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Channel: ゆうちゃんの日記
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四獣神 第5話

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話し合いが終わったシンとファンは、東宮殿に戻った。当然、シンの頭の上には玄武が乗っていた。
東宮殿前にキム翊衛士が立っており、彼は無事両親を保護できたことを報告して、業務に戻っていった。
シンは、私室に入るとファンとコン内官を残して、人払いしてしまった。

「ファン、宮の醜い部分を見せてしまってすまない。だが、他言しないでくれ」
「僕も王族の端くれだよ。絶対に口外しない。約束する」
「サンキュ。コン内官も座ってくれ。お疲れ。驚いただろ?」
「先帝より話を聞いておりましたので、信じる事はできました。ですから、お声が聞こえた時は、驚きより感動が先でございました」
『コンは、相変わらず真面目よのぉ・・・』
「えっ、玄武さまでございますか?」
『青がミンに頼んでくれたのでな、儂も青に恩返ししよう。コン、青の祠に参ってくれて礼を言う。だが水は止めて、酒にしてやれ。あれでは力が出ぬわ』
「は、はい。お神酒ですね。賜りました」
「コン内官、マッコリに酒の肴には刺身な。好物らしい」
『コン、孫が嫁を娶るまではベッド横のチェストの上にでも供え、祠はたまに掃除する程度で良い。だが、嫁が来たら毎晩祠に供えろ。孫も青の前で睦みたくないだろうし、青も見たくはない筈じゃ。ふぉふぉふぉ』
「///なっ、何てことを言うんだ!このエロ亀ジジイ!!」
『照れるな、孫。ソンジョは、我らを一室に集め、大量の酒と肴を用意して、睦みあいおったぞ。儂らは酒が飲みたいため、ソンジョにもっと睦みあうよう勧めておったわい』
「先帝の夜の営みの話なんかするな!皇太后さまはまだご健在なんだぞ!想像したくねぇ~!!」
『妄想とは・・・孫、欲求不満か?若いのぉ、ふぉふぉふぉ』

ファンとコン内官は、思わず吹き出してしまった。

『そろそろ真面目な話をしようかの。青は、コンのお陰で祠が残っておる。儂も場所が良かったのか、辛うじて祠は残っておるし、ミンが酒を供えてくれておるから大丈夫だが、朱は己で祠を焼き払い、白の祠は朽ち果ててしもうた。祠のない朱と白は、もう宮には戻れぬ』
「「「えっ!?」」」
『人の子も家がなければ、引っ越しはできまい。神も同じだ。ましてや居心地の良い家があれば、誰も引っ越しはしたくない。チェヨンの家は最高だからな』
「・・・白虎と朱雀の祠を建てるよ」
『阿呆、チェヨンが建てた祠ぞ。ただの祠ではない。あのような祠はチェヨンしか建てられぬわ』

シンとファンは一般的な祠を思い浮かべ、コン内官は青龍の祠を思い浮かべたのだった。

(ただの祠じゃない祠って・・・駄目だ、凡人には分からない)



夕方5時半になって、やっと皇后の兄であるユ・ジンモが宮に現れた。
挨拶も程々にシンとファンがジンモの車に乗り込むと、車はすぐに動き始めた。

「改めましてでいいのかな?皇后さまの兄で、ユ・ジンモです。初めまして」
「伯父上なのですね?初めまして、イ・シンです」
「ちょっとシン、挨拶おかしくない?実の伯父さんのこと、今まで知らなかったの?」
「実家が病院を経営していて、お兄さんが継いでいるぐらいしか、皇后さまのプライベートは知らない。まさかお兄さんが2人いるとか知らなかった。実際、もう一人の伯父さんも記憶がない。多分、皇后さまも皇太子妃になってから、里帰りをしてないんじゃないか?」
「そ、そうなんだ・・・」
「俺は、長兄なのに医者にならずに家を飛び出したからね。勘当されてはいないけど、敷居が高すぎて、ミンの婚姻以降、実家に足を向けていないな。仕事柄、病院では弟や親父には会うけどな」
「あのミン・ヒョリンは、ミン製薬の社長と何か関係があったのでしょうか?それとシン・チェギョンさんが、ミン社長宅に行った事は知っているのですが、その後のことは何かご存じありませんか?」
「う~ん、関係があるにはあるが、血縁関係はない。社長宅で働いている家政婦さんの娘さんだった」
「「は?」」
「使用人用の離れに住んでて、母屋に立ち入ることがなかったから、俺もその娘の存在は知らなかったから驚いたよ。チェギョンには社長宅で会ったよ。俺には分からないが、離れから嫌な気が見えるってソンくんに連絡してたよ。ソンくんは別件で忙しそうだったから、ウォンが向かったんじゃないか?詳しくは、アパートに行けば分かるだろう」
「そうですか。お騒がせしました」
「あの、ユさん。僕は、リュ・ファンと言います。今日一日で、シン・チェギョンさんの家の話が何度も出てきたんですけど、一体どんな家なんでしょうか?普通じゃないですよね?」
「・・・ファン君だっけ?普通って何?」
「えっ!?」
「君は殿下の学友になるほどだから、セレブな家の子だと思う。そんな君でも殿下の思う普通の基準とは違うと思う。それにこの国には、家賃が君の小遣い以下の狭い一室で家族4人肩寄せ合って生活している人は大勢いる。そんな彼らの普通を君は想像できないだろ?自分の基準で物事を量ろうとするのは、傲慢というものだ」
「・・・すいません」
「いいや。自分の価値観とかけ離れたものは、認めるより排除しようとする方が楽だもんな。大半の奴がそうさ。でもそれじゃあ、世界が凝り固まって成長しない。もっと頭は柔軟にしないとね。世紀の大発明家は、大概変わり者と言われてるだろ?」

シンとファンは、とても大切な事を教えてもらったような気がした。

「説教くさくなっちまったけど、チェギョンにはあの生活が普通なわけ。まぁ君たちの知らなかった世界だと思うけどね。慣れれば、あんな楽しい家はないよ。俺なんか高2から出入りしだして30年だからね」
「えっ、では伯父上、ご結婚は?」
「独身。そりゃセックスは気持ちいいと思うけど、今の生活が楽しすぎて手放す気になれなかったよ。まぁ、それだけの女に出会わなかったってだけだな。中には、家庭を別の家で持っててたまに帰ってくる住人もいるけどね」

北漢山へ行く道から少し外れた場所で、シン達を乗せた車が止まった。
車を降りると、駐車場と道を隔てた所に趣のある洋館が見えた。

「北漢山の麓にこんな所があるとは思いませんでした。それにしても大きな屋敷ですね。これがアパートですか?」
「この道は私道なので、道に迷わない限り、気づくことはないでしょうね。俺もハイキングにきて迷って、嵌った。ははは・・・」
「・・・少し疑問なんですが、自転車であの学校に通うには遠すぎませんか?」
「あはは、確かに遠い。まぁ、色々秘密はあるけど、タイゾーが乗ってると電動付き自転車並みらしいです」
「タイゾー?」
「チェギョンがタイちゃんと呼んでる神さんですよ」
「「あっ!」」
「さぁ無駄話はここら辺にして、中を案内しましょう。ようこそ幸福荘へ」

門から敷地内に入った瞬間、シンとファンは絶句して立ちつくしてしまった。

「これは・・・」
「ふふふ・・・ここは、人と人じゃないモノが、楽しく暮らしている所です。タイゾーやピー助がいい例ですよ」
「シン、凄い・・・凄いよ」
「ファン?お前も見えるのか?」
「敷地内はもう異空間のようで、俺やファン君のような力がない人間でも見えます。また門に強い結界が張ってあって悪霊などは入れない。弱いモノには楽園らしいです」

(こんな世界があったなんて・・・きっと言っても誰も信じないだろうな。自分自身がまだ夢の中にいる気分だもんな。でもあのシン・チェギョンには、これが日常ってか!?)


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