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Channel: ゆうちゃんの日記
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四獣神 第4話

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ファンを伴って宮に戻ったシンは、コン内官を呼び出した。

「こいつを翊衛士長に引き渡せ。おい、翊衛士長に知っている事を全て話せ」
「はい、殿下。申し訳ありませんでした」
「コン内官、頼む。それからソ尚宮の携帯の通信記録を調べろ。あと伯父上が存命中に東宮殿で従事していた女官全員、身辺を調べてほしい」
「・・・かしこまりました」
「それから皇太后さまに至急お会いしたい。今、どこにいらっしゃる?」
「只今の時間でしたら、皇后さまと公務の打ち合わせで正殿にいらっしゃると思います」
「着替えたら、ファンと一緒に会いに行くと伝えてくれ」
「・・・かしこまりました」

コン内官が下がると、ファンはにわかに緊張し出した。

「何、緊張してるんだよ?皇太后さまは、話の分かる朗らかなお祖母さまだ。緊張するな」
「うん、分かってるんだけど・・・それよりチェギョンの忘れ物、どうするわけ?」
「陛下の傍に玄武がいるんだ。多分、酒好きだろうから渡してやろうと思って・・・さっき青龍が美味しそうに飲んでるの見たんだ」
「へぇ~。僕も見てみたいな」
「夢の中で玄武が、『世界は果てしなく広い。もっと心と目を開いて、周りをよく見ろ』って言ったんだよな。その通りだと思ったよ」

しみじみしていると、全ての手筈を整えたコン内官が、シンとファンを迎えに来た。
シンは、東宮殿を出た所にいた翊衛士にキム翊衛士が戻ったらすぐに自分の所に来るように命令した。

「殿下、一体何があったのですか?」
「それを今から皇太后さまに報告しに行くんだ。コン内官も付いてきてくれ」
「・・・御意」

正殿の談話室前で、コン内官はシンとファンが来た事をふれ、談話室の扉を開いた。
シンは、ファンを促して中に入ると、皇太后の膝に乗っている玄武を見て固まってしまった。

「太子、朝から様子がおかしいが、一体どうしたのだ?とりあえず、友と一緒にお掛けなさい」
「はい。ファン、座ろう」

部屋の中には皇太后と皇后、そして最高尚宮がいて、そこにシンとファンとコン内官の3人が加わり、6名になった。

「皇太后さま、皇后さま、信じていただけないかもしれませんが、どうか僕の話を聞いてください」

そう前置きをしてからシンは、昨夜の話から学校の一連の話を全て話した。
全て話し終えると、皇后とコン内官は困惑した顔をしていたが、皇太后はニッコリと笑っていた。

「私は信じますよ。チョンや、そなたも信じるであろう?」
「はい、皇太后さま。何やらお懐かしゅうございます」
「先帝から存在を聞いていたこともあったが、先帝は酒を飲まれる時は盃を5つ、酒も酒の肴も一人では消費出来ぬ程用意させ、人払いをされてのぉ。しばらくすれば、先帝ではない話声や笑い声が聞こえるのじゃ。それは楽しそうにな」
「そうだったのですか・・・」
「それにチェヨン殿が連れて来ていたチェギョンが、誰もおらぬのに楽しそうに話しながら遊んでおったのも見ておるしの。チェギョンは、相変わらず元気にしておるのか?」
「はい、皇太后さま。僕は知らなかったのですが、芸校の自慢の生徒だそうです。彼女と話すと幸せになるとか、色々な噂があるようです」
『孫、お前が持っている袋の中身を早く出さぬか。先程からプンプン匂ってきておるわ』
「あっ、すいません。今すぐ出します」

シンは、慌てて持ってきた紙袋からマッコリを出して椀に注いで、フエが入っているタッパの蓋も開けた。

「太子、もしや玄武がおるのか?」
「はい。ずっと皇太后さまの膝の上に乗っておられました」
『儂の話はいいから、早くトラブルの方を話しあえ』
「あ、はい。今、ソ尚宮の携帯の通信記録を調べさせています。できれば、伯母上も調べたいのですが・・・おそらくユルを皇位に就けようとしている王族たちに繋がると思います」
「・・・コン内官、ファヨンの事を徹底的に調べなさい」
「はい、皇太后さま」
『孫、ミンがいつも出してくれる酒を3本程持ってこい。それからソ尚宮をここに呼べ。儂が話そう』
「えっ・・・あの皇后さま、いつもお酒を供えておられるのですか?」
「ええ、先程話が出たミン製薬に勤めている兄が、『陛下の為に枕元に酒を供えろ』と連絡してきてから備えている。それがどうかしたか?」
「その酒を3本ほど持ってこいとのことです。最高尚宮、頼んでくれないか?」
「かしこまりました」
「クスッ、青龍から伝言です。『玄武は質より量だ。椀かコップで出してやれ』だそうです。お猪口で出されてたのですか?」
『青の奴め・・・ついでに酒の肴は、葉物でよい。たまにササミか白身魚の刺身を出してくれると嬉しいと伝えてくれ。それからヒョンが飲んでいる茶色や赤の酒も飲みたい』
「ハァ、神様が催促するとは思いませんでしたよ。皇后さま、酒の肴は葉物が良いそうです。でもたまにササミか白身魚の刺身を頼むだそうです。あと陛下が飲んでおられる茶色や赤の酒も飲みたいそうです」
「クスッ、ブランデーとワインですね。おつまみは、今日から用意させましょう」
「酒を3本飲んだら、玄武がソ尚宮に話をしてくれるそうです。こちらは、玄武に任せましょう。あとチョン王族の件ですが、原因が皇太子妃の座と聞き、正直王族の娘は嫌だと思いました。僕には、もう決まった相手はいるのでしょうか?」
「スは、不本意だが自分で相手を決めた。ヒョンは本の虫で奥手故、先帝がミンを連れてきて引き合わせた」
『少し違うぞ。もしヒョンがスの阿呆と同じような女を連れてきたら、朱だけでなく我ら三神も守護神を降りるとソンジョを脅したのだ。そんな時、兄のユ・ジンモと話すミンを朱が見染めてなソンジョに薦めたんだ。パクに話してやれ』
「・・・無理です!皇太后さま、朱雀が皇后さまを見染めて、先帝に薦めたそうです」
「///まっ・・・」
「ほほほ、そうであったか。だから太子は自分で見つけてきてもよし、自分の見る目に自信がないなら私達が探してもいい。好きにすれば良い。ただしヒョンの体調があまり良くない。考える時間は少ないと思ってほしい」
「・・・分かりました」

女官が焼酎の瓶を3本持ってくると、シンが椀に注ぐとみるみる酒が減っていき、皇后やファンは唖然としていた。
また皇后が、ファンの目的でもあるシン家の訪問の為、迎えに来てもらうよう兄に電話を掛けてくれた。
皇太后が先帝の思い出話していると、先触れがされソ尚宮が入ってきた。その瞬間、部屋の空気が変わった。

『ソ・シネ、お前を呼んだのは私だ。我は玄武。この愚か者めが!』

ソ尚宮がキョロキョロし、ファンや皇后が驚いている姿を見て、シンは全員に玄武の声が聞こえているのが分かった。

『我はここじゃ、テーブルの上を見てみぃ・・・これで我を信じただろう、シネ』

(椀に入った酒が減っていくのを見せて、存在をアピールするって・・・考えたなぁ)

『スの阿呆の乳母であったお前が、スの息子に皇位を就かせたい気持ちは分からぬでもない。だがな、あの女狐に協力するとは言語道断。許さぬ。大体、スがあの女狐と婚姻を決めた時点で、宮を守る四神の中ではスの子どもに皇位継承の芽はなかったのだ』
「「「!!!」」」
『今だから言うが、スが皇帝に就くことがなく命を落とすことも予想できた。だから我らは、ソンジョにスの婚姻を執拗に反対した。人の子では、リュ・ジュンスだけがスをあの女狐は駄目だと説得していた。だがスは怒って、ジュンスを学友から外した。それを知ったソンジョが、『四神も反対しておる。お前の守護神朱雀が反対しておるのだ。それでもファヨンを娶るつもりか?』と諭したのに、阿呆は朱雀より女狐を取りよった。で、朱雀はスの守護を下り、宮を去った。そこからが大変だった。体が丈夫でないヒョンに儂が付き、体調管理をするようになった為、白虎と青龍が宮を守るようになった。四神で守っていたものが、突然半分に減ったわけだ。綻びもできるわい。話は戻すが、我らの守護は要らぬと言ったスの息子は、守護神を決める満一歳の行事は行っていない。我らが参加しなかったからな。だからスの息子が皇位に就けば、我らは宮を離れるし、宮は終焉を迎える。ソ・シネ、理解できたかな?』

あまりにも衝撃的な話で、誰も声を出すことができなかった。

『予想通りというか、毒々しい女狐の気を浴び続けたスは、徐々に体調を崩し始めた。慌てたソンジョは、スに朱雀を祀ってある祠に毎日参拝するよう厳命し、朱雀に戻ってくるよう説得しだした。反省したのかスは、女狐と息子を伴って毎日祠に通っておった。自分の体が動かぬ時は、女狐と息子に行かせた。だが女狐は、参ることなく祠の前で供物の酒を飲んでいるだけだった。ソンジョの説得で、朱雀は宮を覗きによく来ていたようだ。だが女狐の醜態を見て、朱雀は怒りで祠に火を付けた。そして事実を知ったスは、自ら車を運転し事故を起こしたわけだ。ソ・シネ、これがお前が溺愛したスの人生だ。もう己の過ちを素直に認め、知り得る全ての事をそこにおるチョンに話せ』
「・・・はい、玄武さま。申し訳ありませんでした」
『チョン、儂はお前を気にいっておる。パクが長年ここまで大らかでいられたのは、お前がいたからだ。長生きしておくれ』
「ありがとうございます、玄武さま。ではソ尚宮を別室に連れて参ります」

チョン最高尚宮がソ尚宮を連れて部屋を出ていくと、皆が大きく息を吐くと脱力した。

『・・・パク、お前の考えは分かったが、ソンジョの思惑とは違うと思うぞ。ソンジョは、宮は四神で守ってこそ栄えることを知っていた。基本、神は我が儘で自分勝手だ。特に血の気が多く乱暴者の白虎と人嫌いの青龍には、ソンジョも困っていた。だがチェギョンの前では、白虎は子猫のように振舞い、青龍にいたっては背に乗せて散歩までするのだ。チェヨンの家には、すでに朱雀が身を寄せていた。ソンジョは、チェギョンに宮の将来を託したと思うぞ。その証拠に白虎は、ソンジョの頼みで今はチェギョンを守護しておるわ。まぁ人の子の心は、我らには分からぬ。後は、宮の存続も含めて、そこにいるソンジョの孫次第だ。儂は、ヒョンの生きている限りは傍にいよう。それがソンジョとの約束だからな』

シンは、玄武の話に驚きはしたが、よく考えたら納得もできた。

『疲れた~!こんなに力を使ったのは、戦争に行った時以来かもしれん。これからは、伝えたいことは孫を通して話すからそのつもりでな。ところでミンの変わり者の兄が、迎えに来ると聞いた。孫、儂も連れていけ』
「・・・それは良いですけど、いい加減僕の事も名前で呼んでもらえませんか?」
『断わる。愚か者の名前を呼ぶなど、神の自尊心にかけても言えぬわ。名前を呼んでほしければ、早く一人前になって我らを認めさせよ。さすれば、いくらでも呼んでやるわ。ふぉふぉふぉ・・・』
「・・・・・」
「シン、玄武さまは何て仰ったの?教えてくれよ」
「知るか!!」

どうやら最後の言葉は、シン以外の人間には聞こえなかったようで、シンは内心ホッとしたのだった。

(さっき神は我が儘で自分勝手なものだと言ってたけど、性格悪すぎるだろ!!)




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