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Channel: ゆうちゃんの日記
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選択 第33話

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ソ・ファヨン邸は、ヘミョンの想像していた物とは違って小さな庭があるごく一般的な一軒家だった。
ハギュンは臆することなく玄関まで行くと、インターフォンを鳴らした。
すると家政婦のような女性が現れ、ハギュンとヘミョンを招き入れた。
 
「ヘミョンさま、ようこそいらっしゃいました。残念ながら、ユルさまは学校でして3時前後にならないと戻られません」
「い、いえ、従兄弟に会いに来たわけではないので・・・」
「ソ・ファヨンは、まだ寝てるのか?」
「ええ。夜遊びがお忙しいようで、明け方に帰宅されましたから。起こしてきましょうか?」
「ゆっくり眠れるのも今日だけだ。久しぶりに君の手料理も食いたいし、もう少し寝かせてやろう」
「では食事の用意をしてきますので、リビングで待っててください」
 
家政婦がキッチンに消えると、ハギュンはヘミョンをリビングへと案内した。
食事の用意ができるまで、ヘミョンはハギュンから宮で起こったことを詳細に聞き、考えているより宮が窮地に陥っていて、帰国する選択を取らざるを得ない状況なのだと悟るのだった。
昼食が済み、食後のコーヒーを飲んでいると、やっとファヨンが寝起きのガウン姿でリビングに現れた。
 
「ファヨンさん、お久しぶりです」
「あら、あなたは・・・」
「はい、シン・ハギュンです。少々お話があったものですから、寄らせていただきました」
「私に話?一体、何かしら?」
「その前に紹介します。こちらは、ヘミョン公主さまです。帰国されますので最後に挨拶をと思い、お連れしました」
「そう・・・帰国するの。ねぇ、私とユルはいつになったら帰国命令が出るのかしら?」
「クククッ・・・もう痴呆が始まったとみえる。先帝のお言葉を忘れましたか?まだ7年しか経っていませんよ」
「///な、何の話?」
「『生涯、この地を踏むことは許さん!ユルもまたお前が生きている限り、もしくは皇位継承権を放棄しない限り帰国は認めん』でしたね?先帝は、遺言にもそう記されたそうですよ」
「・・・・・」
「本題に入らせていただきます。ソ家がお家断絶になりました」
「えっ!?うそ・・・どうして・・・」
「分かりませんか?貴女方が計画していた事がバレたからです」
「!!!」
「ユルさまの為に辛抱してきましたが、もう庇いきれません。近日中にここを引き払ってください」
「そんな・・・元皇太子妃に宮がそんな仕打ちをするなんて、許されると思っているの!私は、出て行かないわよ」
「それでは、滞納している7年間の家賃を払っていただきましょうか。別に買い取っていただいても良いですよ。先に言っておきますが、一族全員財産没収の上流刑でしょうから、ご実家からの援助は望めませんよ」
「そんな・・・」
「何がそんななんです?最後の先帝の言葉を覚えていませんか?『我が孫ユルの為、最低限の援助はしてやろう。それで全て賄いなさい』でしたよね?貴女は、宮から送金されたお金をすべてご自分の遊興費やユルさまを皇帝に就ける為の裏工作資金にしてましたね?私がスンミに送金しなかったら、生活がままならない状態だったじゃないですか。百歩譲って、スンミとミナの宿泊代として生活費は目を瞑ったとしてもユルさまの教育費をなぜ私が払わなければならないんです?」
「そんなの嘘よ。証拠なんてないじゃない!」
「愚かな人だ。誰が通帳記入をしていたと思ってるんです?」
「・・・スンミ、裏切ったわね」
「クククッ・・・7年間、給料を払わなかった貴女に言われたくないですね」
「クッ・・・元皇太子妃に対してこんな仕打ち、許せない!訴えてやる!!」
「クククッ・・・ご自由に。ファヨンさん、いやソ・ファヨン、貴女は一度だって皇族になったことはない」
「「えっ!?」」
「孝烈殿下と共に皇帝・皇后両陛下の前に行き、皇太子妃になる封冊を受けましたか?孝烈殿下付きだった私には、そんな記憶はないんですが?一体、貴女のどこが皇太子妃の器なんです?四書五経の一つ、孝経の最初の一節を言ってみてください」
「・・・・・」
「言えないでしょ?貴女は皇太子妃に必要な教育をボイコットし、責務を放棄した。義務は放棄した癖に権利だけ主張するんですか?それのどこに皇太子妃の品格があるというんです?」
「・・・私は皇太子の子どもを産んだのよ。未来の皇帝の生母だったのに・・・」
「確かに孝烈殿下が生きておられたら、未来の皇帝の生母だったでしょうね。仕方がないじゃないですか。貴女が孝烈殿下を殺したのだから・・・」
「「!!!」」
「先帝は、貴女を極刑にしたかった筈なのにユルさまの事を思って、国外追放にされたのです。貴女は、その恩を仇で返してしまったんですよ」
 
ハギュンの発言は、ファヨンだけでなくヘミョンにまで衝撃をもたらした。
 
「・・・嘘よ。あの人は交通事故で亡くなったのよ」
「いいえ。ユルさまを守るため、そう偽装しただけのこと。実際は、ある少女を殺すよう貴女に指示された翊衛士が刺殺したんです。ス殿下は、少女を庇って刺されたわけです」
「じゃ、じゃあ私が見たあの遺体は・・・」
「もう少し頭が働く人だと思ってました。ス殿下が亡くなった日から、貴女の弟が行方不明なんじゃないですか?翊衛士を脅迫するためにご両親を監禁していた弟さんです。貴女の為に命を落としたというのに まさか弟さんが心配じゃなかったのですか?ホントどこまで自己中なんだ」
「うそ・・・」
「先に誤解を解いておきますが、貴女が殺そうとした少女は、ス殿下の隠し子なんかじゃありません。私の兄の子、つまり私の姪です」
「えっ、うそ・・・探偵の報告書では、殿下の子どもだって・・・」
「ヘボ探偵社に依頼したのが、そもそもの間違いでしたね。もっとも私の実家は鉄壁に守られていますから、宮の力を使ったとしても何も分からなかったでしょうがね」
 
もうファヨンは頭の中が真っ白で、何も考えられなかった。
 
「話を最初に戻しますが、この邸はうちの先代が友人に頼んで借りてもらった家です。その友人は、一緒に渡英してきて、今朝から売却する手続きに入っています。今週中に引き払ってください」
「ユ、ユルは・・・そんなことをしたら、ユルも路頭に迷うのよ?」
「今更、ユルさまの心配ですか?今まで一度もユルさまを省みたことがない貴女が?」
「・・・・・」
「ユルさまの事はご心配なく。私とスンミが、今まで同様ミナと一緒に育てます。言いませんでしたが、スンミは私の妻で、ミナは私の娘です」
「えっ!?」
「年に数回渡英して、4人で家族旅行したりして交流してきましたから、しっかり信頼関係は結べています。ご安心を」
 
その時、玄関からリビングに入る扉が、カチャリと音をたてた。
リビングにいる全員が振り返ると、そこには涙を流す少女と怒りで震えている少年が立っていた。
その瞬間、ファヨンは青褪め、小さな声で呟いた。
 
「ユラ.・・・・」
 
 
 
 

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