・ヒョリンは、殿下の秘密の恋人なんじゃないの?」
「はぁ!?ヒョリンは、そこにいるカン・インの女だ。俺には一切関係ないぞ。第一、話したこともない!!」
「「「え~~~!!!」」」
「ギョン、ファン、煩い!ひょっとしてお前たちまで、誤解してるんじゃないだろうな?周りに無関心な俺でもインが毎日ヒョリンの送迎をしているのを知ってるぞ。それが何で俺の恋人になるんだ?」
「シンが、インに送迎を頼んだんじゃないのか?」
「何でインの女の事を態々インに頼まなきゃなんないんだ?お前達の頭、おかしいんじゃないか?」
「「「・・・・・」」」
「悪いけど、学校中があの性悪女が殿下の秘密の恋人だと思ってるわよ。だって自分で言い触らして、周りを見下しているもの」
「はぁ!?イン、どういう事なんだ?お前が連れてきた女が、なぜ俺の恋人なんだ?」
「それは・・・ヒョリンが・・・」
「嘘を吐いて、お前達は俺に確認することなくヒョリンの嘘を信じたという事だな。それから俺の名を騙っての暴行は、どういう事だ?俺を皇太子の座から引きずり降ろす謀反と捉えていいのか?」
「「「えっ!?」」」
「現在、宮には後継者は俺しかいない。すなわち李王朝は終焉を迎えることになる。お前達の目的は、この国を混乱に陥らせることなのか?」

シンの鋭い視線と言葉にイン達3人は、顔色を変えた。

「ギョン、なぜヒョリンの嘘を信じた?正直に話せ」
「だってお前の周りにいる女はヒョリンだけだったし、ヒョリンが呼び捨てにしても咎めなかったじゃないか」
「たったそれだけの事でか?確かにヒョリンだけだったが、お前達も一緒だったろうが!ホントお前達には呆れる」
「話聞いてて、俺たちの勘違いだった事は認める。でもぶっちゃけて言うけど、あのボーっとした庶民より家柄の良いヒョリンの方がシンには相応しいんじゃないか?」
「ホント愚かよね。家柄が良かったら、人を見下しても良いわけ?人を見下し暴力を振るう女が、皇太子に相応しいですって?頭おかしいんじゃないの?言っておくけど、あんた達御曹司が庶民、庶民と周りをバカにするから、女生徒はおろか男子生徒もあんた達に近づきたくなかったのよ。それだけあんた達は、嫌われてるって知らないの?ここまでおめでたい人達だとは思わなかったわ。あのねぇ・・・この国は皇族と王族以外は大統領も含めて全員庶民の筈なんだけど、ホント何を勘違いしてるのかしら。親が金持ちだから、身分も買えると思ってるわけ?ひょっとして殿下のご学友もお金で買ったの?」

女生徒の辛辣な言葉にイン、ギョン、ファンは言い返すこともできなかった。
すると背後から忍び笑いが聞こえたのでイン達が振りかえると、品の良い中年男性がこちらに向かって歩いてきた。

「クククッ・・・ガンヒョン、相変わらず鋭い切り口だね。惚れ惚れするよ。お前が男じゃないのが実に残念だ」
「大きなお世話です。で、今日はどうされたんですか?」
「うん、チェギョンの保護者代理。多忙な奴だから、電話一本で私に丸投げしてきたんだ。私の教育が悪いってな。と、言う事で・・・」

そういうと、その中年男性は、シンの腹にアッパーパンチを喰らわせた。

「「「シン!!」」」
「シン、痛いか?チェギョンはもっと痛かった筈ぞ。お前は自分の世界に入り過ぎて、周りを見てなさすぎだ。お前がもっとしっかりしていたら、チェギョンも怪我をせずにすんだし、このバカ達も犯罪者にならずに済んだんだ」
「伯父上・・・」
「「「!!!」」」

その時、高級車が校舎前に停まり、左腕を三角巾で吊ったチェギョンと30代の男性が降りてきた。

「チェギョン!あんた、登校してきてよかったの?」
「ガンヒョン、おはよう♪大丈夫、大丈夫。それよりやっと描けそうなの。だからオッパに連れてきてもらっちゃった。オッパ、ホントごめんね。どうもありがとう」
「帰りも迎えに来るから、電話してきて。僕が無理でも誰か絶対に迎えに来させるから電話してくるんだよ。待ってるから」
「チョンホ君、悪かったね。帰りは、チュンハに来させるから良いよ」
「あ、はい。大君殿下、お久しぶりでございます」
「うん、久しぶり。チェギョン、創作意欲が無くなる前にガンヒョンと教室に行っといで。校長には話をしておいたから、提出期限少し遅れても良いよ」
「げっ、アジョシ過保護過ぎ。でもありがとう。助かった。じゃ、行ってきま~す」

チェギョンとガンヒョンが校舎に入って行くと、チョンホと呼ばれた男性も頭を下げ、車に乗り込もうとした。

「チョンホ君、ちょっと待ってくれる?君に紹介したい子がいるんだ」
「へ?僕に紹介ですか?」
「ここの3人が、君の娘と一緒にチェギョンを怪我させた子たち」
「は?大君殿下、冗談は止してください。僕の娘、まだ5歳ですよ」
「「「えっ!?」」」
「おい愚か者たち、紹介しよう。彼はミン交通公社社長のミン・ジョンホ。どこから見てもミン・ヒョリンの父親には見えないんだが?」
「えっ、まさかヒョリンが、チェギョンに暴行を働いたんですか?」
「そうみたいだね。因みにミン交通公社の社長令嬢だと偽って、生徒たちを見下してたようだけど?どうする?」
「・・・勿論、母親を解雇します。すいません、監督不行き届きです。知らなかったとはいえ、家政婦の娘が顧問のお嬢様に怪我を負わせるとは申し訳なくて、顧問に会わせる顔がありません」
「うん、そうだろうね。先代亡き後、ミン交通公社を守り、君に引き継いだのはアイツだしね」
「・・・はい。あの顧問は今・・・」
「うん、俺もどこにいるか知らない。ただちょっと甥が絡んでるらしくって、アイツ、俺と母上に一任するってさ。悪いけど、解雇は良いけど追い出すのは少し待ってくれる?母親を行方知れずにするわけにいかないからね」
「・・・分かりました。ですが、娘は我が家に置いておきたくありません」
「うん、分かってる。今、チュンハが拘束してるから安心して。絶対に家には帰さないから」
「ありがとうございます。では僕は一度自宅に戻って、母に話して、ミン・ソヨンを解雇してもらいます。大君殿下、後日また謝罪に伺いますと顧問にお伝えください」
「分かった。事故を起こさないよう気をつけて帰るんだよ」

ミン社長が乗った高級車が校門を出るのを見送ると、シンの伯父は口を開いた。

「シン、校長には話を通した。場所を変えよう。シンの翊衛士君達、悪いけど、このボンクラが逃げないよう連れてきて」
「「「御意」」」

孝烈大君殿下に付いていくシンの後を付いて歩くイン達3人は、監獄へ赴くような心境だった。








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