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Channel: ゆうちゃんの日記
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選択 第32話

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スンホと一緒にイギリスの地に降り立ったハギュンは、ホテルに直行するとすぐに各方面に連絡を入れた。
受話器を置き、大きく息を吐いたハギュンにスンホは話しかけた。
 
「何か進展はあったのか?」
「ええ。ドンヒョクヒョンのお蔭で、マスコミは抑えられそうです。ただうちのお姫さまがまた暴走を始めたようで・・・クスクス」
「今度は、誰を拾ったのかえ?」
「王族にうちの商品を横流ししていた職員の家族だそうです。ソウルの別邸に住まわせ、息子をチェジュンの右腕として育てるつもりのようですね。神話学園に編入できるようウビンに頼んだそうです」
「クククッ・・・チェギョンらしいじゃないか」
「はぁ、ゆっくりしようと思っていたのに早々に帰国しないと・・・明日、すべて片づけます」
「では、儂も明日精力的に回ろうかの」
「お願いします」
 
 
 
翌朝、ホテル前でスンホと別れたハギュンは、ヘミョン公主が住むマンションへと向かった。
コン内官に教えられたルームナンバーのインターフォンを鳴らすと、すぐに見知った翊衛士が現れた。
 
「やぁ、久しぶり。君のような優秀な翊衛士が、我が儘姫のお守りかい?」
「シ、シン内官殿・・・突然、どうされたのですか?」
「宮からの伝言を預かってきた。ヘミョン公主さまの許に案内してくれ」
「・・・かしこまりました」
 
翊衛士の案内でヘミョンの部屋に入ると、ヘミョンの姿はなく、女官だけが出迎えた。
 
「確かユン尚宮だったな?公主さまは?」
「はい・・・ヘミョンさまは、まだご就寝のようでして、お部屋から出てこられていません」
「どいつもこいつも・・・ユン尚宮、公主さまを正しく導くことがお前の義務なんじゃないのか?」
「・・・申し訳ありません。ただ今、起こしてまいります」
「俺も行く。案内しろ」
 
部屋に入ると、ユン尚宮はヘミョンの肩を揺すり声を掛けるが、ヘミョンは一向に起きようとしない。
呆れたハギュンは遮光カーテンを開け、朝の光を部屋に取り入れると、被っていた布団を引きはがした。
 
「な、何?」
「おはようございます、ヘミョンさま。宮より伝言をお持ちしました。いい加減、起きてください。9時ですよ」
「お母様ね。何度言われても帰国はしないわよ」
「はぁ?皇后さまは何度も帰国を促してたのに無視してたってか?!お前、ホント救いようのないバカだな。さっさと起きて、シャワー浴びてこい!!」
 
一喝されたヘミョンは、飛び起きると慌ててシャワールームに入っていった。
しばらくヘミョンの部屋を物色していたハギュンだが、ユン尚宮がコーヒーを淹れてくれたのでリビングへと移動した。
シャワーを浴び、着替えを済ましたヘミョンがリビングに入ってくると、ハギュンは向かいのソファーを勧めた。
 
「自己紹介がまだでしたね。以前、孝烈殿下の侍従をしておりましたシン・ハギュンと申します。今は退官して、違う職に就いています。以後、お見知りおきを・・・」
「伯父さまの侍従?退官した貴方がどうして宮の伝言を預かってきたわけ?お母様に頼まれたの?」
「・・・ユン尚宮、一つ聞こう。ヘミョンさまは、現在の宮の実情をご存じないのか?なぜ教えない?」
「申し訳ありません。ヘミョンさまは心に深い傷を負われ、逃げるように渡英されました。一切、宮の情報はお聞きしたくないと・・・」
「心に傷?呆れたな・・・そんな辛い環境の中に当時小学生だった弟を置き去りにして逃げたわけだ。で、逃げた割には、3歳年下の弟と同じレベルの勉強をしているのはなぜだ?留学すれば、スキップは当然だと思うが?」
「///・・・・・」
「ユン尚宮、ヘミョンさまが帰国を渋っている理由は何だ?」
「それは・・・」
「ちょっと!退官した元侍従が、何の権限があって口出ししてくるわけ?!気分が悪い」
「気分が悪いのは、こっちの方だ。退官して何年も経つのに 何で俺が宮の尻拭いをしなくちゃなんないんだ?ああ?!」
「えっ!?」
「ユン尚宮、この我が儘娘にパソコンを持って来てやれ。おい、自分の目で確かめてから文句を言え!」
 
ユン尚宮からパソコンを取り上げると、ヘミョンはすぐに宮を検索し、アクセスしだした。
インターネットで宮の実情を知ったヘミョンは、徐々に顔色を失っていった。
 
「ご理解いただけたでしょうか?幸い皇后さまのご懐妊で宮は難を逃れたが、安泰という訳ではない。これから再生し、国民の信頼を得る為相当な努力が必要だ。そんな中、公主が国民の税金を使って呑気に留学しているとなると、一気に不満が爆発し宮は崩壊するだろうよ。まだ帰国する気にはならないか?」
「・・・・・」
「帰国したくなければ、しなくていい。ただし一生、祖国の地を踏めると思うな!公主に付いてきた翊衛士と女官は、俺と一緒に帰国する。自分で働き、一人で自活するんだな」
「・・・ユ、ユルと伯母さまも帰国するの?ユルはともかく、伯母さまの帰国は許さない」
「何か知っているのか?安心しろ。ファヨンさまは、先帝から国外追放を申し渡されている。一生、帰国できない。ユルさまに関しては、いづれ帰国してもらうが今はその時期じゃない。奨学金でこのまま滞在してもらう。今もユルさまに掛っている金は、俺のポケットマネーだしな」
「「!!!」」
「ん?あ~~、思い出した。ヘミョンさま、まさか陛下とファヨンさまが不貞を働いていたと思ってないでしょうね?」
「えっ!?違うの?ユルはお父さまの子だって書いてあるラブレターがあったわ」
「はぁ、何でそれを陛下や皇后さまに問い詰めなかったんだ?ユン尚宮もだ。なぜ誤解を解かなかった?」
「現皇帝ご一家が昌徳宮に居られる時からヘミョンさま付きでしたので、当時の宮中のことは全く知りませんでした」
「はぁ、ファヨンさまの最後の足掻きというかトラップだ。あの人は、先帝の命令で東宮殿から出ることは許されてなかった。当時、仲良くもないのにヒョン殿下の学友だとダシに使われ、ス殿下のハートを射止めたファヨンさまを毛嫌いされてたし、兄のことを憐れんでたよ。だから不貞は絶対にありえないね」
「そんな・・・」
「ス殿下付きの侍従だった俺が言うんだ。間違いない」
「・・・・・」
 
完全な誤解で宮との音信を断っていたヘミョンは、もう自己嫌悪しかなかった。
 
「帰国したら、ヘミョンさまは皇后さまの代理で公務を行ってもらう事になると思う。俺も詳しいことは知らないが、皇后さまは数年は公務は無理だと思う」
「えっ!?」
「皇后さまがご出産されるまでは、俺の姪っ子が内向きの事を取り仕切る。弟君と同い年だが、怖ろしくしっかりしてるぞ。公主さまよりは、間違いなく学力は上だ。クククッ・・・」
「///中学1年生が取り仕切るって・・・まさかそんな事・・・」
「できる訳ないってか?姪っ子は3歳から先代に付いて、学校にも通わず家業の勉強をしている。先代の人脈もあるが、今じゃ電話一本で警視総監も動かすぞ?」
「「!!!」」
「信じられないだろうが事実だ。悪いが、俺はこう見えても忙しい身でね。仕事を山のように残してきた上、これからまだ他に行かなくちゃならない所がある。木曜日の便で出国するから、ユン尚宮、それまでに帰国準備をしてくれ」
「か、かしこまりました」
「そうだ!今からファヨンさまに会いに行くんだが、一緒に行くか?もう会う事もないだろうから、この際恨み辛み全部吐き出しちゃえば?」
「・・・連れていってください」
「分かった。先に言っておく。ユルさまには何の罪もないし、最大の被害者だ。絶対に怒りの矛先をユルさまに向けないでくれ」
「はい」
「じゃ、そういう事で・・・ユン尚宮、アン翊衛士に車出してもらうように頼んでくれないか?用意できるまで、俺は仕事をする」
 
ヘミョンは、目の前で国際電話を掛けているハギュンをじっと見つめた。
 
(この人、すごく切れ者でヤリ手だわ。何で侍従を辞めたんだろう?)
 
 
 
 
 
 

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