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Channel: ゆうちゃんの日記
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選択 第7話

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チェギョンは、皇后の腕の中で泣き疲れて眠っていってしまった。
 
「寝てしまいましたな。皇后さま、寝てしまえば私でも扱えます。どうぞチェギョンをこちらに」
「いいえ、お構いなく」
 
皇后はそう言うと、チェギョンに膝枕をしてやり、ハン尚宮が持ってきたブランケットを掛けてやった。
 
「皇后さま、ありがとうございます」
「最長老殿、チェギョンとはどういった知り合いなのですか?」
「・・・殿下、前にお会いした時、儂はあなたは恵まれていると言いました。殿下は5歳から一人でお暮しだが、陛下や皇后さまに抱きしめてもらった記憶はあるはずです。違いますか?」
 
シンは、最長老の問いかけにコクンと頷いた。
 
「チェギョンは、両親に手を繋いでもらった記憶もありません。小さい頃の両親の記憶は、薄気味悪い子だと思われていた事だけです」
「「!!!」」
「チェギョンは、先帝の親友だったシン・チェヨンの孫です。私は、先帝に彼を紹介してもらいました。チェギョンの祖父は温厚で温かい人間で、誰からも好かれる奴でした。だから仕事で行き詰ったり疲れると、友人たちは皆彼の家に癒されに行ったものです。本当に温厚な彼でしたが、生涯にたった一度だけ激怒した事があります。その際、息子夫婦と縁を切り、チェギョンを引き取りました」
「勘当されたのですか?」
「・・・チェヨンの愛情を一身に受けて、チェギョンはいつもニコニコ笑っていました。ですが、幼稚園で虐めに遭った事で他人の悪意に敏感になり、人を寄せ付けようとしなくなりました。儂達の想像以上に子供の世界は残酷だったようです」
 
シンは、その言葉に思わず納得してしまった。
 
(幼稚園児なら親の言う事をそのまま信じ、悪気なく何でも口にするだろうな・・・)
 
「・・・チェヨンが亡くなったと聞いた息子夫婦がチェギョンを迎えに来た時、チェギョンは決して首を縦に振ろうとしませんでした。『成長して言葉を覚えた分、昔以上に気味が悪くなっていると思う。それでもいいのか?』と両親に聞いていました」
「・・・可哀想に」
「息子は、父親のチェヨンの気持ちも妻の気持ちも理解でき、板挟み状態だったようです。ですが、チェギョンに会えなくなってすごく後悔したようです。ですから、チェヨンの家の近くに住み、少しずつ蟠りを無くそうと努力しました。その甲斐あって母親とも話をするようになり、チェギョンはチェヨンの家と息子夫婦の家と半々の生活をしています」
「良かった・・・」
「・・・皇后さま、チェギョンは両親と暮らし始めても完全には心を許してはいません。儂が知る限り、大人の女性に抱きしめられたのは初めてだと思います。だから嬉しくて、あんなに泣いたのでしょう」
「えっ!?皇太后さまもないのですか?」
「ええ・・・きっと私の中にある同情や憐みを感じるのでしょう。たまに手を握らせてくれるだけです」
 
皇后とシンは、皇后の膝枕で幸せそうに寝ているチェギョンに目を落とした。
 
「幸せそうに寝ていますね。最長老殿、きっとチェギョンの周りには良い方が多いのでしょうね。捻くれてもおかしくない生い立ちなのに真っ直ぐに育って、こんなにも優しい心をもっているのですから・・・」
「コホン・・・皇后さま、この子を見守ってきたメンバーは全員癖のある者ばかりでして・・・昔は天使でしたが、今は小悪魔ですな。たまに黒い尻尾が見えます。あはは・・・」
「・・・では最長老殿、本題に入りましょうか?今日、チェギョンを宮に連れて来た目的は、先程の謁見をぶち壊す為だけなのですか?」
「いいえ、皇后さま。本日の王族会議に出席させ、困った王族たちを一掃します」
「「!!!」」
「先程のチェギョンの言葉で分かるように 王族たちは宮の中にスパイを放っています。今、最高尚宮が対処しているので、夕方には全て判明するでしょう」
「・・・この事でチェギョンの身が危なくなることはないのですか?」
「チェギョンには、優秀なSPが付いています。チェギョンに害をなそう者は、すぐに闇に葬られるでしょう」
「「えっ!?」」
「『死期が迫った今、自分の心残りが心を閉ざしてしまった殿下であるようにチェヨンもきっとチェギョンの事が一番の心残りになるだろう。だから友情の証として、チェヨンの亡き後は宮がチェギョンを守る。チェギョンに害をなす者は、法度に則り、死もしくは同等の罰を与えよ』 これが先帝の最後の勅命であり、遺言です」
 
シンと皇后は驚いて、再びチェギョンの寝顔に目を落とした。
 
「本日の王族会議で、チェギョンに王族たちが信頼できるかどうか一人一人判別してもらおうと思っています。チェギョンは、間違いなく皇后さまのお心の内を理解してます。これで、皇后さまの願いが叶うでしょう」
「私の為に・・・」
「殿下、申し訳ありませんが、チェギョンを起こしますので、東宮殿に案内してもらえませんか?」
「えっ!?それは、構いませんが・・・」
「宮にスパイがいると判明した今、東宮殿にも必ずいるはずです。チェギョンが何かしら発見してくれるでしょう。コン内官も付いていっておくれ」
「・・・かしこまりました」
 
最長老に起こされたチェギョンは、シンと一緒に正殿居間を出ていった。
 
「・・・最長老殿、本当の事を話してください。先帝の遺言は、それだけだったのでしょうか?」
「いいえ。先帝は、宮を泥の池のようだとよく零されていました。チェギョンなら泥の池を浄化し、綺麗に咲き続ける事ができるだろうと仰せでした」
「では・・・」
「はい、勅命には続きがございました。『シン・チェヨンの孫、シン・チェギョンを皇太子イ・シンの許嫁とし、将来の国母とする。最長老たちは、チェギョンを国母の器に責任もって教育せよ』でございます」
「やはり、そうなのですね・・・分かりました。では、これからは私がチェギョンを教育することにします。皇太后さま、よろしいでしょうか?」
「構いません。ですが、チェギョンにどう言えばいいのか・・・」
「とりあえずは、私の話し相手になってもらうことにします。そして出産後は、ベビーシッターをしてもらおうと思います。丁度、愛情を持って育ててくれるベビーシッターを探そうと思っていたところだったのです。この子を女官任せにして、シンの時のような後悔をしたくはなかったので・・・」
「ミンや・・・では、その方向で話を進めましょう。兄上さまも口添えをお願いします」
「・・・パクや、お前が思うほど、儂はチェギョンに信頼してもらっておらんのじゃ」
「クスクス、最長老殿は狸のクソジジイで、その妹は九尾のお狐様だそうです」
「何と・・・私までそのような扱いなのですか?私も信頼回復に努めねば・・・」
 
ミンはクスッと笑ったあと、元の真面目な顔に戻った。
 
「皇后さま・・・私はチェギョンのことに何の異存もありませんが、シンとチェギョンはすんなり受け入れるでしょうか?」
「クスクス、シンの初恋はチェギョンです。おそらく大丈夫でしょう」
「えっ!?」
「昔、先帝に『頑張って勉強するから、チェギョンを宮に呼んでください』と毎日直訴してましたよ。兄上さま、そうでしたね?」
「はい。チェギョンにとっても殿下は一番最初の友達です。警戒心の強い子ですが、すぐに打ち解けると思います。年寄りは、ここからは黙って見守ることにします」
 
ミンは、皇太后と最長老の話を聞いて、妙に納得するのだった。
 
(あの無関心だったシンが・・・言われてみれば、謁見の間でもチェギョンを庇っていたわ。覚えていないのでしょうが、何か感じるものがあったのかも・・・ふふふ、先が楽しみです)
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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