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シン・チェギョンという許嫁 第3話

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自分しか座っていない会議室で落ち着かなかったシンは、場所の移動を提案した。

「では、特別室に移動しましょう」

イ弁護士の後を付いて行く形で、シン達一行は特別室なる部屋に向かう事になった。

「イ弁護士、学校に特別室があるのですか?」
「はい。生徒立ち入り禁止区域にございます。本来は殿下の為に学校が用意した部屋ですが、宮に許可を取ってチェギョンの避難用に使わせていただいています。休憩用ではなく、うちの娘が危険だと感じた時に使っているようです」
「意味が分からない。どういう事です?」
「明るくて優しい子ですからね、絆される男子生徒が多いようで、娘一人では守りきれないと判断した場合、避難しているようです。着きました、ここです」

シン達が部屋に入ると、見知らぬ男性3人と知的な女生徒がいた。

「「「親父!」」父さん!?」
「殿下、ご紹介しましょう。ご友人達の父君です。ガンヒョン、接待すまなかったね」
「いいえ!私からは何も説明していないわ。ああ、そうだ。チェギョン、早朝に気がついたわ。目覚めた瞬間、『お腹すいた』って言ってたからもう大丈夫だと思う。でも念の為、頭の再検査と経過観察でもう一日、入院するらしいわ」
「分かった。ガンヒョン、寝てないんだろう。今日は早く家に帰って休めよ」
「ええ、そうするわ。では、私はお先に失礼させていただきます」

ガンヒョンが出ていくと、イ弁護士はシンや御曹司達に座るように促した。

「イ弁護士、なぜ3人の父親を呼び出したのですか?」
「殿下の下された処分を親に誤魔化さないようにです。親御さんも息子のしでかした不始末をキチンと理解する必要がありますしね」
「そうですか・・・まずはカン・イン、さっきも話したが、俺はお前を理解できない。昨日、報告書を読んだよ。お前が多額の金品を与えた所為で、ヒョリンは変な希望を持ったんじゃないのか?ヒョリンの素性を知っているお前だけが、諌め、止める事はできたんだ。なのに煽った。その結果が、殺人未遂だ」
「シン・・・ごめん」
「カン・インのお父さん、僕はお金を持ったことがないので金銭感覚はないのですが、インの使い方は常軌を逸しているように思います。インが貢いでいる女生徒を僕の恋人だとギョンと振れ回った所為で、全校生徒がその女生徒が僕の恋人だと思っているようです。実際、一度も話した事はないのにです」
「「えっ!?」」
「まぁ、その女生徒がイン達に嘘を吐いていたようですが、僕に確認することなく言いふらした所為で、僕は昨日宮で窮地に陥りました。そして昨日、その女生徒は、宮所縁の女生徒を階段から突き落とし、先程宮内警察に逮捕・拘束されました。犯行理由は、その女生徒より自分の方が僕には相応しいと言いました。ここまで犯人を増長させたのは、間違いなくカン・インにも原因があると思います。イン、親の力を借りずに一からやり直せ。国外追放5年、渡航費用、1年目の授業料だけは認めるが、それ以外の援助は一切受けるな。大学を卒業したら、海兵隊に入隊。除隊後も縁故を頼るな。父親の会社に入社したいなら、それは構わない。但し、親の力は借りず、一般人に混じって入社試験を受けろ」
「・・・はい」
「カン社長、こちらがご子息がミン・ヒョリンに貢いでいた一覧表です。宮で把握できなかったものもあると思います。これを見て反省し、殿下の処分に逆らうような真似はしないようにしてください。宮は、あなた方を監視します」

見せられた一覧表を見て、インの父親は絶句してしまった。

「はい、大変申し訳ありませんでした」
「次は、チャン・ギョン。俺は、お前を若干空気は読めないが、明るくて憎めない奴だと思っていた。だから報告書を読んで愕然とした。お前を傍に置いていた事を今猛烈に後悔している」
「シン・・・」
「俺は学校の休み時間しか自分の時間がない。だから雑音を遮断するつもりで、イヤホンをして好きな本や雑誌を読んでいた。その横で、お前はクラスメートや他科の生徒達を庶民や貧乏人と愚弄していたそうだな」
「ゴメン」
「お前、俺の立場を分かっているのか?俺は、国民の手本になるよう日々精進してきたつもりだ。そんな俺の横で、国民をバカにするとはどういうつもりだ?会議室でも話が出たように俺の失脚を狙う輩はいる。まさか友人だと思ってた奴が足元を掬う行為をしているとは思わなかったよ」
「殿下、私からも一言。チャン社長、『庶民とバカにするが、あんたも親が金を持っているだけで庶民だ。偉そうにするな』と言った生徒に『父親に言って、お前の父親を失業させてやる』と脅したそうです」
「えっ!?」
「その生徒は『どうぞご自由に。バカ息子の我が儘を聞き入れる財閥って国民から嫌われるわよ』と言ったそうですが、ご子息はおそらく何度もそういう脅しをして、生徒たちに圧力を掛けていたと思われます。まさか本当に圧力を掛けて罷免したりしていないでしょうね?」
「い、いいえ、今初めて聞きました。ギョン、今の話本当なのか?」
「親父・・・」
「言い逃れできないだろ?さっき出ていった娘に言われたんだものな」
「「「!!!」」」
「私は宮の顧問弁護士で会社勤めではありませんし、私の事はお気になさらずに・・・因みに今の事は宮の報告書には挙げていません。ご安心を」
「チャン・ギョン、やっぱり友人は無理だ。隣のクラスに移動しろ。転校は許さない。私生児の娘をお姫様のように崇めてたバカ御曹司と、今度は周りからバカにされろ。で、高校卒業後、空軍に入隊しろ。イ弁護士、クラス替えの手続きお願いします」
「かしこまりました」
「ギョンのお父さん、将来ギョンに跡を継がせるおつもりなら今のままでは無理だと思います。退役後、大学にも行くと思いますが、イン同様自立させてください。卒業後もすぐに自社に入社させずに信頼のおける方に預け、徹底的に扱いてもらう事を命令します。これは、ギョンの為でも会社で働く社員達の為でもあります。必ず守ってください」
「はい、必ず。殿下、申し訳ありませんでした」
「最後にリュ・ファン。お前は4人の中で一番洞察力がある筈なのに・・・気づかなかったのか、俺と同じで無関心だったのか、なぜ2人を止めなかったんだ?」
「ゴメン。正直に言うと、ヒョリンは嫌いだったし興味もなかった。ただインとギョンが信じてるから、それを信じた。ついでに言うと、シンって趣味悪いなと思ってた。ギョンの暴言にしても『馬鹿なヤツ』とは思ったけど、注意しようとは思わなかった。一言言うと、倍以上に返って来て面倒な奴だし・・・仲違いすれば、将来会社レベルで拗れる可能性もある。ギョンはしつこいしな。だから何も言えなかった。でもシンの立場を考えたら、しっかりと諌めるべきだったと今は反省している。本当にゴメン」
「・・・ファン、俺はお前を咎められそうにない。ギョンのしつこさは俺も知っている。俺は関わりたくない時はイヤホンをして無視してた。俺がもっとお前達に注意していれば、ここまで事が大きくなることはなかったのかもな。あまりにも無関心すぎた」
「殿下、どうされますか?」
「・・・ファン、大学は奨学金を貰って己の力で行け!家から通っても良いが、自転車で通うか、公共の交通機関を利用しろ。当然、小遣いもアルバイトして稼げ!これから嫌な事やダメな事は、しっかり口にできるようになれ。ファンのお父さん、ファンをご自分の会社に入社させる場合、特別待遇ではなく平社員から始めさせてください。僕もですが、周りから揉まれた方が、きっとファンは成長すると思います」
「殿下、ありがとうございます」

ファンの父親に頭を下げられ、処分を言い渡したシンは戸惑ってしまった。

「リュ社長、頭をお上げください。殿下が恐縮しておられます」
「ファンのお父さん、ファンの洞察力には一目を置いています。僕に鋭い指摘もしてくれることもありました。無関心はお互い様です。生涯、2人で監視しあって切磋琢磨できたらと思います」
「では、カン・イン君、チャン・ギョン君、これからのことを家に帰ってご両親と相談しなさい。学校と宮には、私から報告をしておきます。カン社長、チャン社長、リュ社長、ご足労おかけしました。これにて解散とさせていただきます。お疲れさまでした」

5人が部屋を出ていくと、翊衛士が見送りの為か、一緒に出ていった。
あとに残ったのは、シンとファン、それからイ弁護士だった。

「殿下、お疲れさまでした」
「いえ・・・先程小耳に挿んだのですが、意識が戻ったようですね」
「ええ、そのようです。本当に良かったです」
「シン、シン・チェギョンさんが許嫁って本当なの?」
「ああ、そのようだ。昨日、俺も知ったところで詳しくは何も分からないんだ」
「・・・殿下、昨日の話では、チェギョンをもう宮から解放しようという流れだった筈です。どうかもうそっとしてあげてくれませんか?」
「イ弁護士、では僕は彼女の為にしたくもない婚姻をしろと仰っているのですか?」
「・・・ハッキリ言えばそうです。民間人なのに殿下以上に窮屈な生活をしてきた子です。チェギョンに何かある度に調査すれば、必ず黒幕は王族でした。まだ解決していない事件もあります。義務で婚姻する殿下にチェギョンを王族から守れますか?」
「・・・なら、なぜ僕に許嫁の存在を明かしたのですか?」
「それは、殿下に皇族としての自覚を持っていただきたかったからです。殿下が適齢期になった今、王族の暴走は留まるところを知りません。今のままなら、宮の実権を握ろうとする王族の娘と婚姻させられますよ」
「「えっ!?」」
「陛下は、会話で平和的解決を望まれる方です。それを良いことに欲深い王族は、陛下に頭を下げながら舌を出している。その証拠に何度も陛下が言い聞かせているにも拘らず、チェギョンの危険は増すばかりです。いい加減、陛下に方向転換をしていただこうと話をすれば、チェギョンを解放してあげようなどと頓珍漢な方向に行ってしまう。代々宮に仕えてきた家ですが、正直うんざりしています。そう思っているのは、私だけではないと思いますよ」
「・・・僕に動けと言ってるんですね」
「自分の人生は、自分で切り開けと申し上げています」
「クククッ、流石、イ・ガンヒョン女史のお父さんって感じですね」
「リュ・ファン君は、娘のことをご存じでしたか・・・」
「シンとイン、ギョンの3人以外の生徒は、全員知っていると思いますよ。イ・ガンヒョンとシン・チェギョンは迷コンビですからね」
「君のことは、娘から聞いています。チェギョンに堂々と隠し撮りさせてほしいと言ったらしいですね。宣言して隠し撮りって・・・と、娘は苦笑しながら、害はなさそうだから放置するって言ってましたよ」
「えっ!?」

シンが驚いている横で、ファンは照れ笑いしていた。

「いつも皆に囲まれながら良い顔で笑ってるのに ふとした瞬間憂いを帯びた顔で遠くを見ているんです。それが印象的で、カメラ小僧の血が騒いでしまいました」
「・・・そうでしたか。周りに気を遣いすぎるような子ですから、気づきませんでした。もっとガンヒョンに寄り添うように言いましょう。ありがとうございます」
「イ弁護士、最後に一つだけ聞かせてほしい。先帝が彼女を許嫁にした経緯を教えてほしい」
「・・・その頃は、私はまだ新人弁護士で宮担当ではなかったので詳しい話は知りません。ただシン家と知り合った時に 先帝と殿下が縁を望まれた所為で苦労している一家だと教えてくれました」
「「えっ!?」」
「突然、引っ越し業者が来て引っ越した先がシン家の隣で、父はよくガンヒョンを連れてシン家に遊びに行っていました。当時のチェギョンは、交通事故の影響で自分の名前も分からないようでした」
「「!!!」」
「初めて私に会った時、私と約束した人か?と聞いてきました。私が、違うけど誰かと約束したの?と問いかけると、何も思い出せないけど誰かと大事な約束をしたことだけは覚えてる。約束した人、約束破って怒ってるかなぁと答えました。父にその話をすると、おそらく殿下だろうと言っていました」
「・・・俺?」
「ええ。昔、殿下が皇太孫になられた後、女の子と遊んだ覚えはないですか?」

俯いて記憶を辿っていたシンは、いきなり顔を上げると弁護士の顔を凝視した。

「思い出されましたか?」
「は・い・・・」




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